『ゾーイの物語 老人と宇宙4』 ジョン・スコルジー (ハヤカワ文庫 SF)
今年の星雲賞を受賞した『最後の星戦』で完結のはずの《老人と宇宙シリーズ》の第4弾。というか、外伝的位置づけの作品。ジョンとジェーンの養子、ゾーイの視点から見た物語。
ジュブナイルと聞いていたのだが、16歳の少女の一人称というだけで、特に子供向けという要素は無かった。訳もラノベ風ではないしね。そもそも、この物語は《老人と宇宙シリーズ》のボーナストラックなので、これだけ読んでも話が良くわからないんじゃないかと思う。
『最後の星戦』でご都合主義的に描かれたゾーイの活躍の裏にどのような物語があったのかという、読者の興味と批判に答える形での刊行とのことだが、どう考えたって、最初からこの巻までの企画込みだったんじゃないかと思われる。それぐらいにご都合主義だったからなぁ。
で、その語られなかったゾーイの冒険というのが期待以上。ロアノークでの原住民との邂逅はドキドキハラハラだし、オービン族の星での〈デリーの朝〉のシーンは、通勤電車の中でマジで泣きしそうになった。
大作のおまけ小説は、蛇足になりがちだったり、かえって物語を矮小化してしまいがちだったりするのだが、これは4冊あわせてひとつの物語として完成している。
著者はカードの『エンダーのゲーム』に対する『エンダーズシャドウ』を見習ったとのことだが、あの名作に劣らない出来であると断言できる。
ところで、『ゾーイの物語』でヒーローとして描かれる3人の登場人物には共通点があるように思える。ゾーイのボーイフレンド、エンゾ。ロアノークの原住民のひとり。そして、コンクラーベのガウ将軍だ。
『最後の星戦』では、エンゾとガウ将軍が似たもの同士として描かれるとは思っても見なかったが、ゾーイにナイフをくれたロアノークの原住民を間に挟むことで、この3人の共通点が浮かび上がる。
暴力的に走る同僚をなだめ、貧乏くじを引くという性格の彼らを、一貫してゾーイの視点からのヒーローとして描いているように思える。これが、物語のひとつのメッセージとして根底に流れている。
ゾーイだけではなく、『最後の星戦』では完全に悪役だったガウ将軍を、好戦派と非戦派の間で苦悩するキャラクターとして語り直すという意図も合ったのだろう。
ところで、物語で重要な役割を果たす曲〈デリーの朝〉。これは実在しない曲のようだが、〈The Derry Air〉というのを見つけた。要するに〈ダニーボーイ〉なんだけど、〈ベイラの朝〉という歌詞もあるようだし、これが原曲ということでいいのかな。
今年の星雲賞を受賞した『最後の星戦』で完結のはずの《老人と宇宙シリーズ》の第4弾。というか、外伝的位置づけの作品。ジョンとジェーンの養子、ゾーイの視点から見た物語。
ジュブナイルと聞いていたのだが、16歳の少女の一人称というだけで、特に子供向けという要素は無かった。訳もラノベ風ではないしね。そもそも、この物語は《老人と宇宙シリーズ》のボーナストラックなので、これだけ読んでも話が良くわからないんじゃないかと思う。
『最後の星戦』でご都合主義的に描かれたゾーイの活躍の裏にどのような物語があったのかという、読者の興味と批判に答える形での刊行とのことだが、どう考えたって、最初からこの巻までの企画込みだったんじゃないかと思われる。それぐらいにご都合主義だったからなぁ。
で、その語られなかったゾーイの冒険というのが期待以上。ロアノークでの原住民との邂逅はドキドキハラハラだし、オービン族の星での〈デリーの朝〉のシーンは、通勤電車の中でマジで泣きしそうになった。
大作のおまけ小説は、蛇足になりがちだったり、かえって物語を矮小化してしまいがちだったりするのだが、これは4冊あわせてひとつの物語として完成している。
著者はカードの『エンダーのゲーム』に対する『エンダーズシャドウ』を見習ったとのことだが、あの名作に劣らない出来であると断言できる。
ところで、『ゾーイの物語』でヒーローとして描かれる3人の登場人物には共通点があるように思える。ゾーイのボーイフレンド、エンゾ。ロアノークの原住民のひとり。そして、コンクラーベのガウ将軍だ。
『最後の星戦』では、エンゾとガウ将軍が似たもの同士として描かれるとは思っても見なかったが、ゾーイにナイフをくれたロアノークの原住民を間に挟むことで、この3人の共通点が浮かび上がる。
暴力的に走る同僚をなだめ、貧乏くじを引くという性格の彼らを、一貫してゾーイの視点からのヒーローとして描いているように思える。これが、物語のひとつのメッセージとして根底に流れている。
ゾーイだけではなく、『最後の星戦』では完全に悪役だったガウ将軍を、好戦派と非戦派の間で苦悩するキャラクターとして語り直すという意図も合ったのだろう。
ところで、物語で重要な役割を果たす曲〈デリーの朝〉。これは実在しない曲のようだが、〈The Derry Air〉というのを見つけた。要するに〈ダニーボーイ〉なんだけど、〈ベイラの朝〉という歌詞もあるようだし、これが原曲ということでいいのかな。