『樹環惑星―ダイビング・オパリア―』 伊野隆之 (徳間文庫)
こちらも第11回日本SF新人賞受賞作。どちらの作品も、本格SFとしての根から、エンターテイメント小説としての葉が茂っていると言える。ライトノベルや主流小説とは似て非なるDNA。まさにオパリア。(かなりこじつけw)
趣味の問題だとは思うけど、実はあんまり乗れなかった。それがどうしてかを考えるならば、おそらく、“燃え”成分の不足。『シンギュラリティ・コンクエスト』が萌え成分過剰ならば、『樹環惑星』は燃え成分不足なのだ。
ダイビング・オパリアという副題を掲げるならば、3万メートルの危険なダイブで証拠を取りに行けよ。行政SFというならば、『正義の話をしよう』ぐらいの決断を迫られたらどうだ。と思ってしまう。あからさまに怪しい領事も、何にも関係ないただの人だったし。
単純な巨悪にしたくないというのはわかるが、スリルとサスペンスは必要でしょう。
乗れないと荒が目立つとのはあたりまえというか、納得のいかない説明がちらほら。そのせいで、どうしても書きたいシーンのつぎはぎに見えてしまう。そのあたりはどうなんだろうな。
だからといって、まったく楽しめなかったわけでもないし、ダメダメな小説ということは全くない。バランスよくまとまった秀作で、これまでの新人賞レベルを超えていると思う。ただ、全体の雰囲気が好みに合わなかったということにすぎないんだけど……。
解説で山田正紀氏が指摘している“新しいリアリズム”については、科学リテラシーの問題なんじゃないかと思う。いや、ちょっとちがうな。拡散しきったSFの問題かな。
何が言いたいかというと、何だかわからないけどわかったつもりになる書き方と読み方が確立されてきたんじゃないかということなのだけれど、ちょっと違うかも。
「無電極プラズマ推進器」と「相転移エンジン」はどちらも「なんだかよくわからないけどそういうもの」として受け入れられる素地が読者の中にできてしまっていて、無電極とはどういうことかとか、具体的に何が相転移するのかとかが、直接ストーリーに密接にかかわってこない限りは、わからなくてもスルーしていいという合意ができてしまっている気がする。いや、「無電極プラズマ推進器」は“はやぶさ”のイオンエンジンのことなんですけどね。
つまり、SFの浸透と拡散がそういうものを読み飛ばすスキルを作っちゃってるのではないかという仮説。いや、この小説がそういういい加減な説明をしているということではなく、リアリティの担保のためにどこまで書き込むかというレベルの話なんですが。
こんなことを考え付くのは、結局、自分がそういうスルー読みしてしまっているということなのかもしれないんだけど。計算しながら読む読者じゃないしね。
こちらも第11回日本SF新人賞受賞作。どちらの作品も、本格SFとしての根から、エンターテイメント小説としての葉が茂っていると言える。ライトノベルや主流小説とは似て非なるDNA。まさにオパリア。(かなりこじつけw)
趣味の問題だとは思うけど、実はあんまり乗れなかった。それがどうしてかを考えるならば、おそらく、“燃え”成分の不足。『シンギュラリティ・コンクエスト』が萌え成分過剰ならば、『樹環惑星』は燃え成分不足なのだ。
ダイビング・オパリアという副題を掲げるならば、3万メートルの危険なダイブで証拠を取りに行けよ。行政SFというならば、『正義の話をしよう』ぐらいの決断を迫られたらどうだ。と思ってしまう。あからさまに怪しい領事も、何にも関係ないただの人だったし。
単純な巨悪にしたくないというのはわかるが、スリルとサスペンスは必要でしょう。
乗れないと荒が目立つとのはあたりまえというか、納得のいかない説明がちらほら。そのせいで、どうしても書きたいシーンのつぎはぎに見えてしまう。そのあたりはどうなんだろうな。
だからといって、まったく楽しめなかったわけでもないし、ダメダメな小説ということは全くない。バランスよくまとまった秀作で、これまでの新人賞レベルを超えていると思う。ただ、全体の雰囲気が好みに合わなかったということにすぎないんだけど……。
解説で山田正紀氏が指摘している“新しいリアリズム”については、科学リテラシーの問題なんじゃないかと思う。いや、ちょっとちがうな。拡散しきったSFの問題かな。
何が言いたいかというと、何だかわからないけどわかったつもりになる書き方と読み方が確立されてきたんじゃないかということなのだけれど、ちょっと違うかも。
「無電極プラズマ推進器」と「相転移エンジン」はどちらも「なんだかよくわからないけどそういうもの」として受け入れられる素地が読者の中にできてしまっていて、無電極とはどういうことかとか、具体的に何が相転移するのかとかが、直接ストーリーに密接にかかわってこない限りは、わからなくてもスルーしていいという合意ができてしまっている気がする。いや、「無電極プラズマ推進器」は“はやぶさ”のイオンエンジンのことなんですけどね。
つまり、SFの浸透と拡散がそういうものを読み飛ばすスキルを作っちゃってるのではないかという仮説。いや、この小説がそういういい加減な説明をしているということではなく、リアリティの担保のためにどこまで書き込むかというレベルの話なんですが。
こんなことを考え付くのは、結局、自分がそういうスルー読みしてしまっているということなのかもしれないんだけど。計算しながら読む読者じゃないしね。