神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] スティーヴ・フィーヴァー

2011-01-20 22:40:29 | SF
『ポストヒューマンSF傑作選 スティーヴ・フィーヴァー』 山岸真(編) (ハヤカワ文庫SF)




SFマガジン創刊50周年記念アンソロジーの最後を飾る3巻目。ノスタルジーを感じさせる前2巻よりもSF濃度の濃い作品集になっていると思う。これは“ポストヒューマン”というテーマがSFのコアに近い処にあるせいなのか、はたまた編者の趣味のせいか。

「テクノロジーによって変容した人類の姿」は、ポストヒューマンであると同時に、ポストヒューマン・ソサイエティであったり、ポストヒューマン・エコシステムだったりする。しかも、それが本当の意味での未来予測ではなく、著作された当時の社会風刺だったりするにおよび、多彩な未来が描かれる。

そのテーマの料理の仕方は、自分が「まさにSFだなぁ」と感じるものなのであるが、そういうことを語りだすとSF原理戦争になるので、これにてご免。





「死がふたりをわかつまで」 ジェフリー・A・ランディス
わずか6ページの、永遠のラブストーリー。泣ける。

「技術の結晶」 ロバート・チャールズ・ウィルスン
これも悲しいラブストーリー。新しい目に惹かれる男は、新しいガジェットに惹かれる誰かさんみたいだ。

「グリーンのクリーム」 マイクル・G・コーニイ
ノスタルジックなだけの短編かと思いきや、ラストが泣かせる。未来の技術が引き裂く夫婦と、それでも離れない絆。

「キャサリン・ホイール(タルシスの聖女)」 イアン・マクドナルド
『火星夜想曲』の前身となる作品。ただ、これの面白さがまったく良くわからない。『火星夜想曲』も評価低いんだよな。

「ローグ・ファーム」 チャールズ・ストロス
シンギュラリティ的な雰囲気の脳みそ固まった新人類が楽しくて不気味。そして、そのオチかよ、という衝撃。「タンクは空にしてあるか?」って、そういう問題になっちゃうのか。

「引き潮」 メアリ・スーン・リー
これはリアルに感じれば感じるほど、悲しい話。SFとして書かなければ、悲し過ぎて、えげつ無さ過ぎて、読めないかも。

「脱ぎ捨てられた男」 ロバート・J・ソウヤー
そういう社会になれば、必然的に発生する問題だとは思う。ただ、主人公の動機とかがよくわからないんだよね。俺、あのセンターに入りたいw

「ひまわり」 キャスリン・アン・グーナン
物理的な人間の変容は、認識の変容を必然的に引き起こす。そして、それをあらかじめ想像することは不可能に近い。

「スティーヴ・フィーヴァー」 グレッグ・イーガン
なんと! 実はこれが正しい“調教”だったりして。なんというか、AIとかALの研究を齧った人には別な意味で興味深いと思う。加えて言えば、知能とは何か、知性とは何かについても興味深い。ただ、よく考えてみると、たとえばある点まで同一の項を持つ、まったく別な数列というのも存在するわけで、彼らの目論見は……。

「ウェディング・アルバム」 デイヴィッド・マルセク
プログラムはどこから知性を持つのか。そこに線は引けるのか。ただ、この話はドタバタ喜劇として、とりあえずハッピーエンドだからいいんじゃないか、とか。

「有意水準の石」 デイヴィッド・ブリン
再帰。

「見せかけの生命」 ブライアン・W・オールディス
これって、「夫婦ってかみ合わない会話を続けるよね」っていう“真理”が発見されたという話だと思ったんだけど、そういう読み方っておかしい?


個別の感想を書き出してみたら、これって[ポストヒューマンSF傑作選]じゃなくって、[ポスト結婚SF]だったりして、とか思ったり、思わなかったり。


[SF] SFマガジン2011年02月号

2011-01-20 22:34:43 | SF
『S-Fマガジン 2011年2月号』 (早川書房)




毎年2月号は日本SF特集。昨年が50周年記念特大号だったので、それに比べると……。さすがにあのレベルを毎年は無理か。

ラインナップを見てもわかるが、ハヤカワ的には昨年から新たな作家陣をプッシュし始めた。その中から、ゼロ年代の「ぼくたちのリアルフィクション」を越える、イチマル年代の新たな「リアル」が生まれることを期待したい。

プロパ本格ハード正調コアSF側も、いつまでも伊藤計劃の呪縛に陥らないで、SFの潮流みたいなものを巻き起こして欲しい。良くも悪くも、SFに出版会の目が向いている間が勝負だろう。



△「Heavenscape」 伊藤計劃
『虐殺器官』の習作。ありえたかもしれないプロローグ。しかし、日本SFは伊藤計劃にどこまで縛られなければいけないのだ。ポスト伊藤計劃は伊藤計劃本人じゃないだろうに。

○「天冥の標 断章五 サインポストB」 小川一水
いずれ、ああ!と腑に落ちる時が来ることを疑ってもいないが、いったい俺はこれらの細部を完結まで憶えていられるのだろうか?
とりあえず、キュクロポス(Kyclops)は円(circle)であり、一つ目の巨人(Cyclops)だが、その名をつけた意味は……。

◎「ふるさとは時遠く」 大西科学
あれ、このネタ、『ここはウィネトカ…』で読んだぞ。と思ったけど、日本的な要素が大きくてまったく別物。
都会は時の流れが速いとはよく言ったものだ。

○「スワロウテイル人工少女販売処 蝶と果実とアフターノエルのポインセチア」 籘真千歳
幻想的なスプラッタ。なんか、登場人物がねんどろいどで映像化される。でもスプラッタw “生まれ変わる”と“産む”が直接つながるということが感覚的にわからないのは男だからだろう。

△「ダイナミックフィギュア 抜粋掲載」 三島浩司
これだけじゃ、なんだかよくわからんぞ。

○「《現代SF作家論シリーズ》第一回 グレッグ・イーガン論 あなたの思う猫はわたしの思う猫とは違うよ」 鹿野司
そう思ってても、言っちゃうといろいろ問題がありそうなきがするんだけど、大丈夫なんだろうか?
“イーガンは自閉症かも”。

あと、あいかわらず巽孝之が書いていることは、高尚過ぎて欠片も理解できん。実は何も言ってないんじゃないかとも思えてくる。


1月19日(水)のつぶやき

2011-01-20 02:40:11 | つぶやき
20:51 from 読書メーター
【S-Fマガジン 2011年 02月号 [雑誌]】SFマガジンでちょっとだけ出して、単行本売る戦略の発動なのか! そうなのか? 大西科学のは『ここはウィネトカ』で同じネタあったと思ったら、いかにも日本... http://bit.ly/gcncCS #bookmeter
20:59 from 読書メーター
【スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)】50周年記念アンソロジー3冊の中では一番SF濃度が濃かった。イアン・マクドナルドが自分に合わないと... http://bit.ly/ig9OGd #bookmeter
21:01 from 読書メーター
【セドナ、鎮まりてあれかし (ハヤカワ文庫JA)】表面的な静けさの裏を読むべきかどうか迷う作品。脳に障害を負った男の新しい成長物語と読むべきものなんだろう。逆に、ウヨクには読んで欲しくない。 http://bit.ly/fxWaCb #bookmeter
by kats_takami on Twitter