神なる冬

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[SF] 死者の短剣 旅路

2012-01-09 23:02:52 | SF
『死者の短剣 旅路(上下)』 ロイス・マクマスター・ビジョルド (創元推理文庫)




チビで病弱な主人公が活躍するスペースオペラの《ヴォルコシガン・シリーズ》で有名なビジョルドのファンタジーシリーズ《死者の短剣》の第3弾。SFも書いているだけに、ファンタジー世界も実に合理的。そもそも、この世界は地球の遠未来か、植民惑星のような感じだ。


“湖の民”だけが持つ超能力のような「基礎」。これはファンタジー的な魔法なのだが、主人公のダグは「基礎」の作用を解き明かし、“悪鬼”退治の秘められた力ではなく、“地の民”を含めたすべての人々のために開かれた力として役立てようとする。それと同時に、長年の分離によって反目を深める“湖の民”と“地の民”の融合を模索する。

湖の民の「基礎」の作用がだんだん明らかになっていく様子は科学的プロセスとも言え、なかなか興味深い。大抵のファンタジーでは、魔法は所与のものとして存在するが、この作品では主人公ダグが魔法である「基礎」の秘密を解き明かそうと無茶な実験をして、その思いもかけぬ結果に読者と共に驚愕するのだ。

しかしその作用は、ついにそこまでいったかという感じ。“悪鬼”と戦う力は、人々を守る力であるのと同時に、人々を脅かす力にもなりうる。それは、まさしくノーベルが危惧した科学の力と重なる。

それ以上に、社会改革者としてのダグの振る舞いがおもしろい。“地の民”を啓蒙するためには、自分だけが説得して歩くのではきりがないが、啓蒙された“地の民”が代理をしてくれるだろう。“地の民”が“湖の民”を頼りにしてしまうと、再び“湖の民”が“地の民”を支配してしまう。ダグの思想やふるまい方はリーダー論として読んでも面白いかもしれない。しかし、それも苦しみながら、妻のフォーンに助けられながらというところがおもしろい。

それにしてもフォーンは可愛いな。小柄で童顔で丸っこくて、料理上手で勇気があって、しかもエロカワって、なにその天使(笑) これが56歳のオヤジの新妻だということに嫉妬を感じざるをえない。フォーンの可愛らしさはこのシリーズの最大の魅了なのだ。


あと、表紙のダグの手が逆。左手の義手が弓。ちなみに、ライダーマンは右手が義手。