神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 都市と都市

2012-01-15 23:29:43 | SF
『都市と都市』 チャイナ・ミエヴィル (ハヤカワ文庫 SF)




隣り合わせに存在する都市と都市。入り混じってクロスハッチしながらも、二つの都市は国も文化も異なる敵同士。それぞれの住民はお互いに見えない振りをしながら暮らしているうちに、無意識にお互いを無視できるようになってしまった。

万が一、二つの都市間で事件があった場合は《ブリーチ》の出番。強大な権限を持つ秘密組織《ブリーチ》が二つの都市の衝突を引き剥がす。

そんなファンタジーのような都市が現実に存在したら。というIFから導かれる不思議な世界。そして、そこで起こった殺人事件の顛末が描かれる小説。

ジャンル小説としては、フーダニットのミステリー。それもハードボイルド調なのだが、クロスハッチする都市の設定が見たこともない世界を創造する魅力にあふれたファンタジーでもある。

しかし、この小説が出版されたのはHMレーベルでもFTレーベルでも、NVレーベルでもなく、青背のSF。

まぁ、単純に著者がチャイナ・ミエヴィルだからということもあるのだろうが、実際に本書はヒューゴー賞やらローカス賞やらの受賞作でもあり、SFの分類で誰にも文句は言わせない。

物語のカギとなるのは、第3の都市、オルツィニー。お互いの都市の住民が、相手の都市のエリアだと思っている空白地帯。目の前に存在していながら、誰に見えない街。この都市伝説の設定が素晴らしい。

同じく都市伝説と化している《ブリーチ》と異なり、まったくの作り話であったオルツィニーが、紆余曲折の末に主人公の前に、たった一人の男の姿として現れるラストシーンが震えるくらいに凄かった。二つの都市をまたがる殺人事件の結末は、すべてこのオルツィニーを目の前に出現させるものだったのかと。

クロスハッチされた都市というたったひとつのIFから演繹的に構築されたもうひとつの現実。さらにそこを基盤として構築された都市伝説。そしてその都市伝説を目の前に出現させる手際。ミエヴィルは本当に魔術師のような小説家だ。


そこ見えているのに見えないふりをするという設定は、いろいろなアナロジーに取れてしまうのだが、著者曰く、それは本意では無いとのこと。しかし、著者は読者にどう読まれるかを制限できるわけもなく。世の中の見えないことになっているもの、見えないふりをしているものについて、ちょっと考えてみたりもする。しかし、それがなんだったかは、ここでは敢えて書かないことにする。


[映画] ロボジー

2012-01-15 22:54:24 | 映画
『ロボジー』


(C)2012 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ


ロボット博で発表直前にぶっ壊れたロボットの代わりに、その場しのぎで作ったキグルミロボットが人命救助をしてしまったばっかりにマスコミで評判になり、引っ込みがつかなくなって……というSFでもなんでもない映画。ゆるーい感じのコメディでした。

通天閣ロボットやら、出渕裕デザインのHRP-2だのムラタくんだの、実在ロボットもちょっと出てくるけど、あんまり詳しくは紹介されないのでいまいち。大学生たちがロボットについて白熱した議論を行うシーンでも、なんだか単語が言い馴れなさ見え見えの某読みでもう少し頑張ってほしかった。

ヒロイン役の吉高由里子は可愛いんだけど、やっぱり年相応。あの役なら、金朋までとは言わなくとも、童顔女優じゃなきゃまずいでしょ。メイクや髪形を工夫していても、ちゃんと普通に大学生に見えるぞ。ただ、端役のエキストラと違って、ロボットおたく役には違和感なかったかもね。普段からあのしゃべり方だから、DCブラシレスモータとか型番とか言っても、そこだけ棒読みになってるようには聞こえない(笑)

主演のミッキー・カーチスじゃなくて五十嵐信次郎は確かに怪演。うざい耄碌爺にすっかりはまり役だった。彼の演じる鈴木さんは居場所のない独居老人で、フラストレーションが溜まっていたところに天職が見つかって調子に乗っちゃった役どころ。開発側に肩入れして見ると、本当にうざいです、あのじじい。しかし、若い人にはミッキー・カーチスなんて言ってもわかんないだろうな。ラストでかかる「Mr. Robot」は五十嵐信次郎版ってことで、やっぱりちょっとじじ臭かった。

ロボットネタやら、コスプレネタやらいろいろあって面白かったんだけれど、やっぱりこれは一般向けかな。濃い人にはちょっと物足りない。腹をかかえて笑うほどではなく、くすくす笑いが絶えないゆるーいコメディで、ラス前にちょっとどんでん返しあり。でも、やっぱり鈴木さんはうざいじじいだ。あのラストシーンにその笑顔は無いだろ(笑)



ああ、そういえば、『リアル・スティール』の子役が日本に来たとき、ロボジーこと「New湘南」に会ってるんだけど、あれってキグルミだってばらしてなかったんじゃなかったっけ……?