『都市と都市』 チャイナ・ミエヴィル (ハヤカワ文庫 SF)
隣り合わせに存在する都市と都市。入り混じってクロスハッチしながらも、二つの都市は国も文化も異なる敵同士。それぞれの住民はお互いに見えない振りをしながら暮らしているうちに、無意識にお互いを無視できるようになってしまった。
万が一、二つの都市間で事件があった場合は《ブリーチ》の出番。強大な権限を持つ秘密組織《ブリーチ》が二つの都市の衝突を引き剥がす。
そんなファンタジーのような都市が現実に存在したら。というIFから導かれる不思議な世界。そして、そこで起こった殺人事件の顛末が描かれる小説。
ジャンル小説としては、フーダニットのミステリー。それもハードボイルド調なのだが、クロスハッチする都市の設定が見たこともない世界を創造する魅力にあふれたファンタジーでもある。
しかし、この小説が出版されたのはHMレーベルでもFTレーベルでも、NVレーベルでもなく、青背のSF。
まぁ、単純に著者がチャイナ・ミエヴィルだからということもあるのだろうが、実際に本書はヒューゴー賞やらローカス賞やらの受賞作でもあり、SFの分類で誰にも文句は言わせない。
物語のカギとなるのは、第3の都市、オルツィニー。お互いの都市の住民が、相手の都市のエリアだと思っている空白地帯。目の前に存在していながら、誰に見えない街。この都市伝説の設定が素晴らしい。
同じく都市伝説と化している《ブリーチ》と異なり、まったくの作り話であったオルツィニーが、紆余曲折の末に主人公の前に、たった一人の男の姿として現れるラストシーンが震えるくらいに凄かった。二つの都市をまたがる殺人事件の結末は、すべてこのオルツィニーを目の前に出現させるものだったのかと。
クロスハッチされた都市というたったひとつのIFから演繹的に構築されたもうひとつの現実。さらにそこを基盤として構築された都市伝説。そしてその都市伝説を目の前に出現させる手際。ミエヴィルは本当に魔術師のような小説家だ。
そこ見えているのに見えないふりをするという設定は、いろいろなアナロジーに取れてしまうのだが、著者曰く、それは本意では無いとのこと。しかし、著者は読者にどう読まれるかを制限できるわけもなく。世の中の見えないことになっているもの、見えないふりをしているものについて、ちょっと考えてみたりもする。しかし、それがなんだったかは、ここでは敢えて書かないことにする。
隣り合わせに存在する都市と都市。入り混じってクロスハッチしながらも、二つの都市は国も文化も異なる敵同士。それぞれの住民はお互いに見えない振りをしながら暮らしているうちに、無意識にお互いを無視できるようになってしまった。
万が一、二つの都市間で事件があった場合は《ブリーチ》の出番。強大な権限を持つ秘密組織《ブリーチ》が二つの都市の衝突を引き剥がす。
そんなファンタジーのような都市が現実に存在したら。というIFから導かれる不思議な世界。そして、そこで起こった殺人事件の顛末が描かれる小説。
ジャンル小説としては、フーダニットのミステリー。それもハードボイルド調なのだが、クロスハッチする都市の設定が見たこともない世界を創造する魅力にあふれたファンタジーでもある。
しかし、この小説が出版されたのはHMレーベルでもFTレーベルでも、NVレーベルでもなく、青背のSF。
まぁ、単純に著者がチャイナ・ミエヴィルだからということもあるのだろうが、実際に本書はヒューゴー賞やらローカス賞やらの受賞作でもあり、SFの分類で誰にも文句は言わせない。
物語のカギとなるのは、第3の都市、オルツィニー。お互いの都市の住民が、相手の都市のエリアだと思っている空白地帯。目の前に存在していながら、誰に見えない街。この都市伝説の設定が素晴らしい。
同じく都市伝説と化している《ブリーチ》と異なり、まったくの作り話であったオルツィニーが、紆余曲折の末に主人公の前に、たった一人の男の姿として現れるラストシーンが震えるくらいに凄かった。二つの都市をまたがる殺人事件の結末は、すべてこのオルツィニーを目の前に出現させるものだったのかと。
クロスハッチされた都市というたったひとつのIFから演繹的に構築されたもうひとつの現実。さらにそこを基盤として構築された都市伝説。そしてその都市伝説を目の前に出現させる手際。ミエヴィルは本当に魔術師のような小説家だ。
そこ見えているのに見えないふりをするという設定は、いろいろなアナロジーに取れてしまうのだが、著者曰く、それは本意では無いとのこと。しかし、著者は読者にどう読まれるかを制限できるわけもなく。世の中の見えないことになっているもの、見えないふりをしているものについて、ちょっと考えてみたりもする。しかし、それがなんだったかは、ここでは敢えて書かないことにする。