『孤児たちの軍隊5 ―星間大戦終結―』 ロバート・ブートナー (ハヤカワ文庫 SF)
孤児たちの軍隊シリーズの完結篇。
相変わらず、政治家は無能、前線は有能。部族社会は野蛮。共産主義は悪……。といったステレオタイプに彩られたわかりやすい世界観。
その中で、ピンチに陥りながらも、何度も立ち上がる主人公。
まぁ、わかりやすい戦争SFではありますが、「孤児」というテーマが途中から活かしきれていないのが非常に残念。
第1作の『孤児たちの軍隊』では、主人公が孤児であることがストーリー上で意味を持っていたのだが、いつの間にやらただのタフなヒーローになってしまった。
名付け子が孤児になって、孤児の再生産が始まりはするものの、主人公にとってはオード軍曹やその他の人たちが擬似家族としての救いになっていて、あんまり孤児感(?)がなくなっている。
最後の作戦は命がけの危険な賭けとして、再び孤児だけの兵士で編成し、あのガニメデ作戦を再現するとか、あるいは、地球人類こそが銀河文明に見捨てられた孤児だったとか、どうにでもオチがつけられるはずだったのに。
敵のナメクジ星人は単一の群体生命であることはわかっていたが、その親玉の正体が大陸ほどもある巨大なナメクジっていうのもわかりやすいというか、芸が無い。
で、主人公と敵の親玉は最後にコンタクトするわけだけれど、これも唐突な上に会話が噛み合わないせいでなんともカタルシスが無い。今さら、単一生命だから孤独な孤児だったとか言われても、最初から持たないものと、奪われたものが比較できようこともなく、どうにも納得がいかない。
ここまで来たなら、決裂の末に最終兵器発射で終わった方が良かったんじゃないか。
だいたい、人類同士が何千人も殺しあっているというのに、今さら何を躊躇することがある。
それとも、同じ人類としてのキズナよりも、孤児同士の親近感の方が勝っていたとでも?