神なる冬

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[SF] SFマガジン2011年12月号

2011-11-07 22:52:00 | SF
『S-Fマガジン 2011年12月号』 (早川書房)




特集「The Best of 2005-2010」。なんで今頃、と思ったが、どうも翻訳在庫一斉放出くさい。ゼロ年代後半の海外SFを俯瞰するような記事は無し。最近、読み切り小説の掲載が少ないとぶつぶつ言っていたくらいなので、これは大歓迎。特にイアン・マクドナルドの「小さき神々」が良かった。しかし、やっぱりBestじゃないような……。

もうひとつ、「ドンブラコンL」特集。毎年恒例の企画レポート。「杉山教授の奇妙な冒険」という企画は聞いてみたかった。なんか凄そう。来年のバリコンでも、知られざる道産子作家を発掘とかないものか。




○「トロイカ」 アレステア・レナルズ
著者は《レベレーション・スペース》のあの人。ところが、舞台が第二ソヴィエトというだけあって、『宇宙飛行士オモン・ラー』や、『ストーカー』などを髣髴させるような雰囲気。そして、この結末が多重に解釈できるだけに、どう読むかが難しい。

○「懐かしき主人の声」 ハンヌ・ライアニエミ
ちょっと皮肉な解釈もできそうなんだけど、ご主人様を慕う忠犬の愛が感動を誘う冒険物語。

△「可能性はゼロじゃない」 N・K・ジェミシン
信じるものは救われる。でも、理屈がわからない。

○「ハリーの災難」 ジョン・スコルジー
《老人と宇宙》の外伝。ちゃんと笑えるコメディ。

◎「小さき女神」 イアン・マクドナルド
実は『火星夜想曲』は嫌いだが、これは良かった。通勤時間に読んでたら、あっという間に最寄駅についた。
ネパールに実在する風習の生き神様、クマリに選ばれた少女の話なので、最初のうちは、なんだ現代ものと変わらないじゃないかと思った。確かにクマリはちょっとファンタジックな風習なんだけど、「世界ふしぎ発見!」で見たわー、SFじゃないわー。しかし、これがどんどんSFになっていく。かつて神だった少女が不思議な運命に流される中で、現在のIT大国と地続きな近未来のインドが描かれる。そして、彼女は本当に生きた神となる。
本当のインド人が読むとどう思うかわからないが、IT大国を目指す国であると同時に、格差と階級の社会であるインドという国がSF的な手法で実体感を持って描かれている。「記憶屋ジョニィ」に繋がるSFとしても、クマリであった少女の半生を描く私小説としても、そして、インドという国の問題点を描く小説としても素晴らしいと思った。



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