『永遠の夜』 ギレルモ・デル・トロ&チャック・ホーガン (ハヤカワ文庫 NV)
ギレルモ・デル・トロがTVドラマ用に原案を書いた〈ストレイン〉が3部作となってやっと完結。最初に『ザ・ストレイン』を読んだ時からは想像もつかないようなラストが待っていた。
SFとして始まり、ホラーとして拡大し、最後は宗教色の強いファンタジーへと発散していく。
“吸血鬼”に対処する人々の方法論が実証主義的で、宗教色の強いキャラクターは狂言回しのようだったのに、最後はそう来たか。オーキッドルーメンの記述もわざと比喩的な伝承のように書いたのだと思っていたら実はそっくりそのまんまとはどういうことだ。
ISSの墜落が神の啓示(ともとれる)というあたりはまだいいにしても、最後の大天使はどう解釈したらいいのか迷う。
やっぱりこの辺りは好みが分かれるところだろう。俺的には、どうしてそうなっちゃうんだろうと苦笑してしまった。もうちょっと陳腐でもエイリアン的なネタで終わってほしかったんだけど。
しかし、エンターテイメント小説としては、ギレルモの意地の悪さが発揮されて面白かった。
この物語は家族の物語だ。
主人公であるイーフと、吸血鬼マスターの間で揺れ動く“息子”のザック。マスターの真の息子、ミスター・クインラン。吸血鬼になってもザックを守ろうとするケリー。吸血鬼になった母親を殺せないガス。そして、痴呆症で完全にお荷物となった親を見捨てられないノーラ。
家族を愛するがゆえに、絆を断ち切れず、それが足かせとなってしまう。足手まといとわかっていても、絶対に救えないとわかっていても、最後に残る絆は家族であり、それが運命を決める。
家族の絆といえば美しい話に聞こえるが、それは醜く、泥臭く、恐怖の源であり、時に滑稽で、時に悲しい。紋切型ではなく、こういう形で家族の絆を描いたのは珍しい気がする。
そして、「これが愛だ」という最後の言葉に、泣くか、嗤うか。それは、他人ごとではないのかもしれない。
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