英米SF各賞7冠制覇で話題になった『叛逆航路』の続編。3部作の2作目。
3部作の2作目というと、スター・ウォーズの「帝国の逆襲」なんかが顕著だけれど、どうしてもクライマックスである第3作への布石が中心で、地味になってしまう印象がある。この『亡霊星域』も、やはり地味といえば地味。
主人公のブレクは皇帝アナーンダから艦隊司令官に任じられ、アソエク星系へと赴く。そこで見たものは、暴力による支配と、しいたげられた難民たち。そして、謎のゴースト・ゲートだった。
今回はアソエク星系での差別的支配の是正に焦点が置かれ、そこに、ブレクの愛したオーン副官の妹が絡んでくる。ゴースト・ゲートの向こうに何があるのか、エイリアンであるプレスジャーとの関係はどうなるのかといった大きな物語は次巻へお預け。
なので、『亡霊星域』というタイトルは、もしかしたら先取りしすぎなのかもしれない。
前作と同様、生物学的性別に関係なく“彼女”と呼ばれたり、主人公が艦と接続されているため、複数の視点を同時に認識できたりするので、非常に混乱する。このあたりは解説にも繰り返し書かれているように、このシリーズの最大の特徴といえる。
よくわからなくなるのは、いわゆるジェンダーが無くともセックスはあるためだろう。つまり、すべてが働きバチのように雌ならばいいのだが、実際には雌雄があり、生殖行為もあり、かといってヘテロセックスだけではないのでたちが悪い。
しかも、意図的なのかミスなのか、会話文に女性表現が混じっていることがあって、これに引っ張られる。少なくとも、原書は英語なので、日本語的な女性表現は無いはずだし。
おそらく、セイヴァーデンは雄だというのは確かだろうと思うのだが、他の人物は一体どうだろう。
アーナンダは、当初は雄だと思っていたけれども、今では雌だと思っている。逆に、ティサルワットの第一印象は雌だけれど、アソエクでの行動を見ていると雄のような気が。
ブレクは一番性別を気にしていなさそうだけれど、やっぱり雌か。
これで全員、ユニセックスの外見というのは無いだろうと思うし、実写にしたらどうなるだろうと考えたら、これまた面白い。
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