『ラットランナーズ』 オシーン・マッギャン (創元SF文庫)
「安全監視員」と呼ばれる人間監視カメラによって過剰に監視、管理される近未来。法律的な制限が緩く、細い路地の隙間を駆け抜ける子供たちはラットランナーズと呼ばれ、犯罪組織の入り口で生きていた。彼らの活躍を描くジュブナイルSF。
ジュブナイルらしく、十代の子供たちが大人の犯罪組織を翻弄する痛快な物語をテンポよく描いていて、すぐに惹きこまれてあっさり読める。
監視社会が生まれたきっかけがテロ対策というのは現代っぽい感じ。その監視方法はザルっぽくありながら、監視官が必要以上に権力的になってしまうというのも「囚人と看守」の心理実験の再現としてリアリティがある。
一方で、子供たちが一発逆転に使うSF的ガジェットはいかにも魔法っぽくて興醒めする。生体インプラントを入れて数時間で発現した新規器官をすぐに使いこなすのは嘘っぽい。そこはもうちょっと時間をおいて使いこなすのに苦労するとか、実は既にインプラントを注入されていたとかの方が良かった気がする。
前日譚があって、続編も予定されているとのことだが、生体インプラントで超人化した子供たちがあまりに強力すぎると別の作品になってしまいそう。
ラノベ並みに異能バトルでも繰り広げるのか。あるいは、成長期が終わると発現した器官が死んでしまうとかだとジュブナイルSFっぽいかも。
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