美の壺:水のある庭
水というものは、なんとも不思議なものである。
存在感・音・清涼・時には鏡。
われわれの惑星は水の惑星であり、私達は水の
生き物である。
このあたりが、人が水をこよなく愛する理由かも
知れない。
いつものように、番組に従い3つの壺をご紹介する。
<美の壺1:はるかなる理想郷を回遊せよ>
京都南禅寺界隈の並河邸の庭を紹介されていました。
琵琶湖の水を引くこの別荘群の中でも、軒まで迫る池
は水と自由自在を利用した日本人の美意識を感じる。
景色に込められた幽玄
水量の響き
わびさびの美しさ
京都二条城二之丸庭園に代表される理想郷と見立てた庭
仙人の暮らす世界である蓬莱島から流れ出る水
深山幽谷(滝)を経て、下界に流れ着く水
庭の作り手の意思や想いを読み取り、楽しむことも
庭鑑賞の極意である。
縮景にみる大いなる世界
<美の壺2:水音の深い響きに仕掛けあり>
音が僅かにあることによる静寂感の喚起
無ではなく、僅かに水の音がすることで、
景色全体の静寂感を表現する。
詩仙堂における石川丈山の想い
音の効果を最も考えた庭は、水のない庭で
水の音を演出した。
音だけで清涼感を表している。
小さな滝の音⇒滝の音が精神的に効果あり
悩みやよこしまな心を洗う
本来の水の生き物としての人間に戻るのかも
知れない。
苔涼庭の水禽沓も滴れ落ちる僅かな水で
水の持つ全てを表現する。
水の音が水への想像を掻き立て
人の気持ちを落ち着かせる。
<美の壺3:水面が映す幻想の美>
水面は鏡の如し、
影を映してみる水面
遠くの世界に思いを寄せる
幻想の世界
小石川庭園の円月橋は、水面に映る橋と現実の橋
この2つを併せる事で円を形作る。
日本の庭園には、水面を意識した造りの庭が多い。
極めつけは、水面を極楽浄土と見立てる
淡い蝋燭の光と月光が醸し出す世界
そこには、水面に映る世界のみが遠い極楽浄土
仏の顔が水面に映る仕掛けなどは、
日常の仏閣訪問では感じる事が出来ない。
製作者の意図の深さに驚きである。
池に映し出された世界を想い
遠い極楽浄土を想い
電灯もない世界での幽玄
どうやら日本の美意識に脱帽である。
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