サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

電動車椅子サッカー 広島でのブロック選抜大会

2016年09月13日 | 電動車椅子サッカー

 先週の9月3日~4日、広島市にて開催された『第8回パワーチェアーフットボールブロック選抜大会』に行ってきた。
 今大会には関東、中部、北陸、関西、中国、九州の各ブロックごとに選抜された電動車椅子サッカー選手たちが一堂に集い、日本一を争った。観戦する側からすると日本代表候補クラスの選手たち、そして新たなタレントを一気に見ることができるお得な大会でもある。大会は国際ルールに準じた形で行われ、制限速度は10㎞でかなりの迫力がある。10月に開催される『日本電動車椅子サッカー選手権大会』はクラブチームが集う全国大会で、こちらは制限速度6㎞で行われている。

 第8回とはいうものの実質的には7回目の大会である。昨年の大会は残念ながら諸事情で中止となった。オーストラリアが来日する予定となっていた『第2回APOカップ』中止の余波やスポンサー不在などもあってのことであった。
 ブロック選抜大会はこれまで長野、石川、兵庫、高知、神奈川、鹿児島で開催、今大会で(歴史の浅い北海道ブロックをのぞけば)各ブロックを一巡したことになる。ちなみに私自身は兵庫の大会以降、毎回足を運んでいる。
 過去の歴代優勝チームは、関東、中部、関西、関東、関東、関東。なんと過去4大会で関東が優勝していることになる。(第3回兵庫大会は同年開催されたワールドカップに出場する日本対表チームが強化の一環として出場したものの公式な順位からは除外されたため関西の優勝となった)
 関東代表の強さを一言で言ってしまうならば、選手層の厚さにつきるだろう。今回の第8回大会で関東代表の4連覇なるのか?阻止するチームは出てくるのか?だとしたらどのチームなのか?

 当日朝、組み合わせ抽選が行われ1回戦第1試合は九州と関西の対戦となった。
 試合前の練習に目をやるとチャーミングな野下選手(九州)の姿が見えない。彼女はスピードテストを通過できずベンチ入りできなかったのだ。前述したようにこの大会は制限速度10km でおこなわれた。その際、前進後進ともに10km以上スピードが出ないように設定し試合前には審判団によるスピードテストが行わる。そのなかで運悪く失格となってしまう選手が時々いるわけだ。(彼女は2試合目からは無事出場出来た)           
 試合は九州が立ち上がりから優勢に試合をすすめる。そして前半9分、塩入選手の蹴ったコーナーキックを東選手がうまくニアで合わせて九州が先制。しかし後半3分には関西代表有田選手の左サイドからのキックインをファーポスト付近で待ち構えていた内海選手が流し込み同点に追いつく。だがそのわずか1分後、九州は右サイド深い位置からのキックインのチャンスを得ると、東選手の蹴ったボールに塩入選手がニアで合わせ九州が再び突き放す。試合はそのまま2対1で終了。九州が2回戦に駒を進めた。
 九州はNanchester United鹿児島を中心としたチーム。今回こそ佐賀からもInfinity侍が参戦したものの、これまではほぼ単独チームとして九州代表を引っ張ってきた。そういった意味で、選手層は薄いものの選手間の連係や戦術的な共有はとてもうまくいっている。反面、Red Eagles兵庫や奈良クラブビクトリーロードなど強豪チームを中心とした関西は個々の選手のポテンシャルがうまく出せないまま敗れ去った印象があった。このあたりがブロック選抜大会の難しい面でもある。

 1回戦第2試合は中部と北陸の対戦。飯島選手を中心とした中部は、飯島のアシスト、後藤選手のゴールなどで4-0と北陸を下し1回戦を突破した。

 第3試合では2回戦からの登場となった関東が九州を迎え撃った。九州が関東の4連覇を阻止できるのか、この試合はかなり白熱した痺れる試合となった。
 一進一退の攻防が続くなか、先制したのは九州。前半18分ぺナルティキックを得て東選手がゴールに蹴り込んだ。
 1点を追う関東は永岡選手が自陣からドリブルで持ち上がり相手陣内右サイドで粘りを見せる。そしてファーサイドで待ち構える三上選手へ折り返す。三上がゴール左隅に蹴り込み関東が同点に追いつく。後半12分、Yokohama Crackersのコンビによる得点だった。その後、両チームともに追加点を奪うことが出来ず勝負の行方はPK戦へと持ち込まれ、全員成功した関東が翌日の決勝へ勝ち残った。

 1日目第4試合は、中国が中部と決勝進出をかけて争った。地元の中国は中野選手がリーダーシップを遺憾なく発揮し負けないサッカーを貫徹。スコアレスで2試合連続のPK戦となったが、地元の意地を見せた中国が決勝進出を果たした。

 翌日の5位決定戦では関西が3-0と北陸を、続く3位決定戦では九州が中部を4-1と下した。
その結果、3位九州、4位中部、5位関西、6位北陸となった。

 そした向かえた決勝、関東vs中国の一戦は障がい者サッカー連盟会長北澤豪氏も見守るなかキックオフされた。
 地力に勝る関東が優位に試合を進めるものの、中国は中野選手を中心とした組織的な守りでゴールを許さない。そして後半7分、均衡が破れる。関東がコーナーキックから先制。正確なキックの北沢選手の蹴ったボールを吉沢選手がうまく方向をかえゴールに流し込んだ。東京の強豪チーム、レインボー・ソルジャーのチームメイト同士による得点だった。
 そして最少得点差を守り切った関東が優勝、大会4連覇を飾った。

 その後の閉会式でプレゼンターを務めた北澤会長と少しだけ話した際「最後は頭だよね」と言われていたがまさしくその通り、電動車椅子サッカーはレベルが上がれば上がるほど“頭と頭”の勝負になってくる。もちろん基本技術に裏打ちされていることが大前提で、体調管理、電動車椅子の調整もとても重要だ。
 初見の方は回転キックなどやぶつかり合いなどを見て「凄い」という感想を持つ場合が多いようだが、サッカーという視点で見ると頭の中も見えてくる。そうするともっと観戦も楽しくなるはずだ。

 この大会では試合以外のイベントも開催された。初日は知的障害や身体障害、様々な障害を持つダンスユニットによるパフォーマンスが繰り広げられた。2日目は地元のブラインドサッカーやアンプティサッカーのメンバー、なでしこリーグのアンジュヴィオレ広島の選手たちが訪れた。電動車椅子サッカーの選手も含めたドリブルリレー対決では、各競技の選手たちが“技”を披露。アンジュヴィオレ広島のある選手は大きな電動車椅子サッカーのボールをリフティングしながらドリブル、場内を沸かせた。

 
 日本を代表する選手の育成や強化を目的として国際ルールに準じた時速10㎞での公式大会」として開催されてきたこの大会は、どうもこの大会が最後になるようだ。今年度4月に障がい者サッカー連盟が設立、電動車椅子サッカー協会も法人化されるといった変革の流れのなかで、これまではあった各ブロックごとの協会は発展的解消、各都道府県協会に再編成されるようだ。
 来年度以降、制限速度10㎞の大会がどうなっていくのか? 内部的には様々な議論の末、既に方向づけはなされているだろう。おそらく選手やクラブチームの意向、世界の動向を視野にいれての再編になっていくものと思われる。個人的に「こうなっていくのかな」という予想と願望はある。
はたして電動車椅子サッカーの未来はどうなっていくのだろう。
 
 そして来年はいよいよ世界大会だ! 



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