出自はままならぬ
宮尾登美子さんには、遠見ながらお目に掛かった事があった。もう80才は越しておられるのだろうか。車いすに乗っておられた。あれ以来興味をもって彼女の作品を読んだが、自分の出自について随分悩まれたようである。作品の随所に出自に対する嫌悪感があからさまに語られている。
人は、どういう境遇に生まれるかは、己で決めることができない。
皇室や権力者や金持ちの人々生まれつきのも、極貧のスラム街に生まれつくのも、みんな天の采配である。
そして不遇の中に生まれおち、人々からいじめられ、いびられて、石持って追われ、この世の地獄に落とされたものが、身を捨てて、社会に復讐するのもはなはだ迷惑な話ではあるが、当人にしてみれば、この世の恨みつらみを晴らすには、多くの罪なき人を悲惨なルツボに、陥れて辛酸の苦しみを味わわさせる事が、唯一の慰めと言うことになるのだろう。
だからこの世からもろもろの惨劇が、きえ失せるせることは無い。
この世で時々起こる、不条理の根源を突き詰めれば、その一端は、天の采配の不条理にあるのだろう。と僕は思う事がある。
人間は知恵を使って人を不幸に陥れる出自を何故消してしまわないのだろうかと長年思ってきた。人はその人の、人となりが全てであって、それは何ものにも増して尊重されなくてはならない。
先日先祖のことを調べようと思って、役所に出向いたが、ぼくのじいさんの戸籍はすでに廃棄処分になっていた。約十年前にすでに破棄処分されたそうである。
ある特別は家、例えば天皇家のような家系は別だが、その他大勢が出自を競うような時勢でもあるまい。わずか7,80年の人生で出自も何も関係ない。各自が好きなように生きて家庭を作り、好きなように生きることができれば、それだけで良い。後は本人の生き方の問題だ。とは思うが、宮尾さんの場合、作品の諸処にその影を見ると、生まれ落ちた所を生涯消すことができないのだろう。それはある人には自慢の種に成り、ある人には劣等感の塊となって、人生に影をおとす。出自を人間から消し去ることは不可能なのだろうか。
宮尾登美子さんには、遠見ながらお目に掛かった事があった。もう80才は越しておられるのだろうか。車いすに乗っておられた。あれ以来興味をもって彼女の作品を読んだが、自分の出自について随分悩まれたようである。作品の随所に出自に対する嫌悪感があからさまに語られている。
人は、どういう境遇に生まれるかは、己で決めることができない。
皇室や権力者や金持ちの人々生まれつきのも、極貧のスラム街に生まれつくのも、みんな天の采配である。
そして不遇の中に生まれおち、人々からいじめられ、いびられて、石持って追われ、この世の地獄に落とされたものが、身を捨てて、社会に復讐するのもはなはだ迷惑な話ではあるが、当人にしてみれば、この世の恨みつらみを晴らすには、多くの罪なき人を悲惨なルツボに、陥れて辛酸の苦しみを味わわさせる事が、唯一の慰めと言うことになるのだろう。
だからこの世からもろもろの惨劇が、きえ失せるせることは無い。
この世で時々起こる、不条理の根源を突き詰めれば、その一端は、天の采配の不条理にあるのだろう。と僕は思う事がある。
人間は知恵を使って人を不幸に陥れる出自を何故消してしまわないのだろうかと長年思ってきた。人はその人の、人となりが全てであって、それは何ものにも増して尊重されなくてはならない。
先日先祖のことを調べようと思って、役所に出向いたが、ぼくのじいさんの戸籍はすでに廃棄処分になっていた。約十年前にすでに破棄処分されたそうである。
ある特別は家、例えば天皇家のような家系は別だが、その他大勢が出自を競うような時勢でもあるまい。わずか7,80年の人生で出自も何も関係ない。各自が好きなように生きて家庭を作り、好きなように生きることができれば、それだけで良い。後は本人の生き方の問題だ。とは思うが、宮尾さんの場合、作品の諸処にその影を見ると、生まれ落ちた所を生涯消すことができないのだろう。それはある人には自慢の種に成り、ある人には劣等感の塊となって、人生に影をおとす。出自を人間から消し去ることは不可能なのだろうか。