伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

小説を発信中

  
  
  
  

  

ジャコシカ51

2018-07-01 11:21:04 | ジャコシカ・・・小説
 客にとって適切で良い品を選ぶことよりも、言葉巧みに売り付けることに長けていく自分に、時

にはやり切れない嫌悪を感じ始めていた。

 そんな時の「フローラ」だった。

 何もかもが新しく、自分は今初めてフアッションの香りと風を受けていると感じた。

 遂にその時が来た。

 今この時に勢いに乗らなければ、チャンスは二度とない。

 だから優美の遣り方は正しく。社長はその勢いを支え押し進めるべきだと思っていた。

 2人は近い内に別の場所に縫製工場の開設を計画している。

 急激な拡張にはさすがに不安を感じたが、大切なのはタイミングと勢いなのだ。

 だから志乃の言葉は意外に聞こえたが、しかしはっとさせられもした。

 そもそも話しは自分が経営的な不安を口にしたところから始まったのだ。

 そこえ志乃が止まらなくなった電車などと応じて、無意識の内に頭を持ち上げてくる不安を煽っ

た。

 もしかしたら自分は、誰かに不安を打ち消してもらいたかったのかも知れない。

 あやは自分が臆病な人間だと気付いた。

 4年の経験で得たものは力の蓄積だけではなく、危険に対する敏感過ぎる反応もあるかも知れな

いと思った。

 あやはもう一度、志乃に尋ねずにはいられなかった。

 「それで志乃さんは、この店の先行をどう見ているのかな」

 志乃は即座に応えた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする