案の定、やがて鉄さんはちよっと顔を上げ、弱い電球を見上げて、ようやく辿り着いた言葉を手
繰り寄せるようにぼそりと言った。
「20年になるなあ」
「20年前にここに来て、この家を建てたのですか」
「違うなあ、ここには子供が一人の夫婦が住んでいた。わしは何の縁も無い人間だが、ひょんな
ことでころがりこんでしまった」
「何かとっかかりがあった訳ですか」
「あんたと同じようなもんだ。峠で吹雪に会って行き斃れ寸前で、ここの人に助けられた。あん
たは一旦町に出たが、わしは峠の道から直接坂を下って、この家に連れてこられた。以来ずっとこ
こにいる」
鉄さんはここで初めて高志の眼を見て、悪戯を見付けられた子供のように、にっと笑った。
その笑いが一気に高志の好奇心を揺すった。
尋ねたいことがごっちゃになって、喉元にこみ上げてきた。
何の思慮もなく、浮かんだ最初の言葉を口に出そうとした時、鉄さんが思案顔で言った。
「だからなあ、高さんを連れて来てしまった。まるで二代目じゃないか」
「そうですね。すごく面白いですね」
「面白いだろう。しかしあんたのその言い方も面白いね」
「そうですね。普通不思議な縁ですねとか奇遇ですねとか、もっと言って運命的出会いですねと
か言いますね」
「だ、なあ」
二人は思わず顔を見合わせて笑った。
繰り寄せるようにぼそりと言った。
「20年になるなあ」
「20年前にここに来て、この家を建てたのですか」
「違うなあ、ここには子供が一人の夫婦が住んでいた。わしは何の縁も無い人間だが、ひょんな
ことでころがりこんでしまった」
「何かとっかかりがあった訳ですか」
「あんたと同じようなもんだ。峠で吹雪に会って行き斃れ寸前で、ここの人に助けられた。あん
たは一旦町に出たが、わしは峠の道から直接坂を下って、この家に連れてこられた。以来ずっとこ
こにいる」
鉄さんはここで初めて高志の眼を見て、悪戯を見付けられた子供のように、にっと笑った。
その笑いが一気に高志の好奇心を揺すった。
尋ねたいことがごっちゃになって、喉元にこみ上げてきた。
何の思慮もなく、浮かんだ最初の言葉を口に出そうとした時、鉄さんが思案顔で言った。
「だからなあ、高さんを連れて来てしまった。まるで二代目じゃないか」
「そうですね。すごく面白いですね」
「面白いだろう。しかしあんたのその言い方も面白いね」
「そうですね。普通不思議な縁ですねとか奇遇ですねとか、もっと言って運命的出会いですねと
か言いますね」
「だ、なあ」
二人は思わず顔を見合わせて笑った。