伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

小説を発信中

  
  
  
  

  

ジャコシカ60

2018-07-29 02:11:07 | ジャコシカ・・・小説
 案の定、やがて鉄さんはちよっと顔を上げ、弱い電球を見上げて、ようやく辿り着いた言葉を手

繰り寄せるようにぼそりと言った。

 「20年になるなあ」

 「20年前にここに来て、この家を建てたのですか」

 「違うなあ、ここには子供が一人の夫婦が住んでいた。わしは何の縁も無い人間だが、ひょんな

ことでころがりこんでしまった」

 「何かとっかかりがあった訳ですか」

 「あんたと同じようなもんだ。峠で吹雪に会って行き斃れ寸前で、ここの人に助けられた。あん

たは一旦町に出たが、わしは峠の道から直接坂を下って、この家に連れてこられた。以来ずっとこ

こにいる」

 鉄さんはここで初めて高志の眼を見て、悪戯を見付けられた子供のように、にっと笑った。

 その笑いが一気に高志の好奇心を揺すった。

 尋ねたいことがごっちゃになって、喉元にこみ上げてきた。

 何の思慮もなく、浮かんだ最初の言葉を口に出そうとした時、鉄さんが思案顔で言った。

 
 「だからなあ、高さんを連れて来てしまった。まるで二代目じゃないか」

 「そうですね。すごく面白いですね」

 「面白いだろう。しかしあんたのその言い方も面白いね」

 「そうですね。普通不思議な縁ですねとか奇遇ですねとか、もっと言って運命的出会いですねと

か言いますね」

 「だ、なあ」

 二人は思わず顔を見合わせて笑った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする