そのくせ気詰まりを感じることもない。
「今日は何にしますか」
いつの間にかその言葉が、高志の夕方の定まった言葉になっている。
と言うのも朝食はいつも同じ献立と決まっているし、昼は前日の残りとなっているからだ。
だから朝と昼はどちらかが用意するというのではなく、片方が動き始めると、もう一方も腰を上
げる。
何をやるかは一方がやることを見れば、もう一方のやることは自然に決まってくる。
夕食は新しいものになるが、それとて献立は限られている。
ここでは何事も単純で平明だ。
それなのに高志は退屈を感じない。
変化といえば窓の外の海の様子と入江の眺めだ。
天気はずっと荒れ狂っている。
左右にそそり立つ崖が、渦巻く吹雪きを入江に閉じ込めて楽しんでいるみたいだ。
背後に迫る斜面の楢や柏の巨木が激しく響動(どよ)めき、海から押し寄せる波の音さえも打ち消す。
ごおごおと轟くその山鳴りを聴いていると、時化る海さえも、さざ波が騒いでいるくらいにしか
思えない。
しかし瞳を凝らせば、波頭は鎌首を持ち上げて、繰り返し繰り返し入江を目がけて押し寄せてい
る。
その終わりのない反復を見ていると、いつかあのうねりの一つが止めどなく盛り上がって山を成
し、この小屋をひと呑みにしてしまうのではないかと思ってしまう。
それが少こしの恐怖感も伴わず、むしろ待ち遠しい。
「今日は何にしますか」
いつの間にかその言葉が、高志の夕方の定まった言葉になっている。
と言うのも朝食はいつも同じ献立と決まっているし、昼は前日の残りとなっているからだ。
だから朝と昼はどちらかが用意するというのではなく、片方が動き始めると、もう一方も腰を上
げる。
何をやるかは一方がやることを見れば、もう一方のやることは自然に決まってくる。
夕食は新しいものになるが、それとて献立は限られている。
ここでは何事も単純で平明だ。
それなのに高志は退屈を感じない。
変化といえば窓の外の海の様子と入江の眺めだ。
天気はずっと荒れ狂っている。
左右にそそり立つ崖が、渦巻く吹雪きを入江に閉じ込めて楽しんでいるみたいだ。
背後に迫る斜面の楢や柏の巨木が激しく響動(どよ)めき、海から押し寄せる波の音さえも打ち消す。
ごおごおと轟くその山鳴りを聴いていると、時化る海さえも、さざ波が騒いでいるくらいにしか
思えない。
しかし瞳を凝らせば、波頭は鎌首を持ち上げて、繰り返し繰り返し入江を目がけて押し寄せてい
る。
その終わりのない反復を見ていると、いつかあのうねりの一つが止めどなく盛り上がって山を成
し、この小屋をひと呑みにしてしまうのではないかと思ってしまう。
それが少こしの恐怖感も伴わず、むしろ待ち遠しい。