今度こそは今度こそは、軒下までは駈け上がるぞ。あと一息だ、もう一息だなどと心の中で、掛
け声さえかけている。
自分がだんだん子供に返っていく気がしてくる。
奇岩だって海だって、山だって樹々だって渦巻く吹雪さえもみんな、巨大な生き物に見えてくる。
どれもがのたうち咆哮し、文目(あやめ)も見えず絡み合っている。その下で小屋は軋(きし)み痙攣し悲鳴を上げ
る。
やがて小屋は彼等の餌食になってしまうのだろう。初めて彼等の総攻撃を受けた時は、思わず身
を縮め逃げ場を探したが、今ではもう少こしも恐怖を感じない。
当然鉄五郎は眉一つ動かさない。
そんな彼を見ていると、たちまち高志の気持ちも静まってしまった。
荒れ始めて幾日目かのある日の夕食の後、高志は自分でも驚いたことに、鉄五郎に問いかけてい
た。
「鉄さんはいつからここに住んでいるのですか」
鉄さんは直ぐには答えなかった。
ストーブの火加減を直し、新しい薪をくべそれから茶を入れ直した。
高志には彼が問いかけられたのを忘れてしまったのか無視されているのか、それとも答えたくな
いのか、あるいは答えを探しているのか見当がつかない。
ただ質問を不快に思っている訳でもないことは、その表情から読み取ることができた。
それではと、急ぐ答えでもないので、黙って待つことにした。
その辺りの呼吸というか間合いは、二人の間には出来上がっている気がした。
け声さえかけている。
自分がだんだん子供に返っていく気がしてくる。
奇岩だって海だって、山だって樹々だって渦巻く吹雪さえもみんな、巨大な生き物に見えてくる。
どれもがのたうち咆哮し、文目(あやめ)も見えず絡み合っている。その下で小屋は軋(きし)み痙攣し悲鳴を上げ
る。
やがて小屋は彼等の餌食になってしまうのだろう。初めて彼等の総攻撃を受けた時は、思わず身
を縮め逃げ場を探したが、今ではもう少こしも恐怖を感じない。
当然鉄五郎は眉一つ動かさない。
そんな彼を見ていると、たちまち高志の気持ちも静まってしまった。
荒れ始めて幾日目かのある日の夕食の後、高志は自分でも驚いたことに、鉄五郎に問いかけてい
た。
「鉄さんはいつからここに住んでいるのですか」
鉄さんは直ぐには答えなかった。
ストーブの火加減を直し、新しい薪をくべそれから茶を入れ直した。
高志には彼が問いかけられたのを忘れてしまったのか無視されているのか、それとも答えたくな
いのか、あるいは答えを探しているのか見当がつかない。
ただ質問を不快に思っている訳でもないことは、その表情から読み取ることができた。
それではと、急ぐ答えでもないので、黙って待つことにした。
その辺りの呼吸というか間合いは、二人の間には出来上がっている気がした。