見詰め直した志乃の顔は、既に言ったことを忘れたようにあやから外されていた。
その様子を見てあやは、はっとなって理解した。
彼女は桐山昇という人物を、あくまで一人の男として見ようとしている。
そこには彼女の女としての視線が、強く感じられた。
あやは思わず優美に眼を転じた。
誰にも洩らしたことはなかったが、優美は桐山と個人的な付き合いがあると、あやは確信してい
た。
男と女の関係に、自分などよりもはるかに鋭い感覚を持っている志乃が、このことに気付かない
はずはないと思われた。
あやはブテイック「フローラ」の先行に、今までに感じたことのない不安を感じた。
七
汽車で帰った日から、高志の気持ちに応えるかのように、荒れた日が続いた。
暮れも近付いているのに、次第に今日が何日なのかも分からなくなる。
ラジオが無ければ、完全に日付けを見失っていただろう。
賑やかな万歳のかけ合いで、初めて大晦日の近付いたことを知る。
ふと汽車で帰った日から、ずっと何をやっていたのかを思い返してみる。
網の繕いや延縄(はえなわ)の仕掛作りをしていた気がするが、退屈を感じたことはない。
互いにまだ充分に知らない二人の男が、離れ小島のような所に終日こもっているのに、これとい
って何かを話し合うこともない。
その様子を見てあやは、はっとなって理解した。
彼女は桐山昇という人物を、あくまで一人の男として見ようとしている。
そこには彼女の女としての視線が、強く感じられた。
あやは思わず優美に眼を転じた。
誰にも洩らしたことはなかったが、優美は桐山と個人的な付き合いがあると、あやは確信してい
た。
男と女の関係に、自分などよりもはるかに鋭い感覚を持っている志乃が、このことに気付かない
はずはないと思われた。
あやはブテイック「フローラ」の先行に、今までに感じたことのない不安を感じた。
七
汽車で帰った日から、高志の気持ちに応えるかのように、荒れた日が続いた。
暮れも近付いているのに、次第に今日が何日なのかも分からなくなる。
ラジオが無ければ、完全に日付けを見失っていただろう。
賑やかな万歳のかけ合いで、初めて大晦日の近付いたことを知る。
ふと汽車で帰った日から、ずっと何をやっていたのかを思い返してみる。
網の繕いや延縄(はえなわ)の仕掛作りをしていた気がするが、退屈を感じたことはない。
互いにまだ充分に知らない二人の男が、離れ小島のような所に終日こもっているのに、これとい
って何かを話し合うこともない。