伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

小説を発信中

  
  
  
  

  

ジャコシカ73

2018-09-12 00:03:38 | ジャコシカ・・・小説
休日出勤のせめてもの慰めである。

 今日もエレベーターの上昇につれて、そんなエリアに近付くのを感じて、前日から持ち越してい

る疲れが、幾分和らいでいく。

 仕事はいやではないし、まして苦痛であるはずはない。

 せっかくの休日を潰しているのだから、満足のいく仕上げにしょう。

 工房のドアの前に立った時、気持ちは完全に仕事に移っていた。

 ノブに手をかけて初めて、鉄のドアの中央にはめこまれたラス入り磨硝子の内側から、微かに明

かりが差しているのに気付いた。

 今日は他に出勤予定者がいるとは聞いていない。

 もしかしたら優美さんが急に出られることになったのかも知れない。

 普段から彼女の仕事の遣り方は、時間の決まりがなく休日など無いに等しい。

 それでも店の定休日は大概学校のはずだが、たまたま今日はこちらに出ているとしたら、都合が

良い。

 今日の仕事について、良いアドバイスをもらえるかも知れない。

 ノブは回った。

 鍵はかかっていない。

 ふとあやの心に悪戯心が湧いた。

 そっと入って、日頃何事に対しても冷静沈着、どちらかと言うとポーカーフェイスの優美を驚か

してやりたくなった。

 工房に入ると眼の前に、商品の入ったダンボールがぎっしり詰まったスチールラップが衝(つい)立ての

ように置かれている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする