伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ184

2021-03-23 11:37:28 | ジャコシカ・・・小説

私の知らないまったく別の世界が、私にかかわっているなんて考えたこともなかった。

 

 実の父親のように私を育て支えてくれた人を、ただのジャコシカという一言で片付けていたのよ。

 

 私、どうしたのかしらね、高さんにこんな話しばかりして、うんざりでしょう」

 

 高志は頬杖を解いて、コーヒーカップを手にした。

 

 残り少ない中身を大事そうに飲んでから言った。

 

 「うんざりなんてしていないし、退屈もしていないさ。ただ一つ言わせてもらえば、鉄さんはジ

 

ャコシカしていたかも知れないけれど、ジャコシカではないと思う。

 

 ジャコシカというのは、僕のような人間を言うのさ。鉄さんは大工という、立派な職業を身につ

 

けた職人でしょう。

 

 流れ歩くには、それなりの理由があったと思う。僕とは違う。

 

 僕はジャコシカしているのではなくて、ジャコシカそのものなんだ。

 

 あやさんの話しを聞いていて、そのことを強く感じる。だからあやさんは生き方において、鉄さ

 

んと同じような気がする。

 

 生き方に理由があり、目的がある」

 

 「高さんはそうではないと言うのね」

 

 「いつかも言った通り、僕にはそういったものは何もない」

 

 「そうね、そう言っていたわね。私には理解できないけれど」

 

 あやは一瞬、悲し気に高志の瞳の奥を見た。

 

 それからカップの中を覗きこんだが、その底にコーヒーはもう残っていなかった。

 

 所在無さ気に空のカップを両手の中に包みこみ、まさぐっていたが、やがてカチリと音を立てて

 

置いた。

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