先日の道新の記事より
22日
シカ20頭 朝の苫小牧 校庭に三時間
道理でJRが時々この辺りで
急停車する筈です。
「それでは、やはり出て行くのね」
高志は悪戯を見透かされたように笑った。
「そろそろだね。そんな気分かな」
あやは小さくうなずいた。
「私が言えたことではないけれど、それでもできるだけ長くいて欲しいわ。私も近々出て行くつ
もりなのに、勝手よね」
「そんなことはないさ、鉄さんだってそれを望んでいると思うよ。あやさんの生きる場所がここで
はないことは、充分に分かっているから」
二人は視線を合わせ、その後は何も言わず、どちらからともなく腰を上げた。
十八
穏やかな春の海は気持ちが和む。
山の緑も柔らかで優しい。
延縄漁を終えて港に向かう。
無口な鉄さんと海の上にいると、いつか自分が波間に浮かぶ流れ藻にでもなった気分になる。
ゆらゆらと溜まるばかりに見えるが、気がつけばどこえ向かうともなく揺れて流れて、消えてい
る。
港では、千恵と清子が待っていた。
荷渡しを終えた鉄さんと高志に、嬉しそうに千恵が紙袋を差し出した。
「これ袖の下」
見るとアンパンやクリームパン、ジャムパン等が入っている。