伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ177

2021-02-11 23:57:02 | ジャコシカ・・・小説

 「なら、そちらの方はまかせた」

 

  

 高志が案じた通り鉄さんは素直に、あやの言うことは聞かなかった。それでも繰り返し訴える、

 

あやの根気に折れた。

 

 「仕方がない、この際、二人に余り心配かけては、罰が当たるというもんだ」

 

 

 高志が一人で漁協に行くようになってから、鉄さんは漁にも無理をしなくなった。

 

 出漁前の空模様、海の状況判断には今までよりも時間をかけるようになり、少こしでも時化模様

 

の時は、あっさりと漁を諦めるか、眼の前の入江の入口あたりにまでしか、足を延ばさなくなった。

 

 それはあやと高志にとっては、良い兆候に思えた。二人の時なら海の状況が問題なしとして出漁

 

しても、空模様に変化が現れると躊躇なく切り上げて帰った。

 

 そんな鉄さんを見て、高志は逆にかって感じたことのない不安を感じた。

 

 何だか鉄さんが変わってしまった気がしたのだ。

 

 そんなある日、あやと二人で漁協に出荷した時のことだった。事務所を出ようとした二人に、

 

清子が追いかけて来て声をかけた。

 

 「この間鉄さん宛に手紙が届いていたけれど、あれ私驚いたわ。鉄さんに手紙なんて今まで一度

 

もなかったことだからびっくりだった。

 

 失礼だけれど鉄さんに手紙をくれる人がいたということが、何だか不思議な気がしたの。

 

 私あの人はひょっこり峠に現れて影山さんに会って、それからここに住み始めた人だってことし

 

か知らなかったので、勝手に知人も身寄りもない人なんだと思っていたの。

 

 だから影山さんが唯一の身内で、あやさんはあの人のたった一人の実際の子供だと思っていたの」

 

 清子は二人を事務所の玄関脇に足止めをして、彼女としてはめずらしく長い話しをした。

 


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