伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ173

2020-12-31 12:35:02 | ジャコシカ・・・小説

 

 だから腹が立ったの。

 

 とてもじっとしていられないほど怒りがこみ上げてきて、それで気がついたら入江の家に逃げこ

 

んでいた。

 

 いや違うわ。逃げこんだのではないの。

 

 これも少こしずつ分かったことなのだけれど私は怒りを、あの頃の怒りを取り戻したいと思って

 

いたんだわ。

 

 本当のところ何に対する怒りなのか、未だに良く分からないのだけれど、とにかく私は全身に怒

 

りを抱いていた。

 

 その怒りを忘れたら、もう私でなくなるの。だから入江の家に戻ったのだと気付いた。

 

 私は強くなければいけないの。

 

 強くなければ、この怒りを抱いて生きていくことはできない。

 

 私の中に女の弱さがあるとしたら、やはりそれは許すことができないと思う。

 

 優美さん、こんな私と再び組んで仕事ができますか」

 

 あやは言い終わると、残りのコーヒーをすすって、しばらくはそこに何か特別の答えが潜んでい

 

るかのように覗きこみ、ゆるやかに回していた。

 

 そんなあやを見る優美の瞳が、微かに潤んだ。

 

 「あやさんの仕事に対する情熱の根っこが少こし分かった気がする。

 

 それは多分、私の中にあるものと無縁ではないと思う。もっとも、私はいつも女でけつまずいて

 

きたけれど。

 

 でも、今度は大丈夫、札幌の店に男の影は零だから。もう一度、貴方と仕事がしたいの。

 

 


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