伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ186

2021-03-26 13:22:22 | ジャコシカ・・・小説

受け取った高志は袋の中に顔を近付け、香ばしい匂いを吸いこみ眼を細めて言った。

 

 「で、その心は」

 

 「千恵、お願いするならまず鉄さんでしょう」

 

 清子がたしなめるように言った。

 

 慌てて千恵が鉄さんに向き直った。

 

 「やあ千恵ちゃん、足はもう大丈夫かい」

 

 鉄さんは滅多に見せない笑顔で言った。

 

 「その折はご迷惑をおかけしました。おかげ様ですっかり治りました」

 

 千恵は急に改まって、ペコリと頭を下げた。

 

 高志は先刻あいさつは済んでいる。

 

 「今日は二人そろって、何か用かな」

 

 「それなのよ小父さん、これ食べませんか」

 

 千恵は高志に差し出していた、アンパンの紙袋を鉄五郎に向けた。

 

 「嬉しいね。これは鼻に効くね」

 

 先ほどの会話を受けた鉄さんは、少こしとぼけ顔で言って、アンパンを一つつまみ出した。

 

 続いて高志も手を伸ばす。

 

 高志と鉄さんがアンパンを頬張ったのを見届けてから、千恵が明るく大きな声で言った。

 

 

「釣りに連れて行って下さい。清子姉さんと二人、今度の日曜日にお願いします」

 

 鉄さんの顔がくしゃりと崩れた。

 

 「いいよ」


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