





デュフール氏は妻ジュリエットと義母、そして娘アンリエッタとその婚約者アナトールの5人で、牛乳屋に借りた馬車で田舎にピクニックに出掛けた。
目的地に着いた一家は、昼食をとることに。妻とアンリエッタは、そこで見つけたブランコに乗る。そのブランコに乗ったアンリエッタの美しい姿に通りすがりの神父たちや、子どもたち、そしてレストランにいた青年2人、アンリとロドルフの目をくぎ付けにする。
ロドルフはアンリを誘って、アンリエッタ(と母親)をナンパする。が、すかさずアンリはアンリエッタをさりげなくさらって自分の船へと誘い、ロドルフは不覚にも母親を船に乗せることに、、、。
親の決めた結婚を前にしたアンリエッタは、アンリという田舎者だが魅力的な男性に出会ったことで、彼女の中で何かが大きく変わるのだが、、、。
初公開(1946年)から約70年を経てのデジタルリマスター版にて、本邦再公開。
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名画、名画、と言われている本作です。いまさら、私ごときが本作のコメントをするのも野暮ってもんでしょう。
なので、今回、わざわざ劇場まで見に行って感じたことを率直に書きたいと思います。
映画を見る際に、何をメインに見るか。これによって、本作に対する感想はかなり変わってくるでしょう。私のように、ストーリーとか、人物描写とかをメインに見る者にとって、本作は、「これが名作なのか???」というのが正直なところでございました。
もちろん、モノクロで、日の光を浴びた川面や、光そのもの、木々が風に揺れキラキラ見えるさま、、、etcはなるほど美しいです。モノクロなのに色が見えるみたいです。爽やかなピクニック日和が、伝わってきます。オーギュスト・ルノアールの描く光に溢れた絵画を、まんま映像化したようです。確かに美しい。
でもなぁ、、、。レストランでの店主(ルノアール監督が演じている)を交えたアンリとロドルフの会話は、正直言って、サイテーだし、、、。ジュリエットがキンキン声で話す内容はおバカっぽいし。アンリエッタも、皆が見とれるほど美しいとも思えないし、、、。
何より、アンリエッタとアンリと2人きりになってからのシーンが、、、なんつーか、これって時代のせいなんだろうなぁ。でも、、、。(セリフは記憶を頼りにしているので正確じゃありません)
アンリ「(船を降りて)森へ行きませんか?」
アンリエッタ「・・・私、降りない方が良いと思うの」
アンリ「なぜ?」
アンリエッタ「ママが心配するから・・・」
とかなんとか、船の上での問答があって、すると、ジュリエットとロドルフを乗せた船がやってきて、何だか成り行きで、アンリとアンリエッタの船は岸に停まるのですよ。でもって、2人で森の小道を少しばかり歩くんですが、歩きながらアンリはアンリエッタの腰にやたらと手を回そうとし、アンリエッタはそれをかわしつつ、、、、
アンリエッタ「小さなおうちみたい。素敵なところね!(はしゃぎ気味)」
アンリ「私はよく来るんですよ。僕の部屋みたいなところだ(下心丸見えな顔)」
とかって、幼稚園児みたいな会話を交わしたかと思うと、アンリエッタの方から木の根元に腰を下ろして、まるでベッドに横たわるかのように身を横たえるのです。
は?! え゛~~っ。と思いませんかね。私は思いました。なんじゃそら、、、と。
でもって、アンリはシメた!とばかりにアンリエッタの横に密着して座ると、腰に手を回し、アンリエッタはそれを振り払い、みたいなことを数回繰り返し、、、(ウゲゲ~ッ)。 でもってアンリはアンリエッタにキスを迫るんだけど、アンリエッタはそれをかわしながら、聞こえてくる鳥の声に「ウグイスの声・・・」とかなんとか言って、そのさえずりに感動したのか涙を頬に一筋流し、、、。一応、お約束のようにアンリに抵抗するんですが、次の瞬間、なんと、自分からアンリの首にすがりついたかと思うと、アンリの唇に吸いついていました・・・。
ここでさらに、は????となってしまったんですが、私。いけませんかね、この感性。ここって、感動するとこですか? バザンは「映画史上、最も残虐で、最も美しい瞬間である」と言っているそうですが、、、。美しい、、、かなぁ? これ。
これには、恐らく、アンリのルックスがかなり影響しています。アンリが、青年のはずなんだけど、髭生やして体格も中年みたいな感じの、今で言えば立派なオヤジなんですよ。しかも脂ぎった感じの。およそ、爽やかなイケメン好青年とは程遠いんですよ。これじゃ、ただの助平オヤジの術中にまんまとはまったオツムの弱いお嬢さん、って感じでしょーよ。画的にも美しいとは、とても思えないのですが、私。
いえ、別に、貞操観念がどーとかこーとか言っているのではありません。積極的な女性は大好きですが、なんというか、この唐突感、、、。どうしてくれよう、この置いてけぼり感。
ナンパする前に、アンリとロドルフの会話で、バカ丸出しのロドルフに比べて、多少は真面目っぽさを出したセリフを吐いていたアンリではありますが、、、。いや、いいんです、別に。ヤリたいだけの男の描写でも。つまり、ぶっちゃけ「ひと夏の経験を姉ちゃんにさせてやらぁ」的な内容なのに、全編にわたる描写のなんだか妙な格調高さが嫌味なんだよね。
、、、と思っちゃう私が間違いなんでしょう、きっと。本作に対して、こんな不敬なことを書いている感想など、いまだかつて目にしたことがありませんからね。そもそも、格調高い、ってのが刷り込みみたいなもんですし。前評判が全くなければ、もっとこき下ろしてしまっていたことでしょう、私のことだから。
その後、画面は一転にわかに掻き曇り、嵐が。これが2人のその後を暗示しているってことでしょうね、もちろん。1年後、2人は再会します、あの森で。アンリは1年前のままだけど、アンリエッタは人妻として。アンリエッタの隣には、夫のアナトールが昼寝をしています。2人は短い会話を交わします。
アンリ「あれから毎日のように来ている、思い出の場所だから」
アンリエッタ「私も、毎晩思い出すわ・・・!」
で、見つめ合っていると、アナトールが目を覚まし、アンリは木陰に身を隠し、アンリエッタとアナトールが去っていくのを見送る、、、。
決して幸せそうには見えないアンリエッタ。アナトールと2人でボートに乗って去っていくのですが、ボートを漕いでいるのはアンリエッタです。1年前、アンリが上手にボートを漕ぎ、そのボートに乗って川や森の木々の美しさを堪能していたアンリエッタでしたが、、、。この対比が、2人の出会いが2人の人生を変えた、ってことを言いたいのでしょうね、多分。
まぁ、ラストは多少切なさも感じられましたけれども、いかんせん、そこに辿りつくまでが、どーにもこーにも、私的には???な感じだったもんですから、本作がいかな名作であろうとも、到底、感動とは程遠い作品だったとしか書き様がありません。本作を愛する皆さまには、不快極まりない文章で、申し訳ないのですが。
ただ、助監督に、私の好きなベッケルとヴィスコンティが名を連ねているのですよね~。本作は、紆余曲折を経て、撮影されなかったシーンを解説でつないだ作品だとか。その後の、名画を制作した人々が携わった作品でもあり、感慨もひとしお、、、のはずだったのになぁ。
“名作”を堪能できませんでした。
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