映画 ご(誤)鑑賞日記

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画家モリゾ、マネの描いた美女~名画に隠された秘密(2012年)

2015-07-08 | 【か】



 1865年、姉エドマと姉妹で絵描きを志していたベルト・モリゾは、美術館で模写していたところ、エドゥアール・マネに出会う。マネは、ベルトの絵に何かを感じた様子。

 そして、マネからベルトにモデルになってほしいと依頼される。依頼を受けるベルト。互いに惹かれるが、超えそうで超えない一線。果たして、しかし、マネは妻帯者だった。同じくマネに惹かれていたエドマは、ベルト以上にこの事実に衝撃を受け、早々に結婚してしまう。

 両親からの結婚への圧力、女性画家なんてそもそも世の中にほとんど存在していなかった時代、才能あるベルトは苦悩しながら、絵描きとしての自らの人生を諦めず、女性としても求められる人生を歩む決断をする。

 『ハンナ・アーレント』の撮影監督も務めたカロリーヌ・シャンプティエの監督による伝記映画。撮影監督と総監督は、やっぱし次元の違う仕事なのかも、と思い知らされた作品。

 
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 最初に結論から。正直、つまんなかったです。

 なぜか。理由は簡単です。主人公であるベルト・モリゾの魅力が全く描けていないからです。セリフがやや少なめってのもあるかも知れませんが、それにしたって、あまりにも、あまりにも、、、です。

 マネの「オランピア」をベルトがエドマと2人で見に行くシーンから始まりますが、この印象的な冒頭のシーンが何の意味も持っていない、伏線になっていないのですよね~。その後、ルーブルで姉妹が模写しているときにマネに会い、「オランピアを見ました」みたいな会話は出てきますが、それだけ・・・。うーん、、、。

 その後も、マネとのシーンは結構ありますが、何というのか、2人とも何考えてんだかよく分かんない、のですよ、見ていても。マネもベルトも、互いに惹かれているっぽい、というかマネはベルトに惹かれているのが分かりますが、ベルトは基本的に無表情というか、感情を表さないので、なんか味気ないんですよねぇ、全般に。

 演じたのはマリーヌ・デルテリムというフランス人俳優ですが、モリゾ姉妹とマネの3人の中で一番老けて見えるんですよ、設定上は一番若いはずなのに。で、後で見てみたら、実年齢で3人を演じた中で彼女が一番年上なんですね。しかも姉エドマを演じたアリス・バトードより13歳も・・・! そりゃ老けて見えるはずだわ。マネを演じたマリック・ジディよりも5歳上です。別に実年齢が設定に合っていないことをとやかく言うつもりはないけれど、明らかに違和感のある配役は、やはり作品そのものの雰囲気を壊す可能性があるわけで、そこは制作者としては拘るべきところじゃないのかしらん、と強く思うわけです。

 ベルトの魅力が感じられないのは、この女優さんのルックスだけではもちろんなく、そもそも演出の失敗なんじゃないかと。作品中で、ベルトが笑顔を見せるシーンがほとんどないのです。逆に、怒りを見せるシーンはありますが、表情は変わらず・・・。マネがモデルを務めるベルトに迫るシーンでも同じ表情。これは、マズイでしょう。正直、もう、あんまりセリフも頭に残りませんでしたものね。

 最初から最後まで、平板そのもの。ベルトの描写も、ストーリーも、山ナシ谷ナシ、当然、盛り上がりナシ、ドキドキもナシ、自分が不感症になったのかと思うくらい、何にも感じない作品なのです。

 強いて、印象に残る人物を挙げるとすれば、むしろ姉のエドマですね。彼女は、喜怒哀楽を表しますし、悩み苦しむ姿も見せます。マネと出会って、ベルトより彼女の方がよほど表情豊かにマネに対し絵描きとしても男性としても惹かれているのが分かります。かと言って決してエキセントリックな女性ではなく、十分抑制的です。

 ただ、表情豊か=人物造形が深い、訳ではないはず。無表情でも狂った女を演じられるイザベル・ユペールという女優もいるわけで。やはり、演出もイマイチなら、女優の力もイマイチだった、という相乗効果がこの平板さを生み出してしまったんでしょう。

 いっそのこと、マネと抜き差しならない関係にしてしまって、冒頭の「オランピア」のようなセンセーショナルな絵をベルトを脱がせて描こうとした、とか、安易かも知れないけれど、せめてストーリーだけでも山場を作ってくれていたら、まだ印象に残ったかも知れません。

 映像監督で実績を残してきた人なので、何となく目指したかった方向性は分からなくはないけれど、やはり監督ですからね、映像的な追求に終始して、ほかが疎かになられては困るわけで。とにかく、映画としては非常に残念な作品です。

 まあ、私は、本作自体も見たかったのはありますが、上映していたエビス・ガーデンシネマに行きたかった、ってのも本作を見たもう1つの理由です。エビス・ガーデンシネマは4年前閉館となり、それを知った時は、かなりのショックでした。『瞳の奥の秘密』を見に行ったのが最後となってしまい、本当に寂しく思っていたところ、今年の3月、見事に復活してくれまして。嬉しいですね、こうやって、良い劇場が戻ってきてくれたのは。内部もキレイになっていて、良いひとときを過ごせる空間になっていました。これからも期待できそう。

 ・・・というわけで、見た映画はイマイチだったけど、見た劇場はステキだった、というお話でした。







・・・で、モリゾってどんな画家だったのさ、と聞きたい。




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