映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ハウスメイド(2010年)

2015-07-11 | 【は】



 いわゆる下層階級の女性ウニ(チョン・ドヨン)は、ある豪邸に住み込みのメイドとして雇われる。夫婦と一人娘、そして先輩メイドがその豪邸には暮らしていた。ウニは、臨月の妻や娘の世話も甲斐甲斐しく行って、特に娘には懐かれる。

 ある日、豪邸の主人フンはウニの寝室に来て、臨月の妻の目を盗んで関係を持つ。間もなくその関係は、先輩メイドに知れることとなり、、、。

 1960年の韓国映画『下女』のリメイクとのこと。『下女』見てみたいなぁ。

 
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 カンヌで主演女優賞に輝いたチョン・ドヨン主演ということもあってか、公開時にいろんな媒体で取り上げられていて、そこそこ興味をそそられたので劇場まで見に行こうかどうしようか……、と思っているうちに公開終了。DVD化されてから結構経つけれど、ようやっと鑑賞に漕ぎ着けました。

 まあ、劇場まで行かなくて、これは正解だったかな。

 少し前に、ナッツ・リターン事件がありましたねぇ。韓国の極々一部の超富裕層に属するタカビーお嬢が起こした事件、ということで、庶民の吊るし上げを喰らっていました。格好のワイドショーネタだわね、、、。今、かの国では“財閥3世”が社会問題にまでなっているとか。庶民を睥睨している財閥3世はナッツ姫だけじゃない、そんな風に非常識な大人になったのは、金にあかせて周囲を小ばかにして育てたor育ってきたからだ、という論法のようです。

 ……まぁ、そういうこともあるでしょうし、そういうことじゃないこともあるでしょう。いずれにしても、格差がもたらす怨嗟の火は、普段は燻っているから見えにくいけど、一旦油が注がれると爆炎するってことですね。怖いけど、自業自得って側面もあります。革命の根本ですもんねぇ、貧富の差って。

 というわけで、チョン・ドヨン演じるウニは、メイドとして雇われるんだけど、メイドのことを、家人は「おばさん」って呼ぶんですよね。ウニの先輩メイドであるビョンシクは「大きいおばさん」。もうちょっと違う呼び方ないのかね。この呼び方に、何かこう、全てが表れているというか、、、。

 豪邸の主人フン(イ・ジョンジェ)は、臨月の妻ヘラ(ソウ)の目を盗んでウニの寝室に上半身裸で侵入してくるんだけど、その裸体のマッチョぶりがもう、笑っちゃうよ、、、ってくらい鍛え上げたカラダです。で、それをスクリーンの前にいる観衆に「どーだ、見ろ、オレ様のムキムキのこの体!!」とばかりに両手を広げて見栄を切るわけです。その股間にはウニの頭が、、、。

 まあ、こうなったら後はなるようになるしかないですよねぇ。==以下、ネタバレバレです==

 結局、ウニは妊娠させられ、メイドをお払い箱になり、殺されそうな仕打ちを受け、最終的には、豪邸の家人勢揃いの前で何と首吊り&焼身自殺、という、衝撃的な最期を選びます。かなり唐突な感じのする幕切れです。

 この選択は、フンとヘラへの復讐とウニ自身が言っています。そして、これが果たして復讐になり得ているのか。それがラストシーンに暗示されている、ということでしょう。フンとヘラは、寒空の下、何故か野外で一人娘ナミのお誕生会をしている。高価そうなワインを注いだグラスを手にしたフンとヘラがナミと記念写真を撮るシーン。まるでウニのあの自殺ショーなんかなかったみたい。

 そう、ウニは無駄死にでした。、、、と書きたいところだが、ちょっと違うかもという気が。このお誕生会でのナミの顔、いや、目線がヤバいのです。ナミはウニに懐いていました。ウニもナミをとても可愛がっていたので、2人の間には特別な感情の行き来があったと思われます。そのウニの衝撃的な死を目の当たりにしたナミは、好きな人を亡くすという原体験をわずか6歳にして味わうことに。それがあの顔と目線でしょう。このナミがどんな大人に育つのか。到底、両親に対し素直に従順に育つとは思えません。とてもとても大きな険しい障壁が待ち構えている、そう、あのナミの表情は言っているように思えます。

 ウニは、それを狙って、あの自殺ショーを選んだのではないでしょうか。フンとヘラよりも、ナミにこそ見せたかったのでは、自分の死に様を。あの陰惨な死をもって、「こんな不条理があって良いのか!?」とナミの人生への問いかけとしたのです。そうでなければ、あんな死に方をした意味が分かりません。

 分からないといえば、本作の冒頭シーンも分かりません。ある女性が投身自殺を図るんですが、これが結構引っ張って長いシーンの割に、その後の展開に何ら絡んでこないのです。これをどう解釈したらよいのでしょうか。、、、分かりません、やっぱり。

 まあでも、正直、分からなくても良いです。そこまで惹かれる作品でもないので。

 大体、ウニという女性は、超受け身な人で、ふにゃふにゃしていて、イマイチ魅力に欠けます。つまり格差社会における下層の人間は、主体的には生きられない、ってことなんでしょうか。

 しかし、下層の人間が弱者、というより、本作で見る限り、女性は皆弱者になりますね。性に支配され、男の情欲の対象でしかない、そんな描かれ方です。これが果たして韓国の実態なのかどうか。日本以上に女性に対する風当たりは強そうではありますが、ここまでヒドイんでしょうか。ヘラも、金持ちの奥様ではあるけれども、夫に飽きられ捨てられたら終わり、という非常に危うい妻の座です。うー、どっちも、嫌すぎる。

 ハウスメイドって、まあ、家事全般を一手に引き受ける存在ですよね。ウニは、ついでにご主人様の性のお相手もしてしまったわけですが、これって、専業主婦と同じじゃないでしょうか、やっていることは。家事全般&夫の性のお相手。家事に対して対価があるだけ、メイドの方が専業主婦よりまだマシかも知れません。専業主婦は、妻として夫の愛という、お金じゃ買えないモノを得ているのだ、というのはまやかしです。さらに言えば、ウニの場合、子育ても担っていたわけで、じゃあ、ヘラの存在って一体何? ってことに・・・。正妻、というシンボリックな存在、ってことですか。

 専業主婦を貶めたいのではありません。かくいう私も、かつて、ほんの短期間ですが専業主婦をしていたことがありましたので。そして、専業主婦が、別に存在として良いとも悪いとも思っていません。どう生きようが個人の意思次第ですから。あくまで客観的に見て、という話です。

 とにかく、女というのは本当に因果な性です。こういう問題に直面すると、男と女で妊娠する確率が半々だったら世の中どんなに違ったものになっているだろう、といつも思います。どっちが妊娠するか分からなければ、性犯罪も減るでしょう、女だけが出産・育児で悩むことも減るでしょう。そして、本作みたいな映画は作られなくなるでしょう。

 そんなことには絶対にならないと、頭では分かっていますが、時々妄想して、複雑な感情に襲われます。

 話が逸れましたが。まあ、見ている間はそれなりに面白く見ることが出来ますが、それだけかな。消費されるだけの映画、という気がします。エロシーンを期待しても肩すかし喰わされますのでご用心。 






ご主人様が裸で仁王立ちになっている画が一番印象的。




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コメント (2)
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