映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

悪い種子(1957年)

2020-11-15 | 【わ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv10051/

 

 イケメンの夫に8歳の可愛い娘ローダに恵まれ、クリスティーンは幸せな毎日を送っていた、、、はずだった。ローダに違和感を抱いたことをきっかけに、自身の出生の秘密を知るまでは。

 ローダは、自分の呪われた遺伝子を受け継ぎ、その怖ろしい性質は治るものではないと悟ったクリスティーンは、、、。

 これぞ、元祖モンチャイ(モンスター・チャイルド)映画。
  

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 モンチャイ映画は、不条理すぎて見ていてキツいのですが、本作を敢えて見たのには理由がありまして、、、。私の大好きな少女マンガ「聖ロザリンド」は、わたなべまさこ氏が本作にインスパイアされて描いたそうなんですよね。

 なので、おおまかな内容は想定内だったんですが、終盤の展開はかなり意外でした。ま、総じて、ロザリンドの方が数倍面白いし、好きですけどね。


◆アットホームなモンチャイ映画

 ローダちゃんは、可愛い顔をして、やることはえげつない。彼女の行動原理は至ってシンプルだ。「欲しいものは必ず手に入れる」

 だから、手段は選ばない。欲しいものを持っている人に「それちょーだい」と、一応頼むけれども、大抵の場合はそんなに簡単にくれるわけはない。そうすると、「持ち主がいなくなればいい」となるわけだ。

 あるいは、「それちょーだい」と言って、相手が「自分が死んだらあげる」等と言えば、「じゃあ、死んでもらおう」になる。

 しかし、ローダちゃんは、他人を亡き者にすることが、一応社会的には“悪いこと”だという認識はある。だから、自分の行いを暴かれそうになると、取り繕ってウソを並べたり、証拠隠滅を図ったりする。

 とはいえ、所詮は子どものやること。どうしたってお粗末なのである。

 ……というわけで、こういう類いのお話は、今ではたくさん映画になっているが、本作が制作されたのは1957年。当時にしてみれば、割と衝撃的な話だったのではないか。本作はもともと戯曲であり、舞台がヒットしたため、同じ配役で映像化したということだ。

 バックのセットはいかにもアットホームな雰囲気で、グロいシーンなど一切なく、それでも“怖い”映画は撮れるということを見せてくれた、モンチャイものの嚆矢といってよい映画だろう。

 監督はマーヴィン・ルロイで、エンディングの後に、出演者の紹介シーンが付け足しのようにあって、ビックリ。これは、内容の衝撃を緩和するためのものだったのかしらん?? いずれにしても、余韻という意味では台無しである。


◆ローダ VS ロザリンド

 で、なぜ、ロザリンドの方が面白いか。答えは簡単で、ローダちゃんとロザリンドのキャラ設定の違いにある。

 ローダちゃんは、前述の通り、他人を亡き者にすることが“悪いこと”だと分かっている。

 しかし、ロザリンドは、そもそも“悪いこと”だと分かっていない。ロザリンドにとって悪いことは、“ウソをつくこと”あるいは“大好きな人を悲しませること”なんである。だから、ロザリンド自身もウソはつかないし、ウソをつく人を許しもしない。人を殺しておいて「あなたがやったの?」と聞かれれば「ええそうよ!」と笑顔で答えるのがロザリンドなんである。

 ちなみに、ロザリンドはこんな子です。

 

(画像お借りしました)

 

 共通点は、「欲しいものは何としてでも手に入れたい!」というところ。しかし、ロザリンドには悪意はまるでないのがホラーなんだよねぇ。そういう意味では、ローダちゃんの方が、見ていて憎ったらしい。対してロザリンドには、憎らしさは全く感じない代わりに、怖ろしさ倍増なんである。ロザリンドは、作中何十人も殺しているが、無邪気な欲求か、善意から行動している。悪いことをしたという意識はゼンゼンない。

 まぁ、本作は見ていてもローダちゃんにイラッとすることの連続で、怖いという感覚はないんだよね。断然、ロザリンドの方が怖いです。

 本作の終盤の展開はかなりヘンで、クリスティーンが実父だと思っていた人が、実は養父だった、、、ということから始まり、彼女の母親がサイコパスで、クリスティーン自身は違ったけれど、ローダちゃんにサイコパスが隔世遺伝してしまった、ということが判明する。その事実に絶望したクリスティーンは、ローダと心中することを決意し、ローダには致死量の薬を飲ませ、自分はピストル自殺を図る。

 ……で、これはロザリンドにも似たような描写があり、ロザリンドでは、母親は死んでしまっている。しかし、本作では、ローダちゃんはもちろんだが、クリスティーンも助かるのだ。ピストル自殺を図って助かるって、、、かなり希有な例ではないだろうか。

 父親は??というと、ローダちゃんのお父さんは軍人で単身赴任。なので、家にはクリスティーンとローダちゃんの2人。ただ、大家さんのおせっかいオバハンがしょっちゅう出入りしている。ロザリンドのお父さんはイギリスで博物館の館長を務めていて、母親がロザリンドと心中を図ったときは、確か母娘だけでギリシャにいた。執事が一緒にいたんだけど、不幸な亡くなり方をする(ロザリンドに殺されたんじゃありません)。

 つまり、どちらも母と娘の2人の関係が軸となっている。ただ、ラストもロザリンドの方が哀しく、父親が大きな役割を果たしていて、本作よりも味わい深いし、読者も切ないながらも納得の終わり方だと思う。しかし、本作の場合、ローダちゃんはピンピンしていて、何も知らない父親と、自殺未遂に終わった母親がどうやってローダちゃんみたいなサイコ娘と向き合っていくのか、、、という絶望的な将来を暗示させたかと思うと、唐突にローダちゃんだけに天罰が下るかのようなラストシーン。……で、何となくいや~な感じだけが残る。

 それをそのまま残さないための、あのヘンテコな登場人物紹介シーンなんだろうけれども、、、。時代のせいなのかしらね。ちなみに、元の戯曲のラストとは違うらしいです。


  

 

 

 


オリジナル(本作)より、後発の「聖ロザリンド」に軍配!

 

 

 

 


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コメント (4)
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