作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv10032/
大手製薬会社の娘レオナ(バーバラ・スタンウィック)は心臓を患い寝たきりである。同社のNY支店長である夫のヘンリー(バート・ランカスター)が帰宅時間になっても帰らないため電話で夫の所在を確認していたところ、電話が混線し「今夜、11時15分にあの女をやっちまえ」という内容の会話が聞こえる。レオナは警察に知らせるが、警察は取り合おうとしない。
その後も夫となかなか連絡が取れず、夫の秘書の話から、夫が夕方ロード夫人と名乗る女性と出かけたことを聞き、ロード夫人とはその昔、夫ヘンリーの恋人だったサリーであったことを思い出し、サリーからヘンリーを奪ったレオナは、夫に対する疑念を抱く。
電話だけがレオナが外界とつながる唯一の手段だが、夫とはなかなか連絡がつかず、夫に対する疑念が深まる情報だけが電話を通じて入ってくる。そのうち、レオナは混線して聞いた殺人計画の話が頭をよぎるようになる。
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先日、衝撃的なニュースが、、、。岩波ホール閉館。……ガーン。これはかなりショックでした。確かに、このブログでもしょっちゅう岩波ホールに人が入っていないことは書いて来ました。半面、あの劇場だけは何があっても採算度外視で運営し続けてくれるに違いない、、、という、勝手な思い込みがありました。このニュースを聞いたとき、やはりそんなはずはないよな、と当たり前の現実を改めて思い知りました。
昨年改修したばかりで、正直なところ、まさか……、という感じです。コロナの煽りをもろに喰らったということのようですが、文化芸術を軽んじる国に未来はないと思います。これから貴重で希少な映画は、どこで見られるのでしょうか。とにかく、今月末からのジョージア映画祭と、その次の『金の糸』は必ず見に行きたいと思います。
本作は、ネットを見ていたら感想を書いている方がいて、面白そうだったので借りてみました。
◆レオナという女性、、、
電話交換手がいる時代の、電話を使ったサスペンス。今なら、携帯で一発!というところが、なかなかまどろっこしく、そこがまたミソでもあります。レオナが電話でやりとりする中で回想シーンが挟まれ、ストーリーが展開していく。
この手法も、最初は面白く見ていられるが、ワンパターンでだんだん飽きてくるのがちょっとね、、、。とはいえ、時系列が行ったり来たりする割には分かりにくさはなく、よくできたシナリオだと思います。
レオナがベッドからほとんど動けない(一応、歩けるけど、モノにつかまりながら、、、という感じ)ってのもポイント。豪邸に住んでいて、その晩は召使も全員不在、夫もおらず、レオナ一人きり。ヒッチみたいな設定じゃない?
しかし、このレオナの病気、実は心臓には何の異常もない、心因性の発作なのだ! これは、レオナの主治医がそう語っている。まあ、ヒステリーの一種でしょうな。確かにめっちゃわざとらしい発作で、でもレオナ本人は本当に胸が苦しいらしいのよね。
このレオナという女性の人物像が、どこを切っても好きになれる要素がなくて、見ていて困りました。その昔、ヘンリーを、当時の恋人サリーから奪ったときの奪い方も、実に図々しく、タカビーそのもの。そんな女に簡単になびく男と結婚するという、絶望的なまでの男を見る目のなさ。結婚後もパパの威を借り、夫をコケにしまくる浅はかさ。ううむ、、、何でここまでヒロインのキャラが最悪なのか。
終盤、自分が殺される対象だと気づいてから、ヘンリーに「何で素直に話してくれなかったの? あなたの力になりたかったのに! 愛してるのよ!!」とか涙ながらに訴えるシーンは、ちょっと見る者の同情を誘いはするものの、それまでがそれまでなので、何となく“自業自得”という言葉が浮かんでしまう。
夫ヘンリーは、パパの会社から薬を横流しして売上金を横領していたのだけど、それが悪い奴らに利用されていたってんで、ややこしい事件に巻き込まれることになった、、、という終盤のタネ明かしは、正直なところ、あんまし面白くないしね。あの夫ならさもありなんで、意外性がない。
けれども、ラストは本当にヤバい事態になって、見ていても一応ハラハラさせられるので、サスペンスとしては成立していると言えましょう。
◆その他もろもろ
ヒッチみたいな設定と書いたけど、監督は、アナトール・リトヴァク。この方、ロシア人なのね、、、。『うたかたの戀』(1936)もリトヴァク監督作だった。
ヒステリーのお嬢レオナを演じたのはバーバラ・スタンウィック。出演作を見るのは、多分本作が初めてではないかな、、、。いかにも、昔のハリウッド女優、という感じの美人なんだけど、中盤以降、だんだん追い詰められてくると、髪振り乱し、メイクも落ち、、、とかなり体当たり演技でございました。タカビー全開の超イヤな女が結構ハマっていたと思う。
驚いたのは、アホ夫、ヘンリーを演じていた若きバート・ランカスター。私の知っているバート・ランカスターと、顔も雰囲気もゼンゼン違う!! ヴィスコンティの『山猫』とか『家族の肖像』とかの、あの知的なキャラとは対極にあるような、肉体派っぽいギラついた感じが、最後まで私の中でバート・ランカスターと認識できないままでした。
まあ、、、確かに顔はよく見ればそうかなぁ、、、と思う(アタリマエか)けどね。映画友が言うには、『泳ぐ人』の彼が非常に良いらしいので、近々見てみようと思います。
この邦題がネタバレだという指摘が結構あるけど、ネタバレではないような。原題の“Sorry, Wrong Number”の方が確かに謎めいてはいるけれど、、、。似たような邦題で『私は死にたくない』ってのがあるけど、これもかなり救いのない話で見ていて辛かった、、、。こちらの原題は“I Want to Live!”。何で「死にたくない」にしたんだろ、、、。余談でした。
“Sorry, Wrong Number”のセリフはラストシーンに出てきます。