映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

新聞記者(2019年)

2019-07-17 | 【し】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv66869/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 日本人の父と韓国人の母の間に生まれ、アメリカで育った吉岡(シム・ウンギョン)は、ある思いを秘めて東都新聞の社会部記者として働いている。

 そんなある日、彼女のもとに大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。その真相を究明するため、早速、吉岡は調査を開始。

 一方、内閣情報調査室官僚・杉原(松坂桃李)は、「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、現政権に不都合なニュースをコントロールする現在の任務に葛藤していた。愛する妻(本田翼)の出産が迫るなか、杉原は尊敬する昔の上司・神崎(高橋和也)と久々に再会するが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう……。

 真実に迫ろうともがく女性記者と、“闇”の存在に気付き、選択を迫られる若手エリート官僚。そんなふたりの人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる……。

=====ここまで。

 このご時世で、この内容。そら制作会社が“干される”からって腰が引けるのも無理からぬ。2社だけだったことの方がむしろスゴイ。

 

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  東京新聞記者である望月衣塑子氏の原案。望月衣塑子氏といえば、毎日、官邸の記者会見で菅さんにどれほど邪険にされようが質問して食い下がっている方として、ネットではよくお見かけする。個人的に、彼女について思うところはあるが、しかし、決してめげずに引かないその姿勢は、何であれ尊敬する。ちなみに原案の書籍は未読。

 

◆恥知らずはどちら??

 どう見たって、アベ政権下で起きたあれこれがモチーフになっている“不祥事”“スキャンダル”がいくつもエピソードとして描かれている。その基となった出来事がリアルに思い出されて、正直言ってスクリーンを見ているのが気恥ずかしくなるくらい。よくまあ、これだけ序盤にエピソードを詰め込んだものだ。ここまでやれば、天晴れである。

 とにかく“ナイチョウ”と呼ばれる内閣情報調査室のやることのおぞましさといったら半端じゃない。徹底的に“ソーリ”の危険因子を叩き潰す。

 もし、現実世界で、もみ消しやら偽造やらを目の当たりにしていなければ、「いくら何でもここまでやらないでしょ」と思ったと思うが、現実が現実だから、こんくらいはやっとるね、確実に、、、、としか思えなかった。というか、実際はもっとグロテスクだろうと思った。

 思えば、アベより前の総理たちは、本音を言えばもっとエグいことをやりたかったけれども、さすがに国民の目のある中でそこまで露骨なことをやるのは憚られる、、、という、最低限のプライドがあり、また一種の“恥を知る”文化が辛うじて生きていたと思う。しかし、プライドのないアベはやっちまうのだ。2度目に総理に返り咲いてまだ日が浅い頃、NHKに百田某とか長谷川三千子とかを送り込んだときには、正直なところ、よくもまぁ恥知らずな、、、と開いた口が塞がらなかった。そんなザマでよく人に「恥を知れ」などと言えたもんである。

 ……てな気の狂ったリアルをウンザリするほど見せつけられている側からすれば、こんなナイチョウの描写は、むしろ上っ面なんじゃないのか、とさえ思えてくる。

 とはいえ、もちろん本作は十分頑張っていると思う。欲を言えば、後半、大学新設が実は軍事目的だった、、、っていう設定が、ちょっとドラマチックすぎるかなってこと。現実はもっと卑小でセコい話だったわけで、それが総理の人間性そのまんまなわけだから、本作でも、そんな壮大な裏目的なんぞ設定しないで、思いっきりみみっちくてセコい話に集約させた方が、ブラックになったんじゃないかと感じた次第。

 

◆またかよ、虎馬。

 ただねぇ、、、まぁ、この辺が今の邦画の限界かな、と感じたのだけれど、女性記者・吉岡がリスクを冒して真相究明に乗り出す動機が、“同業者だった父の無念の死”ってのがね……。個人的にウェットで嫌だなと。

 例えば、オスカーをゲットした『スポットライト 世紀のスクープ』にしても、昨年公開された『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』にしても、スクープを追うのは単純に記者としての使命が原動力になっていた。ジャーナリストとしての在り方、それが全てだったわけで、そうであった欲しかった、本作も。

 日本では刑事モノとかにも“トラウマ”を持った主人公っていう設定はよくあるが、安っぽいからもういい加減やめたら? と思う。そういう情緒に訴えないとドラマにならないと思い込んでるんじゃないのか? と疑いたくなる。

 それは、松坂桃李演じる官僚・杉原が不正を白日の下にさらす決断を下す動機にも言えることで、杉原は、生まれたばかりの我が子を抱いて涙を見せ、その後に、吉岡に対して協力を申し出るという展開になっている。しかも、「いざとなったら、私の実名を出してください」などと言っている。第一子が生まれたばかりの若い官僚に、そこまでの決断が、果たして本当に下せるか?

 私の知り合いにも官僚さんが何人かいるが、彼らはもっと老獪というか、ドライだと感じる。自らを危険にさらすことは、よほどのことでもない限りしない人種じゃないかなぁ。その代わり、もう少し屈折した手段で自らの正義感を納得させるように動くような気がする(飽くまで、これは私の個人的な印象)。

 実際、映画のストーリーとしても、そういう展開にした方がよりスリリングだったのではないか。実名を出す覚悟をしちゃったら、ぶっちゃけ、後は怖いモンなしに近い。吉岡にリークしたのが杉原だと、バレバレってのもどうなのか、、、。

 あと、これもイヤだなぁ、と思ったのが、杉原の妻の人物造形。完全に夫を支える“だけ”の物わかりよし子で、古風すぎる。こういう人もいるだろうけど、映画で今ドキこれかい、、、?って感じで、大いに鼻白んだ。

 まぁ、2時間弱の尺で描けることは限られるので致し方ない部分もあるとは思うが、浪花節な動機付けだけは、どうにも嫌悪感を拭えなかった。

  

◆その他もろもろ

 「この国の民主主義は形だけで良いんだ」……とは、杉原の上司のセリフだけど、この国は今、形だけでも民主主義を保っているってこと?

 まあしかし、国のトップがセコくてバカだという現実は、国民がそれを許容しているからこそなのであり、その国の政治は民度が反映されているのだ、哀しいことに。権力の座が目的化している人たちに、理想論や正論を投げつけたところで、響くはずはないし、響くどころか届きもしないだろう。

 こういう映画が出て来たことは、そんな状況にあって一筋の光明である。一億総白痴化計画でも進行しているかのごときラインナップの邦画界にあって、こういうエンタメ要素を維持しながら観客に何らか刺激を与える作品は歓迎したい。

 そして、このご時世で、そんな作品に出演した松坂桃李くんは偉い!! 演技もなかなか素晴らしかった。朝ドラでヒロインの相手役していた頃は、線の細いアイドル役者かと思っていたがどーしてどーして。なかなかホネのある、考えて行動している賢い役者さんではないか。こういう、カッコイイ上に、物議を醸しそうな作品にも果敢に挑戦する俳優ってのは、応援したくなる。

 あと、『太陽の蓋』にも出ていた北村有起哉は、本作でもイイ味出していた。杉原の上司を演じていた田中哲司、自殺した外務官僚の妻を演じた西田尚美などなど、芸達者な人々が脇を固めている。

 いろいろ文句を書いてきたけど、それは、本作への賞賛が前提でのこと。その志の高さに、プラス1個献上いたします。

 

 

 

 

もう形も壊れているのでは、この国の民主主義。

 

 

 

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