雪の降るある日、刑務所で生まれた鹿島雪は、生まれながらにして仇討ちを科されていた。
雪の実母・鹿島小夜(赤座美代子)は、雪を身ごもるずっと以前に、小学校の教員であった夫と長男の3人で、とある貧しい農村に赴任してきた。しかし、白いスーツを着ていた夫は徴兵に来た官憲と間違われ、正景徳市(地井武男)、竹村伴蔵(仲谷昇)、北浜おこの(中原早苗)、塚本儀四郎(岡田英次)の一味に惨殺される。長男も殺され、小夜自身は彼らに嬲りものにされる。
自分に惚れた徳市とともに、小夜は東京に出てきて小料理屋を始め、機を見計らって徳市を刺し殺す。そして、刑務所に送られ、そこで見境なく男と寝て身ごもったのが雪であった。雪を産み落とすと小夜は、雪に残り3人の復讐を託して息を引き取る。
美しく成長した雪(梶芽衣子)は、己の宿命を呑み込み、淡々と復讐劇を展開させていく。が、4人のリーダー格であった塚本は、既に死んでいることが分かり、、、。
人々に語り継がれる作品なだけあって、なかなか楽しめる。原作は漫画だとか。
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白雪姫に、小さい“ゅ”が入っただけで、まるで別のヒロインの造形になる。なんともはや、、、。
◆血まみれなのにグロさゼロ。
雪が深々と降る夜道を、蛇の目を手にした美女が一人、、、。ふと足を止め、視線の先には、見るからに悪そうな男たち数名と人力車に乗った親分。その前に立ちはだかる美女。
「女、どけ!」等々、お約束のセリフの後に、美女が蛇の目の柄から刀を抜き取り、男たちをバッサバサ、、、。血飛沫が舞い、白い雪に舞い散る鮮血。人力車から降りてきた親分も、これまたバッサリ。そして血飛沫、、、、。
という感じで、もう血飛沫がこれでもか、ってなくらいに飛びまくる。基本的に、私はスプラッター系がダメなんだけれど、本作の血飛沫は、明らかに“仕込み”と分かるし、血の色も朱色で塗料であることが明らか。だから、派手な演出の割には全然グロさはなく、目を背けるシーンは1つもなかった。
ちょっとびっくりだったのは、途中、北浜おこのが首吊っているところを雪が見つけて、そのおこのの身体をバッサリ2つに切ってしまった瞬間。もちろん、そこでも血がバーッと滝のように畳に滴るんだけれども、これもまた一興。上半身だけになったおこのがぶらぶら揺れている画は、なんともシュール。
終盤の鹿鳴館でのシーンは、ちょっと、乱歩の小説(怪人二十面相)の一部を思わせる風情がある。雪がシャンデリアにつかまり、バルコニーから向かいのバルコニーに飛び移るシーンなど、二十面相が現れて消える描写みたい。
リアリティなど軽々と飛び越えて粋な芝居がかった演出も、こういうジャンルでは生きるし、面白い。
◆梶芽衣子、恐るべし。
本作は、何といっても、梶芽衣子である。若干26歳で、この色気、この迫力。素晴らしい。現在の20代後半の日本人女優で、匹敵する人を思い浮かべることができない。
梶さんのことだから、本作までに和服での所作はお手の物だったのだろうと思いきや、本作がほとんど所作は初めてで、なおかつ立ち回りもあり大変だったと、特典映像のインタビューで語っていたので驚きである。
梶芽衣子という名を最初に知ったのは、恐らくテレビドラマか何かで、既に40代の彼女だったのだろうと思われる。が、80年代の日本はまだまだ良い時代で、深夜に『女囚さそり 第41雑居房』を放映しており、私は偶然見てしまった。見始めたら釘付けになってしまい、気がついたら終わっていた、という感じ。その時の衝撃たるや、、、いまだに忘れがたい。印象的なシーンは、一度しか見たことがないのにたくさん脳裏にこびりついている。
“さそり”で、梶芽衣子の若い頃を知り、白石加代子という名も知り、悪役の渡辺文雄に衝撃を受けたのであった。そして、若い頃の梶さんの美しさ、加代子さんの迫力は昔からだったこと、渡辺文雄氏はそもそも悪役で名を挙げて来たことを知ったわけである。まだ10代後半の私には、恐ろしいほど衝撃的な映画だったことは間違いない。
ほぼ同時期の本作、やはり梶さんの魅力は絶大。
映画としては、ストーリーも陳腐だし、後半の展開も先が読めるしで、脚本的には今一つだけれども、とにかく役者が梶さん始め、幼い雪を“戦士”に育てる生臭坊主役の西村晃、仲谷昇、赤座美代子と個性派ぞろいな上、ラスボス岡田英次は期待に違わぬ大立ち回りを演じて見せ場を作るという、エンタメに徹した演出に、ただただ脱帽。こんな脚本をここまでの映画に仕立てるというのは、かなりの力技だと思う。
今、ここまで見応えのある邦画はあるのだろうか、、、。あまり、邦画を積極的に見ていないので分からないけれども、話題先行で、見てみたらガッカリというのがここのところ続いている気がするが。食わず嫌いしていないで、もう少し邦画も見てみようと思った次第。
キャストが何気に豪華です。
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