船にど素人
ネット拾い読みです
船のHOME!ドックのおはなし(乾ドックと浮ドックと引き上げ船台)
船を造ったり修理したりする際には、船をドック(Dock)にいれます。
ドックは古くからの日本語では「船渠せんきょ」とも言い、
そのため今でもドックに入ることを「入渠にゅうきょ」といいます。
ドックの歴史
ドックの歴史はとても古く、人類が船というものを作り出すころにはもうドックの存在がありました。
(『船はこうして生まれた』)つまり紀元前のエジプト・ナイル河にはもう存在していたのです。
そもそもなぜドックが必要なのでしょうか。
船はクレーンなどで持ち上げて陸にあげることはできません。
持ち上げたとたんに、自分の体重で折れてしまうからです。
(『船はやわらかく、変形しながら進む(ホギングとサギング)』)
そのため、海から陸へ、陸から海へ運ぶときには水に浮かべた状態で移動しなければなりません。
日本では昔から瀬戸内海の入り江に「じん」と呼ばれるドックのような場所がありました。
石を2列に並べておき、満潮時に船を運び込むと、干潮時には石の上に乗った状態になります。
この間に船底のフジツボや貝やごみなどの付着物を掃除していたのです。
いわゆる以下で説明する”引き上げ船台”にあたります。
ドックの種類
ドックには3種類あり、
それぞれ乾かんドック(Dry Dock)、
浮うきドック(Floating Dock)、
引き上げ船台といいます。
ドックには盤木ばんぎと呼ばれる木材が船底の形に沿って並べられ、
その上に船を配置して支えます。
乾ドック
土地が掘られたところがドックとなり、
海との境目はドックゲート(Dock Gate)と呼ばれる扉がついていて、海水をせき止めています。
ドックゲートは、中に注水して沈めるタイプもあれば、ゲートを横に倒す起倒式のタイプもあります。
ゲートが沈むと海水が入ってきて、船を引き入れることができます。
船が無事入ったら、ゲートを再び閉めて、ポンプで排水します。
大きいドックだと一晩かけて排水・注入することもあります。
かつては石を積み上げてつくられていましたが、現在ではコンクリートで作られています。
乾ドックは船を初めて海に浮かべる進水の際、水を徐々に入れるだけでよいため簡単で安全です。
浮ドック
浮ドックはそれ自体が船(バラストタンク)のようなもので、中に水をいれると沈み、
中の水を排水すると浮き上がるという仕組みです。
水を入れて沈めた状態で、船を引き入れます。船が無事入ったら、
浮ドック内の水を排水し、船を乗せた状態で浮き上がるというわけです。
日本では川崎重工業神戸造船所に大きな浮きドックがあります。
港の遊覧船から間近に見ることができますよ。
陸上に作業場所がなくなった造船所が目の前の海に設置していることが多いですね。
乾ドックより安く作れて、小さい船なら浮ドックの中で建造もできます。
乾ドックより安く作れて、小さい船なら浮ドックの中で建造もできます。
また、浮いているため持ち運びができるのもメリットの一つです。
港に係留できない船のところまで持っていったり、ドックが必要とされているところへ派遣することができます。
自走機能がついた浮きドックも存在します。
引き上げ船台
海に滑り降りる、迫力のある進水式を見たことがあるでしょうか?
あれができるのはこの船台で作られた船ということになります。(船台進水といいます)
海側が船尾、陸型が船首の向きで船が配置されることがほとんどです。
海に向かって傾斜のあるレールを海岸に敷き、台車の上に船を載せて引き上げる施設です。
*****+********************
船が進むのを妨げる3つの抵抗とその対策法
船は水の上を進んでいきますが、
スイスイ進んでいるようで実は大きな抵抗が3つもあるのです。
1.造波抵抗
船が速く進もうとすると波を立てますよね。その波が進む際の抵抗となるのです。
したがって、この抵抗は高速船や小型ボートなどに大きく見られます。
造波抵抗を減らす対策
バルバスバウをつける
なめらかでスリムな船型を設計する など
また、なるべくスリムで波を立てにくい形状に設計することが大切です。
バルバスバウと呼ばれる球体のような部分を船の先端の水面下につけてあげると、
船が造る波と球体が造る波が打ち消しあって、造波抵抗を減らすことができます。
(『バルバスバウ誕生の歴史から現在まで』)
2.摩擦抵抗
船が水に接している部分(水面下の部分)において、
進行方向と逆向きにかかる摩擦の力が抵抗となります。物理の世界では、物体と物体が接しているとき、
どちらかが動こうとするとそれを妨げようとする向きに力が働きます。
これが摩擦です。水の場合も同様なのですね。
1の抵抗が少ないタンカーなどの低速船だと、この摩擦抵抗が全抵抗のうち約80%も占めています
摩擦抵抗を減らす対策
摩擦を減らす塗料を塗る
マイクロバブルの装置を導入する など
船底に塗る塗料は実にさまざまな種類があり、
船底に塗る塗料は実にさまざまな種類があり、
なかにはマグロやイルカなどの成分を模擬したものもあります。
最先端の塗料を選べば摩擦抵抗をかなり減らすことができます。
また、マイクロバブルと呼ばれる小さな泡を船底にふき出させることで、
また、マイクロバブルと呼ばれる小さな泡を船底にふき出させることで、
船底が泡のカーペットに包まれた状態になり、水とのあいだの摩擦を減らすことができます。
3.粘性圧力抵抗(造渦抵抗)
船の先端から船に沿うように流れてくる水の層が、
船尾のほうにくるにつれて圧力に耐えられなくなり、”剥離(はくり)”、
つまり船体から剥がれてしまい渦になることで抵抗となります。
このほかにも、プロペラが造る渦や、船底の水が剥がれる際に造る渦など、
船尾の水の流れはとても複雑になっています。
これはまだ詳しく分かっておらず、3D立体モデルでCFD(Computational Fluid Dynamics)と
呼ばれる数値計算法を用いてコンピュータ解析したり、
模型実験で水の流れを可視化したりすることで、解明を進めています。
粘性圧力抵抗(造渦抵抗)を減らす対策
船体を流線形にする(船尾のスリム化)
二重反転プロペラをつける など
船がきれいな流線形をしていれば、
船のまわりに沿った水が剥がれることなく船尾まで流れ、
渦が少なくなります。海の住人・お魚をみればわかりますね。
また、二重反転プロペラをつけると、
また、二重反転プロペラをつけると、
1つのプロペラが造る渦をもう1つの逆向きのプロペラが打ち消してくれるため、
ムダな抵抗を減らすことができます。
以上