【タイワンフウとは】
・中国中南部及び台湾を原産とする落葉高木。漢字(楓)や葉の形からモミジの仲間であることを連想するが、マンサク科フウ属であり、モミジとの関連はない。江戸時代の享保年間(1716~36年)に日本へ渡来し、紅葉が美しいことから街路や公園に植栽される。
・葉は直径7~15センチほどで、浅く3~5つに裂け、それぞれの先端は尖る。葉の縁には細かなギザギザがあり、1センチほどの長い葉柄がある。葉は枝から互い違いに生じており、対になって生じるモミジ類とは異なる。中国ではフウの葉で蚕を飼い、これを楓蚕という。
・開花は3~4月頃。雌雄同株で花には雌雄があり、淡い黄緑色の小さな花がそれぞれが球形に集まって咲く。花の後にはプラタナスのような直径3センチほどの毬状の果実ができ、10~11月に熟す。中に含まれる楕円形の種子は甘味があり、朝鮮半島では食用にされた。果実はモミジバフウ(アメリカフウ)に似るが、熟した果実から種子が出た後の穴はより小さい。
・日本での最大樹高は20mほどだが、原産地では60mにも達するものがある。幼木の樹皮は灰褐色だが、老木の樹皮は赤みを帯びた灰黒色。樹脂には特有の香り(蘇合香)があり、中国では「楓香脂」として薬用する。
・中国名の「楓」の音読みで「フウ」と呼ばれることが多が、単にフウという場合、本種とアメリカフウ(モミジバフウ)の両方を指すため分かりにくい。また、日本での「楓」はカエデを示すが、中国では本種を表す。
【タイワンフウの育て方のポイント】
・日向の良い肥沃な土地を好み、潮風や強風に耐えて育つが、寒さにはやや弱く、植栽の適地は関東以南となる。
・成長が早く、雄大な樹形を楽しむ木であり、狭い庭には向かない。剪定は可能だが、剪定すると樹形が乱れやすい。
【タイワンフウとモミジバフウの見分け方】
葉の形がまったく異なる。モミジバフウはその名のとおりモミジのような形をしている。また、モミジバフウの実は本種よりも大きく、堅い突起がある。
【モミジバフウとは】
・北米中南部及び中米を原産地とする落葉高木。正式にはアメリカフウというが一般的にモミジバフウと呼ばれ、公園や街路に使われることが多い。原産地やヨーロッパでも街路樹として利用されることが多く、特にドイツでは有数の公園樹とされる。
・モミジの仲間のように見えるが、5~7つに裂ける葉がモミジに似るだけで、じつはマンサクの仲間。モミジのような葉を持つフウということでモミジバフウと名付けられた。ちなみにフウとはタイワンフウのことであり、こちらは葉が3つに裂ける。
・日本へ渡来したのは大正から昭和初期で、アメリカ庭園協会から寄贈された。渡来したのはタイワンフウより遅いが、これまでに植栽された数はタイワンフウを凌ぐ。
・葉は直径12~18センチで5~7つに裂け、手のひら状になる。葉や樹脂が持つ独特の臭気を嫌って、動物が葉を食べないため、動物園の景観樹として使われる。
・紅葉の美しさは庭木の中でも際立つ。紅葉が進むにつれ、緑→オレンジ→赤→紫などと葉色が変化していく。色の付き方には個体差があるため街路樹として列植すれば紅葉のグラデーションを楽しめる。紅葉の時期には数多くの人がこれを写真におさめることになるが、落葉が早い。
・開花は4月頃で雌雄それぞれの花が咲く。雌花の後にできる果実はタイワンフウよりも大きく、そして棘がある。クリスマスリースの材料になるほか、小型エビの隠れ家になるとして熱帯魚愛好家に販売されている。
・日本での最大樹高は25mほどだが、原産地では40mを超える高さになる。樹皮は淡い赤味を帯びた褐色。幹からは「ソゴウ香」と呼ばれる芳香性の液が抽出される。