アオキ(アオキバ) の種類・品種
葉が濃緑色のみのものを「アオキ」、黄色や白の斑が入るものを「アオキバ」と呼び分ける場合もあります。また、黄色の斑入りを「シロミノアオキ」、白を「フイリアオキ」と呼ぶことも。 葉が細く、つややかさの強調された「ホソバアオキ」、斑が星の形のように入る「星月夜」といった品種もあります。
1300年前から薬の原料に!
奈良県・吉野の名物である民間薬「陀羅尼助」(だらにすけ)。胃腸薬として、またとても苦いので修行僧たちの眠気覚ましとして、なんと1300年も昔から使われ続けてきた歴史があります。 主な成分はオウバク、キハダ、ニガキですが、アオキも色づけに用いられています。枯れたアオキの葉は真っ黒になるため、これをすりつぶして入れると、昔話に登場しそうな黒い丸薬ができあがるのです。
緑なのになぜアオキ?
「青々とした」という形容を用いていますが、実際のアオキは茎も葉も緑色です。なぜ「緑」を「青(アオ)」と表現するのでしょうか? 黄色がかった緑を「萌黄」、黒みを帯びた紅色を「蘇芳」などなど。日本語は色彩についての語彙がとても豊富です。しかし、はるか昔は赤、白、青、黒の4色しか区分がなかったそう。赤い、白い、青い、黒いと語尾を「い」で終えられるの対し、他の色では「緑い」「紫い」といった使い方ができないのが証拠だといわれています。 緑は青の一種だと認識されてきたので、信号の「進め」も「青」です。同様の理由で「ミドリキ」ではなく「アオキ」と名づけられたのだとか。
【アオキとは】
・北海道南部から沖縄まで日本各地に広く分布するアオキ科アオキ属の常緑低木。海岸近くの樹林に多いが、身近な雑木林の林内にも自生する。最も日陰に強い植物として知られ、家の北側など条件の悪い場所の植栽にも使われる。
・丈夫な性質を持ち、庭木としての使い勝手が良いため、現在では自然のものより、人間に管理されている数の方が多いほど。日本以外でも東南アジアの各地に見られるが、特に日本に多い。
若い枝が緑色(昔でいう「青」)であるためアオキと呼ばれるという説と、一年中、緑色の葉をつけているためアオキと呼ばれるという説がある。
古来、「アオキ」は本種に限らず常緑樹全般を意味し、地方によってはユズリハをアオキと呼ぶ。
・アオキの開花は3月から5月で、直径1センチ程度の花が円錐状に集まって枝先に咲く。アオキには雄花が咲く雄株と雌花が咲く雌株があるが、花弁は共に4枚で薄紫色。
・雄花の雌しべは退化していてほとんど見えず、雄しべは黄色い「葯」が目立つ。雌花は雄しべが退化し中央部にある緑色の花柱が目立つ。雄花の花序(花の集り)は雌花より大きく、多数の花が咲く。
・花の少ない初冬に実をつけるため、江戸の昔から盛んに栽培された。でき始めの実は緑色だが、1月頃から色付き始めて鮮やかな赤になり、翌年の花が咲く月まで枝に残ることもある。
・雌雄異株で雄木には実がならず、雄木は植木職人の間で「バカ」と呼ばれる。アオキは1783年、ツンベリーによって欧米に紹介され、艶やかな常緑の葉が人気を博したが、当初は雌株のみが移入されたため欧米では結実しなかったという。
・アオキの果実は直径2センチ程度と大きくて目立つ。ヒヨドリなどが好んで食べるため画像のようにたわわに実っているのは珍しい。赤い実がなるアオキが一般的だが、白や黄色の実がなる品種もある。
・葉は長楕円形で先端が尖り、半分から先の縁には粗いギザギザがある。長さ8~20センチ、幅2~10センチと大きく、別名の「オホキバ」は「大きい葉」に由来し、学名の「Aucuba」もこれに基づく。葉は枝から対になって生じる「対生」だが、枝の上部に集まる。
・アオキの葉を乾燥させるとたちまち黒くなるが、これには抗菌作用があり、葉を炙って人工的に黒変させたものを火傷、しもやけ、凍傷、イボや魚の目の患部に当てれば、症状を鎮める効果があるという。また煎じたアオキの葉は下剤になるという。
・枝は上部で分岐し、若い枝では緑色だが成長するにつれてコルク状の褐色となる。昔はアオキの枝を箸に使うこともあった。
・一年中濃緑の葉が魅力だが、原種は和風のイメージが強いため、洋風住宅にはイエローデライト、サルフレア(マルギナータ)、ダルマ、コロトニフロリアなどの、葉に模様が入る「斑入り」の園芸品種が好まれる。