(2)日本-オランダ-オーストリアの統計
7月25の「1960年代の日本」から前回の「2000年代のタイ」で、筆者の目に映った世界の変化を伝えた。
今回は、街角の外観から読み取れない変化、国別の経済情勢をいくつかの指標で眺めてみる。ここでは、日本と国情が大きく違うアメリカとタイを除外して、オーストリア、日本、オランダの一人当たりの名目GDP、GDPデフレーター、経済成長率、失業率を比較する。
【参考:このブログの2013-07-10に示した「2012年の一人当たりの名目GDPランキング」では、オーストリア=12位、日本=13位、オランダ=14位であり、これら3ヶ国は経済的には似かよった国である。】
経済指標を比較する前に、まず各国の広さと人口を紹介する。
1)国の広さと人口
日本、オーストリア、オランダの国土面積は、次のとおりである。
日本 377,955km2
オーストリア 83,871km2 北海道(83,456km2)とほぼ同じ
オランダ 37,354km2 北海道の半分弱、九州(42,194km2)より1割ほど小さい
また、各国の地勢上の特長は、日本とオーストリアは山国、オランダは山のない平らな国である。「世界森林白書2009年報告、表2 森林面積とその推移(pp.218-227、FAO, 2006a)」(国際農林業協働協会、翻訳出版)によれば、各国の森林面積が国土に占める割合は、日本=68.2%、オーストリア=46.7%、オランダ=10.8%である。ちなみに、可住地面積=国土面積-森林面積-湖沼面積で推定する。
次に、各国の人口は下のグラフに示すとおりである。
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出典:オリジナルデータ=世界経済のネタ帳
グラフ:上記のオリジナルデータを筆者が加工・グラフ化した。
オランダの人口は約1,600万人、東京23区の約900万人(2013年)の約2倍弱である。また、オーストリアは約800万人でオランダの半分である。オランダとオーストリアの人口と国土は小さいが、両国は高度な先進国である。いうまでもなく、国の豊かさは人口や国土の大きさとは別物である。日本の人口は減少期に入るが、悲観するには及ばない。
日本、オーストリア、オランダの地勢の特徴は先に説明したが、参考に各国の人口密度を示すと次のようになる。
日本 337.64人/km2
オーストリア 100.79人/km2
オランダ 400.22人/km2
【出典:世界経済のネタ帳】
一国を一言で表現することは難しいが、筆者の印象では、オランダ人は寛容だがルールを固く守る人々、オーストリア人は公平と社会の安定を重んじる人々と思っている。もちろん、オランダ人やオーストリア人に限らずドイツ人、イギリス人、フランス人、北欧人なども、伝統とルールを重んずる人々である。
たとえば、80年代だったか定かではないが、オランダでは車のナンバーの奇数偶数で運転日を隔日で決めていた。あの時のオランダ人は「今日は運転しない日だから、駐車場内でも車を動かさない」といっていたのでかなりの堅物だと思った。また、ウィーンの市電ではめったに検札に会わないが、もし不正が発覚すれば容赦なく高額の罰金を求められる。日常生活では温厚な紳士淑女もルール違反には厳しくなる。しかし、それは合理主義の一面であり、「見て見ぬ振り」の日本とは違った社会規範である。
ここで、各国の移民事情にも触れておく。「移住・移民の世界地図(The Atlas of Human Migration)」丸善出版、2011年によると、移民データは次のようになっている。
日本:移民=217万人、人口比=1.7% 移民数=217万人は名古屋市の人口に近い。
オーストリア:移民=131万人、人口比=15.6% 主にトルコ、東欧からの移民
オランダ:移民=175万人、人口比=10.5% トルコ、モロッコ、インドネシアなどからの移民
さらに「移住・移民の世界地図」にある各国の移民政策(2005年)は、次のとおりである。
日本:入移民水準=現状維持、高度技能移民=増加させる
オーストリア:入移民水準=現状維持、高度技能移民=現状維持
オランダ:入移民水準=低減させる、高度技能移民=増加させる
【入移民水準:入国する移民の数や受け入れ基準】
オーストリアは、2011年1月から移民政策を変更、高度技能移民の家族にドイツ語能力を求めるようになった。これは、現在、オーストリア人の99%以上がドイツ語を母語としているのでドイツ語による移民との意思の疎通を重視していることの表れである。また、ドイツ語による教育現場の負担を軽減させるためでもある。なお、オーストリアはハプスブルク帝国時代から多民族国家だったので、民族言語権や放送言語の問題もあった。
日本の移民人口比は1.7%で僅かであるが、その絶対数は217万人でかなり大きい。日本人の人口は減少するが、移民子孫の人口は増加する。減少と増加が相対効果を生み、移民系人口比が急速に増加する。このような相対効果を考慮しながら、日本が日本であるために関連法規の整備を早急に進めるべきである。この法整備をおろそかにすると、ヨーロッパ諸国のように政治・経済・教育・宗教などの社会基盤に格差・対立・犯罪を招くので十分に注意したい。この問題の議論は長くなるのでここでは割愛するが、次世代への責任として筆者の考えを必要に応じて示していく。
次回に続く。
7月25の「1960年代の日本」から前回の「2000年代のタイ」で、筆者の目に映った世界の変化を伝えた。
今回は、街角の外観から読み取れない変化、国別の経済情勢をいくつかの指標で眺めてみる。ここでは、日本と国情が大きく違うアメリカとタイを除外して、オーストリア、日本、オランダの一人当たりの名目GDP、GDPデフレーター、経済成長率、失業率を比較する。
【参考:このブログの2013-07-10に示した「2012年の一人当たりの名目GDPランキング」では、オーストリア=12位、日本=13位、オランダ=14位であり、これら3ヶ国は経済的には似かよった国である。】
経済指標を比較する前に、まず各国の広さと人口を紹介する。
1)国の広さと人口
日本、オーストリア、オランダの国土面積は、次のとおりである。
日本 377,955km2
オーストリア 83,871km2 北海道(83,456km2)とほぼ同じ
オランダ 37,354km2 北海道の半分弱、九州(42,194km2)より1割ほど小さい
また、各国の地勢上の特長は、日本とオーストリアは山国、オランダは山のない平らな国である。「世界森林白書2009年報告、表2 森林面積とその推移(pp.218-227、FAO, 2006a)」(国際農林業協働協会、翻訳出版)によれば、各国の森林面積が国土に占める割合は、日本=68.2%、オーストリア=46.7%、オランダ=10.8%である。ちなみに、可住地面積=国土面積-森林面積-湖沼面積で推定する。
次に、各国の人口は下のグラフに示すとおりである。

出典:オリジナルデータ=世界経済のネタ帳
グラフ:上記のオリジナルデータを筆者が加工・グラフ化した。
オランダの人口は約1,600万人、東京23区の約900万人(2013年)の約2倍弱である。また、オーストリアは約800万人でオランダの半分である。オランダとオーストリアの人口と国土は小さいが、両国は高度な先進国である。いうまでもなく、国の豊かさは人口や国土の大きさとは別物である。日本の人口は減少期に入るが、悲観するには及ばない。
日本、オーストリア、オランダの地勢の特徴は先に説明したが、参考に各国の人口密度を示すと次のようになる。
日本 337.64人/km2
オーストリア 100.79人/km2
オランダ 400.22人/km2
【出典:世界経済のネタ帳】
一国を一言で表現することは難しいが、筆者の印象では、オランダ人は寛容だがルールを固く守る人々、オーストリア人は公平と社会の安定を重んじる人々と思っている。もちろん、オランダ人やオーストリア人に限らずドイツ人、イギリス人、フランス人、北欧人なども、伝統とルールを重んずる人々である。
たとえば、80年代だったか定かではないが、オランダでは車のナンバーの奇数偶数で運転日を隔日で決めていた。あの時のオランダ人は「今日は運転しない日だから、駐車場内でも車を動かさない」といっていたのでかなりの堅物だと思った。また、ウィーンの市電ではめったに検札に会わないが、もし不正が発覚すれば容赦なく高額の罰金を求められる。日常生活では温厚な紳士淑女もルール違反には厳しくなる。しかし、それは合理主義の一面であり、「見て見ぬ振り」の日本とは違った社会規範である。
ここで、各国の移民事情にも触れておく。「移住・移民の世界地図(The Atlas of Human Migration)」丸善出版、2011年によると、移民データは次のようになっている。
日本:移民=217万人、人口比=1.7% 移民数=217万人は名古屋市の人口に近い。
オーストリア:移民=131万人、人口比=15.6% 主にトルコ、東欧からの移民
オランダ:移民=175万人、人口比=10.5% トルコ、モロッコ、インドネシアなどからの移民
さらに「移住・移民の世界地図」にある各国の移民政策(2005年)は、次のとおりである。
日本:入移民水準=現状維持、高度技能移民=増加させる
オーストリア:入移民水準=現状維持、高度技能移民=現状維持
オランダ:入移民水準=低減させる、高度技能移民=増加させる
【入移民水準:入国する移民の数や受け入れ基準】
オーストリアは、2011年1月から移民政策を変更、高度技能移民の家族にドイツ語能力を求めるようになった。これは、現在、オーストリア人の99%以上がドイツ語を母語としているのでドイツ語による移民との意思の疎通を重視していることの表れである。また、ドイツ語による教育現場の負担を軽減させるためでもある。なお、オーストリアはハプスブルク帝国時代から多民族国家だったので、民族言語権や放送言語の問題もあった。
日本の移民人口比は1.7%で僅かであるが、その絶対数は217万人でかなり大きい。日本人の人口は減少するが、移民子孫の人口は増加する。減少と増加が相対効果を生み、移民系人口比が急速に増加する。このような相対効果を考慮しながら、日本が日本であるために関連法規の整備を早急に進めるべきである。この法整備をおろそかにすると、ヨーロッパ諸国のように政治・経済・教育・宗教などの社会基盤に格差・対立・犯罪を招くので十分に注意したい。この問題の議論は長くなるのでここでは割愛するが、次世代への責任として筆者の考えを必要に応じて示していく。
次回に続く。