前回の4)京阪神の主な鉄道から続く。
5)観光
「Gデザイン50」は観光立国も目指している。2013年の訪日外国人旅行者は1,000万人を突破、20年には2,000万人、その先の2050年を見据えて観光立国に取り組むという。
インドネシアへのビザ免除、フィリッピンとベトナムのビザ大幅緩和、インドへの数次ビザ発給、地方空港の受け入れ体制整備を進める。また、クルーズ船の寄港を増加させる計画である。現在の東京、箱根、富士、京都、大阪の定番ルート以外に、広域ルートの開発、和食文化の発信、農山村での滞在促進で外国人旅行者を受け入れる。
最近の日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、2014年1月~6月の訪日外国人の推計総数は約626万人である(昨年同期の確定数:495万人)。このまま伸びれば、14年度の訪日外国人数1,200万人以上は確実である。
ここ数年、京都でも東南アジアの観光客が増えてきた。大文字焼き前日の今日(8/15)、京都駅ビルは内外の人々で賑わっていた。
下の写真は京都駅中央改札口の様子である。改札口の先4~50mにバス停広場がある。
京都駅中央改札口
下の写真は、中央改札口を背にしたバス停広場、午前10時過ぎだったが、清水寺・平安神宮行きバス停には行列ができていた。普段は、10m程度であるが、今日の行列は長い。
京都駅中央改札口前のバス停(清水寺・平安神宮方面)
この時間帯では、行列はバス停だけではない。下の写真は駅ビル2Fの観光案内所の行列である。普段は外国人も見えるが、今日は日本人ばかり、外国人は混雑を見て中に入らない。
京都駅観光案内所内の行列
案内窓口は10ヶ所ほどだが、行列はなかなか進まない。嵐山や大原の方面別パンフレットがあるが、英語版は意外に少ない。
下の写真は案内所の張り紙である。ホテルに空き部屋無しとの知らせである。
案内所の張り紙・・・ホテル満杯
バス停、案内所、みどりの窓口の行列だけでなく、駅のあちこちのコイン・ロッカーも満杯で空き待ちの人もいた。市内では300円の小型ロッカーが駅構内ではすべて500円、大型が700円である。この特別価格のコイン・ロッカーが空き待ち状態では、遠来の客人への“おもてなし”どころではない。
下の写真は、新幹線の混みぐあいである。
新幹線の時間表と空き情報
上の写真の右から左に向かって「終点まで」「新横浜まで」「名古屋まで」の普通(右欄)とグリーン(左欄)の状態、×は満席、△は残りわずか、○は空席有りを示している。のぞみの座席には十分な余裕がある。近頃の東海道新幹線は東京・名古屋・京都・大阪に過剰サービス、他の中間駅は不便になった。
下の表は、時刻表で調べた京都駅発の列車本数である。
京都駅発の列車数:平日午前10時の1時間
上の表で、湖西、山陰、奈良、近鉄京都線は京都が始発駅、同時に終着駅でもある。時刻表には到着列車が載っていないが、推定すると約30本、この数字を発車数71に加えると京都駅の発着本数は1時間に約100本になる。かなり頻繁である。
京都は世界に知られた観光地、鉄道と高速道路のネットワークは完備している。祇園祭や大文字焼きのたびに街のあちこちに人混みが発生する。桜や紅葉の季節も人出が多いのはいうまでもない。京都市を通過する訳ではないが、第二名神といわれる名古屋-神戸間の高速道路も基本計画を終えて測量段階に入っている。
計画も含むが、京阪神の交通ネットワークは鉄道と道路ともに完成度が高くなっている。ここでは、満点より腹八分目が大切である。国交省や建設業界とは立場が違うが、ある程度の発展の余地を残して、現状の維持管理で十分である。大都会はほどほどに、それより地方に目を向ける時代になっている。
6)鉄道の正確な時刻表
日本の鉄道は正確だといわれている。もちろん、京阪神の私鉄は正確で便利だが、新幹線も東京から博多までほぼ同じように正確である。
たとえば、東京-博多間の1,175kmをのぞみは5時間4分で走行する。5分間隔ののぞみが、もし5分も遅れると運行スケジュールは大きく乱れ、非常に危険である。個々の列車が正確に走行するので全体の運行が安定する。この“個々”と“全体”の連携が“正確”を生み出している。その“正確”は、深夜の砂利固め(保線作業の一つ)や車両整備、列車運行や管理業務、補修部品と資材管理を含む幅広い仕事から成り立っているのを忘れてはいけない。
もし、保線作業や車両整備に不備や手抜きがあれば、JR北海道のように度重なる事故になって表面化する。それぞれの人が持ち場の仕事をまじめにこなす、これに尽きる。突き詰めれば“正確”な列車運行の本質は“まじめ”である。
筆者にはいろいろな国から学び取ったことがある。その一つは、発展途上国と先進国の違いである。
今や発展途上国でも最先端のブランド品を身に付ける人も多い。いくつも高級時計を持つ人もいる。しかし、社会インフラの整備は一朝一夕に進まない。生活感覚の違い、また、技術の蓄積もない。その代表例は何年も手入れをしたことがないような線路である。列車が見えると線路上の屋台をかたづけてその通過を待つ、あの光景である。
【誤解を避けるための補足:途上国の人もまじめであるが、何を“まじめ”にこなすかが分かっていない。その“何”を一つひとつ教えるので時間がかかる。別の地域では長い年月をかけて、“何”を試行錯誤と改良で一つひとつ見付けて、次世代に伝えてきた:その地域や国を先進国という。】
途上国の例に対する先進国の代表例は、ヨーロッパの石造建築技術、たとえば尖塔や教会のメンテ技術がある。また、690年から1300年も続く伊勢神宮と宇治橋の式年遷宮がある。筆者も見たが、宇治橋には宮大工の技術だけでなく船大工の技術も欠かせない。石造建築と木造建築の違いはあるが、それは技術分野と時代を越えた繊細なセンスの伝承である。
日本の人口は減少に向かうが将来も先進国として発展を続ける、これが最も大切なことである。
人混みの京都に長居は無用、京都駅から快速電車を乗り継いで、東海道を行けるところまで行ってみようと思い立った。ゆっくりと車窓の家々や街を眺めながら、スーパー・メガリージョン、国際競争力、コンパクト+ネットワークとは何かを考えてみる。
続く。
5)観光
「Gデザイン50」は観光立国も目指している。2013年の訪日外国人旅行者は1,000万人を突破、20年には2,000万人、その先の2050年を見据えて観光立国に取り組むという。
インドネシアへのビザ免除、フィリッピンとベトナムのビザ大幅緩和、インドへの数次ビザ発給、地方空港の受け入れ体制整備を進める。また、クルーズ船の寄港を増加させる計画である。現在の東京、箱根、富士、京都、大阪の定番ルート以外に、広域ルートの開発、和食文化の発信、農山村での滞在促進で外国人旅行者を受け入れる。
最近の日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、2014年1月~6月の訪日外国人の推計総数は約626万人である(昨年同期の確定数:495万人)。このまま伸びれば、14年度の訪日外国人数1,200万人以上は確実である。
ここ数年、京都でも東南アジアの観光客が増えてきた。大文字焼き前日の今日(8/15)、京都駅ビルは内外の人々で賑わっていた。
下の写真は京都駅中央改札口の様子である。改札口の先4~50mにバス停広場がある。
京都駅中央改札口
下の写真は、中央改札口を背にしたバス停広場、午前10時過ぎだったが、清水寺・平安神宮行きバス停には行列ができていた。普段は、10m程度であるが、今日の行列は長い。
京都駅中央改札口前のバス停(清水寺・平安神宮方面)
この時間帯では、行列はバス停だけではない。下の写真は駅ビル2Fの観光案内所の行列である。普段は外国人も見えるが、今日は日本人ばかり、外国人は混雑を見て中に入らない。
京都駅観光案内所内の行列
案内窓口は10ヶ所ほどだが、行列はなかなか進まない。嵐山や大原の方面別パンフレットがあるが、英語版は意外に少ない。
下の写真は案内所の張り紙である。ホテルに空き部屋無しとの知らせである。
案内所の張り紙・・・ホテル満杯
バス停、案内所、みどりの窓口の行列だけでなく、駅のあちこちのコイン・ロッカーも満杯で空き待ちの人もいた。市内では300円の小型ロッカーが駅構内ではすべて500円、大型が700円である。この特別価格のコイン・ロッカーが空き待ち状態では、遠来の客人への“おもてなし”どころではない。
下の写真は、新幹線の混みぐあいである。
新幹線の時間表と空き情報
上の写真の右から左に向かって「終点まで」「新横浜まで」「名古屋まで」の普通(右欄)とグリーン(左欄)の状態、×は満席、△は残りわずか、○は空席有りを示している。のぞみの座席には十分な余裕がある。近頃の東海道新幹線は東京・名古屋・京都・大阪に過剰サービス、他の中間駅は不便になった。
下の表は、時刻表で調べた京都駅発の列車本数である。
京都駅発の列車数:平日午前10時の1時間
上の表で、湖西、山陰、奈良、近鉄京都線は京都が始発駅、同時に終着駅でもある。時刻表には到着列車が載っていないが、推定すると約30本、この数字を発車数71に加えると京都駅の発着本数は1時間に約100本になる。かなり頻繁である。
京都は世界に知られた観光地、鉄道と高速道路のネットワークは完備している。祇園祭や大文字焼きのたびに街のあちこちに人混みが発生する。桜や紅葉の季節も人出が多いのはいうまでもない。京都市を通過する訳ではないが、第二名神といわれる名古屋-神戸間の高速道路も基本計画を終えて測量段階に入っている。
計画も含むが、京阪神の交通ネットワークは鉄道と道路ともに完成度が高くなっている。ここでは、満点より腹八分目が大切である。国交省や建設業界とは立場が違うが、ある程度の発展の余地を残して、現状の維持管理で十分である。大都会はほどほどに、それより地方に目を向ける時代になっている。
6)鉄道の正確な時刻表
日本の鉄道は正確だといわれている。もちろん、京阪神の私鉄は正確で便利だが、新幹線も東京から博多までほぼ同じように正確である。
たとえば、東京-博多間の1,175kmをのぞみは5時間4分で走行する。5分間隔ののぞみが、もし5分も遅れると運行スケジュールは大きく乱れ、非常に危険である。個々の列車が正確に走行するので全体の運行が安定する。この“個々”と“全体”の連携が“正確”を生み出している。その“正確”は、深夜の砂利固め(保線作業の一つ)や車両整備、列車運行や管理業務、補修部品と資材管理を含む幅広い仕事から成り立っているのを忘れてはいけない。
もし、保線作業や車両整備に不備や手抜きがあれば、JR北海道のように度重なる事故になって表面化する。それぞれの人が持ち場の仕事をまじめにこなす、これに尽きる。突き詰めれば“正確”な列車運行の本質は“まじめ”である。
筆者にはいろいろな国から学び取ったことがある。その一つは、発展途上国と先進国の違いである。
今や発展途上国でも最先端のブランド品を身に付ける人も多い。いくつも高級時計を持つ人もいる。しかし、社会インフラの整備は一朝一夕に進まない。生活感覚の違い、また、技術の蓄積もない。その代表例は何年も手入れをしたことがないような線路である。列車が見えると線路上の屋台をかたづけてその通過を待つ、あの光景である。
【誤解を避けるための補足:途上国の人もまじめであるが、何を“まじめ”にこなすかが分かっていない。その“何”を一つひとつ教えるので時間がかかる。別の地域では長い年月をかけて、“何”を試行錯誤と改良で一つひとつ見付けて、次世代に伝えてきた:その地域や国を先進国という。】
途上国の例に対する先進国の代表例は、ヨーロッパの石造建築技術、たとえば尖塔や教会のメンテ技術がある。また、690年から1300年も続く伊勢神宮と宇治橋の式年遷宮がある。筆者も見たが、宇治橋には宮大工の技術だけでなく船大工の技術も欠かせない。石造建築と木造建築の違いはあるが、それは技術分野と時代を越えた繊細なセンスの伝承である。
日本の人口は減少に向かうが将来も先進国として発展を続ける、これが最も大切なことである。
人混みの京都に長居は無用、京都駅から快速電車を乗り継いで、東海道を行けるところまで行ってみようと思い立った。ゆっくりと車窓の家々や街を眺めながら、スーパー・メガリージョン、国際競争力、コンパクト+ネットワークとは何かを考えてみる。
続く。