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グローバル工場---機能の階層(2):コード表がデータベースの土台

2012-01-09 | ことばとグローバルシステム

前回のグローバル工場---機能の階層(1)の続き。

2.機能階層図の説明
下の図は、工場機能の階層図である。この図は、単独の工場や国内外で稼動している工場群にも当てはまる。図に示すレベル0はレベル1の必要条件、レベル1はレベル2、レベル2はレベル3の必要条件になる。このピラミッド型の階層図で、階層の上下関係や中身に誤りや欠陥があるとき、工場の運営にトラブルが起きる。

レベル0や1の管理が不十分にもかかわらず、いきなりレベル3の原価・利益管理を目指して高価なパッケージソフトを購入し、導入に失敗した。このようなトラブルはタイの日系工場でよく見かけるケースである。パッケージソフトは高級だが、自社の運用体制がそのソフトウェアーに付いて行けない、いわば砂上の楼閣が失敗の原因である。ソフトウェアーを買う側と売る側双方の判断ミス、結果として双方ともに大きなダメージを受ける。

このようなトラブルを避けるため、国内外の長年にわたる経験を下に示すピラミッド型の図形に要約した。ここでは、日本の製造業の健全なグローバル化を願って、失敗例を示しながら各レベルの内容を説明する。

                         工場機能の階層図
     出典:筆者著“生産管理の理論と実践”COMM Bangkok、2010

(1)レベル0:生産基礎情報
レベル0の情報は工場管理に必要な基本的な情報である。レベル0は、工場の土台に当たる部分であり、このレベルなしにレベル1の機能は成り立たない。

1)コード表
先ず、上の図の右端のコード表、言い換えれば“略語集”から説明する。

コンピューターに関係なく、昔からコード表は、製造業、商社、金融業、学校、官公庁など、あらゆる組織にとって最も重要なデータだった。コード表があってはじめて、データベースを構築することができる。

製造業に必要なコード表は、国コード、通貨コード、材質コードなど、その種類は100以上になる。それらは、勘定科目コード、部門コード、社員コード、海外工場との共通コード(e.g.品質等)など、製品開発、営業、製造、品質、購買、物流部門に亘るコード表である。(多くのコードは他の社内外データベースと共通するので追加・変更・削除(=メンテナンス)には要注意)

言うまでもなく、コード表は業務システムの土台になる重要な情報である。昔は、火事になればまずコード表と売掛帳を持ち出せと云われていた。

コンピューターの時代ではコード表の設計とメンテナンスにおいては、次の点に留意すべきである。
①自社だけでなく、取引先や業界とコードを共有するコード設計⇒ISOやJISコードの使用
②特殊文字(カタカナや特殊記号)を回避したコード設計⇒コード表の一元管理で海外事業所と共有
③無意コードと有意コードの違いを考慮したコード設計⇒コードの長寿化/オーバーフローの回避
 【例:無意コード:Meaningless Code(e.g.数字連番)、有意コード:Meaningful Code(e.g.JPN日本)、
  混合コード:Mixed Code(e.g.無意+有意コード) 】
④コードとコード表の計画的な追加・変更・削除⇒新旧コードの並列運用(約2年の運用経験あり)

コード表を大きく分けると次のように分類できる。

A.社外のコードを活用するコード表
この種のコードは、ISOやJISの国コードや通貨コード、計量単位コードや産業分類コードである。世界で広く使われているJPNやUSA、m(メートル)、kg(キログラム)などは、そのまま利用できる。これらのコードは略語や記号であり、国コードの国名は英語の公式名である。

ISOやJISの他に、EDI(Standard for Electronic Data Interchange)のコードも国際的なコードである。また、NAICS(North American Industry Classification System)の業種分類コードは、顧客や仕入先の業種分類に利用できる。

ここで忘れてはいけないことは、これらのコード表はグループ企業の共通コード表という点である。日本の視点だけでなく、アメリカやタイ工場の顧客や仕入先の国コードや通貨コードも登録しなければならない。このような点でも、企業のグローバル化が進むとき、共通コードのメンテナンス(追加、変更、削除)に漏れがないよう本社と関係企業の間で双方の守備範囲を取決める必要である。

たとえば、製品コード(品番)も自社と取引先の共通コードである。製品カタログは自社と顧客(不特定多数のエンド・ユーザー*を含む)との共通言語(コード)である。筆者の経験だが、製品コードの変更(有意コード⇒無意コード)は長期に亘る作業だった:製品と補修部品(一部は中間加工部品)併せて十数万点以上、補修部品の供給打切りに規程無し(製品寿命が数十年のケースも稀でない)という状況だった。世界各国の取引先に事前予告(数年前)⇒新コードへの移行開始⇒新旧コードの運用(取引先&顧客との受注・出荷:2年間継続)⇒旧コード体系廃止でコード体系刷新を完了した。このコード体系変更には国内営業と海外営業の協力を得た。
【*参考:エンド・ユーザーは極寒地から南海の島嶼(トウショ)に分布、製品の故障・修理不能は、時には生命を脅かす恐れも想定した。参考:内外取引先へのコード体系変更予告から新旧コード並列運用打切りまでの10年、グローバル工場---機能の階層(5):日本初のMRP(2012-02-25)

B.社内で決めるコード表
大多数のコード表はこの種類のコード表である。製品分類コード、材質コード、顧客分類コード、顧客注文タイプコードなどは、グループ企業の技術規定、品質基準、会計基準、人事規定など、社内のルールとして定義するコード表である。

新しい素材、製品、事業の展開にしたがって、新しいコードが発生するのでコード表のメンテナンスも忘れてはいけない。

C.外国の法制度を反映すべきコード表
社内で決めるコード表の中には、関係国の法制度や商習慣を反映すべきコード表がある。典型的な例として、グローバルな勘定科目一覧表(Chart of Account)を説明する。

海外の子会社を含むグループ企業の連結決算をできるだけ自動化したいとき、グローバル勘定科目コードを導入する。全社共通のグローバル勘定科目コードを導入すれば、システムの工夫によって関係会社の財務状況を任意の時点で照会することができる。これにより、グローバルな経営視界の改善(Improvement of Management Visibility)が可能になる。平たく言えば、グループ企業の財務状況が丸見え、いい方は悪いが相手のポケットに手を入れることができる。

実例では、経営視界の改善を目的とした勘定科目のグローバル化で、海外子会社の月末締め処理と本社への決算報告作業が激減した。人員削減が目的ではなかったが、結果的には25%も人員が減少した。このケースでは、会計の人員を無理に削減したというより、やることがなくなったといった感じだった。アメリカ本社への報告は、月末恒例の徹夜に近い作業だったが、その作業が殆どなくなった。ねじり鉢巻で頑張ったあの作業は一体何だったのか?との思いもあった。一方、タイの日系企業では、月末のねじり鉢巻は今も続いている。

グローバル勘定科目の導入では、たとえば進出先がアメリカやタイの場合、勘定科目もその国の法制度に対応しなければならない。たとえば、アメリカの場合では「給与-陪審員休暇:Salary - Jury Duty」や「給与-軍事徴収休暇:Salary - Military Leave」などと日本では使用しない経費の勘定科目コードが必要になる。

経費関係ではさまざまな残業手当、日本特有の住宅や通勤手当など、資産勘定ではWrite-off/Write-up(ライトオフ/ライトアップ:資産の消却/資産の評価増・・・いずれも日本では認められなかった)など、さまざまなケースへの対応が必要になる。実際には、科目コードの頭1桁で国別のブロッキング、または、勘定科目毎に「日本では不使用」とのコメントで対処した。

また、個々の勘定科目コードの中身については各国固有の法制度や商習慣があるので、その国の専門家のアドバイスが必要になる。たとえば、タイでは、税法上の固定資産は「1年を超えて使用する資産はすべて固定資産とする」となっており、減価償却も日割り計算である。厳密にいえば、事務用の鋏やカッターナイフも減価償却の対象になる。これでは、固定資産の管理が複雑になり混乱する。このような問題については、現地の公認会計士のアドバイスと他社の動きを参考に対処すべきである。同時に、今後の勘定科目の設計では、国際会計基準(International Accounting Standards)を視野に入れて検討すべきである。

さらに、グローバル勘定科目のタイトル(名称)は、多言語化すべきである。日本本社の連結財務諸表は日本語だけでも通用するが、アメリカやタイに進出した工場が現地法人として官公庁に提出する書類は現地公用語でなければならない。

 Account Number  Account Title   勘定科目名  Account Usage    
 4010015         Expenses: Water  経費:水道    Monthly water bill, Bottled water

上のサンプルでは、Account Number=グループ企業共通勘定科目コード(番号)、Account Tile=名称(英語)、勘定科目名=日本語名(現地公用語)、Account Usage=使用方法(英語)を示している。進出先国の官庁への決算書類は、英語/現地公用語の対応表で対処できる。

上のサンプルのAccount Usageは、グローバル企業の場合、英語だけで十分と考える。

D.英語だけのコード表
実用上、コード名称の多言語化が困難なコード、必然的に英語だけのコード表がある。

どこの工場でも、工程ごとに仕上り品の品質を判定する。不良品の場合は、不良品コードを付けて生産管理部門に報告する。ここでは、その不良品コードをDefect Code(デフェクト コード)として説明する。

加工した部品や完成品の不具合、たとえば傷(Scratch)やひび割れ(Crack)は、職場別に定義されたコードである。機械加工、表面処理、塗装、最終検査などの工程別の不良を示すDefect Codeは、多種多様、コード表に登録する不良品コードの数は多い。また、それらのコードは、工程を担当する誰もが理解すべきコードである。

タイの場合は、外注工程はタイだけでなく近隣諸国に広がる。このため、コードは短い英数字、名称はどこの国でも通じる簡単な英語になる。一般に、Defect Codeの多言語化は不要、それは英語だけのコード表である。
(もしDefect Codeを多言語化すれば、タイ工場の場合はタイ語、マレーシア語、カンボジア語、ベトナム語などが必要になる。たとえば、Scratchという意味の一意性を保つためには、英語を標準語として押し通しても問題はない、またその論拠にも一理あると思う・・・この種の英語コードは、一意性を保つ点でローマ時代のラテン書き言葉と類似している。)

E.コード表の管理
顧客の注文タイプコードや支払条件コードやDefect Codeなどは、その業務の新人が最初に覚えるべきコードである。この意味で、日本企業の本社はコード表を世界共通語の英語と日本語で定義して、関係者に周知徹底する仕組み作りが大切である。その仕組みには、コードの追加・変更・削除の申請(現場から本社への流れ)と承認後の周知徹底(本社から関係部門への流れ)がある。

なお、勘定科目の英語/現地語対応表の管理は、その国に任せるのが自然の流れになっている。

ここまで、コード表の要点を説明した。レベル0の取引先、品目、BOM、工程順序の説明は、次回に続く。


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