『広報こうふ11月号』特集で掲載したおふたりの先生へのインタビューを以下にまとめます。
石田小学校 川村先生
全員が同じ方向を向く
―――石田小はなぜ、ここまで先進校に
当時の研究主任の熱意でしょうか。(端末が一斉配布される前)どうする、となったときに最初だからしっかり全員が同じ方向を向いて勉強しよう、と提案されたんです。ちょうどコロナ一斉休校の翌年でした。従来なら研究授業などを設定するんですが、その年は“勉強の年”とわりきって、研究主任だけじゃなく、当時の校長先生だったり、前任校で少し経験値のあった自分だったり、周りを巻き込みながら、そこにしっかりベテランの先生方もついてきてくださったからこそ、叶ったことでした。
先生方がGoogle認定教育者の資格取得に個々に励んだり、自分で精力的にどんどん技能を高めていかれたので、アイデアの共有も増えていきました。
最終的に“1人1実践をしよう”となり、(たいてい校内研究会は、1本の研究授業を全職員でアイデアを出し合い一人の先生が授業をするんですけど)従来の校内研に比べたら規模は小さいんですが、その発表もGoogleのツールを使いGoogleMeet(ミート:ビデオ会議ツール)をつなぎ、スライドを共有したりして、校内研すべてで研修という形で1年かけてスキルを伸ばしていきました。その風土が今も残っているため、新しく赴任された先生にもいい形で伝わっています。
日常的なチャットの確認
―――校務DXが進み、先生方の様子は
もうペーパーレスも当たり前の日常になってきています。先生同士みな連絡をチャットに出したりホーム画面でチャットから予定表が見つけられたり、便利に使っています。端末をパッと開けばそこに書いてあるから見落とすことが少なくなったと思います。
―――ほかに画期的なことは
欠席連絡ツールです。以前は欠席連絡の紙を登校班の班長さんに渡したり、電話連絡だったんですが、保護者の方が打ち込んでくださるようになっていて、いつでも欠席連絡を受けることができるようになりました。私たちも朝出勤して画面を開けば集計されているので、一目瞭然ですごく便利です。
―――3年目の手ごたえは
学校全体でGIGAを推進して取り組んだことで、効率的に時間を使えるようになり、子どもたちと向き合える時間が増えたことを実感しています。
端末の持ち帰り
―――これまで一番大変だったのは?
持ち帰りの問題です。毎日の持ち帰りに挑戦してみようとした時期もあったんですが、大人には軽い端末も子どもにとっては重量的な負担があったりします。それに学校では教員の目が届くところで使用ルールも確認しながら指導できるんですが、家に帰るとやっぱり少し羽を伸ばして関係ないことを調べてしまったりとかで保護者の方から問い合わせが来て、じゃあ学校の中で持ち帰りに関するルールづくりをどうしようと頭を悩ませたこともありました。なかなか持ち帰りは進まなかったかなと当時、思いました。
―――今はどのような形で持ち帰りを
今は各学年それぞれ課題やeライブラリ(学習ドリルアプリ)などがあるときは持ち帰り、というような形にしています。
子どもの理解が深まる
―――きもちメーターのメリットは?
子どもたちの生活習慣がわかる点がいいですね。寝る時間がずっと遅いと個別懇談のときにこちらから保護者に話ができます。それまでは子どもの顔色をみたりして、個別懇談で保護者からお聞きする形でしたが、それ以前に子どもの様子がわかっていることが増えました。わりと高学年でも正直に回答してくれて、子どもの理解に役立っていると感じます。
予想を上回る吸収力
―――子どもと大人の違いは?
吸収力は子どもの方がすごく高いと感じます。本校に赴任した1年目は、特別支援学級の担任をしていたんです。端末で勉強となるとどうなるのかなと最初は思っていましたが、漢字の学習は苦手だけどタイピングはとても早くて、子どもたちの意欲を引き出すツールとしてはChromebookは抜群にいいものだと実感しました。子どもに合わせて手描き入力の場合もありうると考えていましたが、どの子もタイピングに興味をもって取り組んでいました。タイピングができるようになると、さらにワープロソフトを使えば文章を書くことができたり、何かをつくったりとかいうことにつながりますし、可能性が広がるように感じました。
ゲーム感覚で学ぶ
―――入学したてはタイピングもままならない?
キーボー島というタイピングのサイトを使って、ロング休みにやってもいいよというふうにしておくんです。キーボー島もよくできていてゲームみたいな感じでタイピングしながら敵を倒してクリアしていって何級とか、全国で自分が何番目とかでるんです。子どもたちも好きで時間が空いたらキーボー島やっていいですか?みたいに聞いてくるんです。そういうのが続くと自然に身についてきて3年生くらいには不自由なくタイピングできるようになっているように思います。今年度は4年生の担任をしていますが、タイピングで自由に文字入力をすることができています。
教える側のスキルアップ
―――これからの展望は?
Chromebookは子どもの可能性を引き出せるアイテムなので、後は使い方をどうするかというところですね。教師の工夫やスキルを高めていくことで、子どもたち一人一人の可能性を最大限に引き出せることができると思っています。
今は端末を使った学習方法をどうするかを研究中。甲府市だとeライブラリという学習ドリルがあり、単元の復習や確認テストがそろっています。
子どもたちを温かい目で
―――市民の皆さんへひとこと
コンピュータの研修会に参加して感じたのは、この予測不可能な現実を生きていく子どもたちを育成する義務が僕たちにはあるということ。ICTやコンピュータに生成AIも出てきて、今後インターネットやパソコンだけじゃなく、もっと複雑で高次元のものがたくさん出てきて、予測不可能な時代の中で、様々な課題に自ら解決していく力が求められると予想されます。先生に言われたことだけを学ぶという能動的な学びではなくて、主体的に子どもたちが学ぶ、子ども一人一人の学びに合わせる授業を進めています。「子どもたちが未来でやりがいと生きがいを持って活躍できる人を育成する」という強い意志をもって教育活動に励んでいますので、温かい目で見守ってほしいと思います。
【「GIGA参観日2024」の様子】
去る10月18日㈮に開催し、北海道や北陸など遠方からも多くの教職員や学校関係者が参加していました。全学級の授業公開後、体育館での学習会では、全国からの参加者の熱い学びが行われていました。
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石田小ホームページ
https://ishida-e.kofu-ymn.ed.jp/
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南西中学校 小西先生
足踏みだった導入当初
―――最初の頃の様子は?
端末が配布された当初はログインするのにも時間がかかりました。まず大文字小文字を打ちわけられないので、なかなか苦労しました。授業を始めるたびにログインできません!という子もいて、そこにパスワードを印刷した個票をもっていってみせて一緒に打って、という感じでした。3年が経ち、そういう基本的な悩みはもうなくなりました。
端末を使う授業
―――生徒たちの変化は?
他の子の考えが見られるから自分の考えを書けるという子が増えたというのはすごくあると思います。大人のずるい考えでいうとコピーペーストしちゃうだろうな、なんて正直思っていたんですけど、これまで見ていてそうした場面はほとんどないんです。多分、これは想像ですけど他の子の考え方が見られるから「あ、そういうことか!じゃ、そういうこと書けばいいんだ!」と考える生徒が増えたんだと思います。
―――理解度は上がる?
今、一番いいなと思えるのは授業に遅れをとっている生徒を減らせているところです。端末を使えているか、確認しながら授業が進むので、ちょっとつまずいている生徒、手がとまっている生徒のところにもヘルプに行きやすくなりました。つまずいている生徒がいないから、全体の理解度は上がっているように思います。
学びに便利なツール
―――理科の授業は使いやすい?
今日の実験は端末でグラフやタイマーを使い、最終的には他の班のグラフも見比べながら、なぜこの班はこうだったのか、理由まで一緒に確認できました。理科は特に生徒の考えで進んでいく教科なので、各班の結果が一覧で見えたり、それぞれの考察を知ることができて、相乗効果は生まれると思います。生徒たち自身も実験後、客観的に比較できるのは利点です。
―――宿題は端末で?
よくあるのは授業でこういうレポートをみんなでつくろうという場合に使っています。授業中に終わらないから残りを家で仕上げてくるとか。また、もう中学生なので、ある程度生徒たちを信頼して、いちいち許可をとらずに生徒の自主的な考えで持ち帰れるようにもなっています。
校内研での活用
―――先生方はどんなふうに使われている?
研究授業の指導案など、こういう授業を計画していますというデータを皆さんと共有して皆さんからそれに対してコメントを入れてもらうようになりました。今までは、わざわざ検討の時間をとっていただいて対面でご説明するんですけど、端末であれば各々の都合のいい時に指導案を見て、それに対してコメントを入力しておけば、すぐその先生に届くようになったので、効率や時間の自由度は上がりました。
―――先生方の様子は?
南西中ではここ何年か“1人1実践”といって授業実践に取り組む機会があるんですけど、その時は必ずICTを使って授業を行っています。その折に先生方の間で特に交流が増えていると思います。年輩の先生方は積極的に得意な先生のところにきて「これ、どうやるの?」って聞きに来てくれますし、若手もベテランの先生の経験値からアドバイスをお聞きすることができて、お互いにサポートしつつみんなで使おうという雰囲気があります。今、本当にいい方向に動いていると思います。
単線型と複線型
―――従来の学びとは?
研修会に出てはっとしたのは、これまでの授業で本当に頭を使っていたのは教員の方じゃないかと言われて、あぁ確かにと思うふしはありました。従来の授業ですと、子どもにどう思う?と問いかけて、子どもたちが発言して、それをこちらがまとめてという流れだったんです。実際、まとめているのは教員の方で、本当の意味では子どもの能力を引き出す方向にはなっていなかったと。
―――新しい学びにシフト?
今、本校で取り組んでいるのが複線型の授業です。これまでは基本的に教師が教えて子どもが問題を解いてっていう1本線だったのが、今はいろんな課題のやり方をするとか、そもそも課題にもいろんな種類があるので、子どもによってやっていることが違うし、いろんな線があるんです。複線型授業という考え方自体は昔からあったんですが、ICTが普及してより実現しやすくなりました。
複線型授業では、一人で黙々とやる子もOK。もちろん誰かと一緒にやる子もOK。ただクラウドの中でつながっているから誰かの考えは常に見られるし、自分もまた誰かに見られる。やるべき課題も示され、解決に向けてそれぞれが学びを進めるという感じです。
明るい未来を思い描いて
―――働き方の改善にはなっている?
なっています。授業に使うプリント印刷をしなくてよくなりましたし、ミスしても簡単になおせます。前は印刷機渋滞とかありましたから。早めに印刷しなきゃという焦りもなくなり、数分前まで準備にあてられるので、本当にラクになりました。
―――やがてテストも端末に?
なるかもしれないですね。もう学力テストも実証が始まっているとお聞きしました。そうなったら定期テストなど採点もラクになるのでしょうか。あとはGoogleフォームでテストをするのを校長先生に許可していただければ(笑)…
―――生徒たちにひとこと
難しい時代とは思います。いろんな価値観の人がいますし。ですが、その中で強くたくましく、困ったときは人に助けを求めるのも大事なことなのでかたくなにならずに。そういうことも含めて自分でうまく生きていける大人になってくれたらうれしいです。
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南西中ホームページ
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