種蒔きからカウントすると80日~85日位になるだろうか、田圃の稲達も健やかな成長ぶりである。季節は7月の半ば、暑い盛りだ。この時期、一斉に取り掛かるのが「田圃の中干し」だ。稲作農家の一斉作業とも言えるかもしれない。聞き慣れない言葉だと思われるかも知れないが、水稲栽培である田圃から一斉に水を抜き取る事である。目的は種々考えられるが、以下に列挙してみようかと思う。
①土中に酸素を補給する。
②土中の有毒ガスを抜き取る。
③窒素の吸収量を抑え、分けつを抑制する。
④土壌を固くして稲刈り等の作業に備える。
特徴的なのは水系の流域全体で一斉に行われる事だ。まずもって水系に水が流れてこない。分岐点で止められるみたいで、否応も無く中干し状態となってしまう。水稲栽培が個人事業であると共に地域の共同作業である事を如実に示しているかと思う。師匠の田圃も完全に干上がった模様だ。固くなった土壌が垣間見えている。
中干し期間は地域にもよるだろうが、一般的には1週間から2週間程度だろうか。上述の目的が果たせたら再び水を導入し、成長を図っていくのが通例である。稲刈りが近づいたら再び水を抜くのだが、それは後日の話で、稲穂の成長には水が必要なのはご存じのとおりだ。中干しを行うと、田圃の土壌に亀裂が生じ、ガスが抜けてるようにも見受けられるが事実なんだろう。
当地では今時分、7月の中旬~下旬頃に行われるので、「夏の土用干し」とも呼ばれている。夏の土用と言えばウナギが定番だが、すっかり高級食材となって入手しがたくなってきた。子狸が幼少の頃は、川に罠を仕掛け一晩で数匹も捕獲するのが通例だったのだが。田圃の中干しは残ってもウナギの捕獲は消え去った情景の模様だ。残念至極な時代でもある。