翌日も横顔生夫が、縦顔死郎の入口をトントンとノックをして合図をした。
「やあ、早いですね」
「今日は残業が無くて早く帰れたんですよ。」
「残業が多いみたいですが、忙しいのですか?」
「毎日、残業しているので、マンネリ化してしまっているんですよ。明日できることは明日やればいいんですけれどね。」
「みんな残業しているのですか?」
「いいや、早く帰る奴もたくさんいますよ。」
「その早く帰る人は仕事をしていないのですか?」
「いいえ、仕事はしていますが、要領がいいのです。」
「要領がいいといいますと?」
「自分に仕事があまり集まらないようにしているんですよ。」
「そうですか。あなたは要領が良いのですか?」
「さあ、どうかなあ。要領はあまり良くないね。」
「ところで、今日はどうしますか?」
「ビールとスルメを買ってありますので、私の家で飲みましよう。もっとも、あなたの家でもあるんですがね。」
「ビールにスルメですか、いいですね。」
「冷蔵庫の中にチーズが有ったと思いますので見てみますね。」
「チーズは三十年くらい食べていませんね。」
「昔は食べていたんですか?」
「遠い昔に食べた記憶があります。」
「あなた方は何を食べているのですか?」
「何も食べませんよ。わたしの世界では食べる必要が無いのです。」
「何も食べないと死んでしまうじゃないですか。」
「いえいえ、私たちは死んでいますから。」
「そうおっしゃっていましたね。ところで、あなたはいつ死んだのですか?」
「三十年くらい前に、自転車に乗っていてトラックに跳ねられたのです。」
「それからずっと、そこに居るのですか?」
「そうです。間違えて生き返る事なく、ずっと居ます。」
「『間違えて生き返る事なく』とは、どういう事なのですか?」
「迷路に迷いこんで、ワープしてしまうのですよ、メビウスの輪のように。」
「やあ、早いですね」
「今日は残業が無くて早く帰れたんですよ。」
「残業が多いみたいですが、忙しいのですか?」
「毎日、残業しているので、マンネリ化してしまっているんですよ。明日できることは明日やればいいんですけれどね。」
「みんな残業しているのですか?」
「いいや、早く帰る奴もたくさんいますよ。」
「その早く帰る人は仕事をしていないのですか?」
「いいえ、仕事はしていますが、要領がいいのです。」
「要領がいいといいますと?」
「自分に仕事があまり集まらないようにしているんですよ。」
「そうですか。あなたは要領が良いのですか?」
「さあ、どうかなあ。要領はあまり良くないね。」
「ところで、今日はどうしますか?」
「ビールとスルメを買ってありますので、私の家で飲みましよう。もっとも、あなたの家でもあるんですがね。」
「ビールにスルメですか、いいですね。」
「冷蔵庫の中にチーズが有ったと思いますので見てみますね。」
「チーズは三十年くらい食べていませんね。」
「昔は食べていたんですか?」
「遠い昔に食べた記憶があります。」
「あなた方は何を食べているのですか?」
「何も食べませんよ。わたしの世界では食べる必要が無いのです。」
「何も食べないと死んでしまうじゃないですか。」
「いえいえ、私たちは死んでいますから。」
「そうおっしゃっていましたね。ところで、あなたはいつ死んだのですか?」
「三十年くらい前に、自転車に乗っていてトラックに跳ねられたのです。」
「それからずっと、そこに居るのですか?」
「そうです。間違えて生き返る事なく、ずっと居ます。」
「『間違えて生き返る事なく』とは、どういう事なのですか?」
「迷路に迷いこんで、ワープしてしまうのですよ、メビウスの輪のように。」