切れたメビウスの輪(12)

2016-12-07 21:43:05 | 怪奇小説
「ところで、二人で私の住んでいる世界に戻って来ませんか?」と、横顔生夫。
「いいえ、私達は今住んでいる世界が気に入っていますから、ここを離れたくないですね。」と、縦顔死郎。
「そうですか、あなた方の住んでいる世界は、そんなに良い世界なのですか?」
「ええ、良い世界ですよ。あなたも来ませんか?」と、縦顔生郎。
「興味は有りますが、わたし達の世界の人間は、あなた方の住んでいる世界へ行くと、もう帰って来ることができないと思っていますので、止めときます。」と、横顔生夫。
「普通はそうですが、私達が両方の世界を行ったり来たりできていますので、あなたもできると思いますよ。」と、縦顔死郎。
「そうですね、ちょっと行ってみましょうか。」と、縦顔生郎。
「ええ、是非来てください。」

そして、横顔生夫は縦顔死郎と縦顔生郎の住む世界に入って行った。
三人は眩しく輝くトンネルを抜けると、目の前に草原が広がっており、色とりどりの花が咲いていて、気温が小春日和のようで心地よい。
ベンチの背もたれに身を任せてユッタリとしている夫婦の前には子供達がかけっこをしている。

「良い所ですね。」
「そうでしょ。」
「もう少し向こうまで行ってみましょうか?」
「帰れなくなると困りますので、このへんまでにしておきます。」と、横顔生夫。
「そうですか、もっと遠くまで行くと、素晴らしい景色の所が有るんですけれど。次回にしますか?」と、縦顔生郎。
「そうですね。」

三人は引き返して、二人の住んでいる家に着き、縦顔死郎と縦顔生郎が二人して横顔生夫を見送った。
「素晴らしい世界を見せてもらってありがとうございました。」
「次回はもっと遠くまで行ってみましょう。」
「ええ、お願いします。」
「それでは、今日はこれで。」
「おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい。」