切れたメビウスの輪(9)

2016-12-04 09:22:54 | 怪奇小説
第五章 ワープ

「あなたの知り合いで、間違えて生き返った方はいるんですか?」
「実は、私の兄が生き返ってしまって、行方不明になってしまったので、今探しているのです。」
「なぜ行方不明になったのですか?」
「私と双子の兄とは、同じ時に交通事故に遭って、一緒にこの世界に来たのです。
そして、仲良くこの世界で遊んでいたのですが、木登りしていた兄が木から落ちてしまったので、私が兄に近づいて行くと、兄の体がクルクルと回って見えなくなってしまったのです。
それは、まるでメビウスの輪のように、表側から裏側に移動して行ったように見えたのです。
それから三十年あまり、兄からの連絡は有りません。もし、生き返っているのなら、あなたに探していただきたいのです。」
「分かりました、一緒に探してみましょう。」
「ありがとうございます。しかし、私はこの世界の者ではないので、探せないのです。」
「だけど、あなたは今、この世界に居るではないですか。」
「そうですね、あなたと一緒だと大丈夫みたいですね。」
「だから、一緒に探しましょう。」
「ええ、お願いします。」

「ところで、あなたのお兄さんの手掛かりとなるような写真は有りますか?」
「いいえ、有りませんが私とソックリでしたので、私を見ていただければ分かると思います。」
「それでは、あなた方が交通事故に遭った近くへ行ってみましょう。遠い昔の出来事ですが、誰か覚えている人がいるかもしれないですね。」
「そうですね。誰かいれば手掛かりになりますね。」

そして、二人は交通事故の発生場所近くに、古くから在ると思われる和菓子店へ行き、縦顔死郎の兄の消息を聞いてみた。

「そうですね。幼い兄弟が自転車に乗っていてトラックに跳ねられた事がありましたね。」
「その兄弟はどうなったか、ご存知ですか?」
「病院に運ばれたが、お亡くなりになったと聞いていますが、それ以外は分かりません。」
「そうですか、ありがとうございました。」

「こんどは、お兄さんがワープした所へ行ってみましょう。」
「そうですね、その方が、手掛かりが得られるかも知れませんね。」