廃村の定義という物ははっきりとない。
集落から人が居なくなり山に返ってしまった無人地帯と思う人が多いだろうが決してその様なものでもないのだ。
地域で廃村と認識されている地区に入ると道は普通にあるし家も屋根が潰れた様な家ばかりではない。
田畑も放棄されておらず爺婆が働いている。
しかしここは廃村なのだ。
過疎が進むと残った人たちが集団で下の街へ移住するのは珍しくない。
その時に廃村となる、つまり行政区分では〇〇集落という概念が消えるのだ。
ダムの底に沈んだから廃村という訳では無いのである。
廃村になったらかなりの部分で行政サービスが受けられなくなるがだからと言って道が山に戻るという事はないし電気もそのまま。
爺婆は下の街から農作業に来るし、中にはそのまま元の家に住む人もいる。
この例は”ポツンと一軒家”に幾らでも出て来るあれなのだ。
その廃村にわざわざ移住する人もいる。
以前取材した人は廃村の家を買い取り改築して民宿を始めた。
年の離れた若い奥さんと二人で気持ち良い宿を営んでいた。
10年程後、たまたまその地区を訪れる機会があって民宿に立ち寄ったが営業は止めていた。
慣れない山暮らしと商売に奥さんが精神を患い入院してしまったのだ。
男の夢とロマンが妻の負担と苦痛になる。
田舎暮らしでは時々聞く話である。