台所から漂うニオイは大切な記憶である。
子供時分、カレーを作る母の後ろ姿と香ばしさはセットだった。
視覚と嗅覚ががっちりと結びつき今でも時々思い出す。
香ばしさの正体は小麦粉を炒めるニオイなのだ。
カレーのニオイよりも白い小麦粉がだんだんと小麦色(何か妙だが)に変化する時間が記憶に刻まれているから不思議なものだ。
当時はまだインスタントのルーではなくカレー粉を使って作っている。その時にとろみを付ける目的で炒めた小麦粉を加えるのである。
今じゃそんな事する家庭は無いだろうなあ、本当に良い香りなんだ。
ちなみに私もカレー粉で作るが炒め小麦粉は入れない。
個人的にはサラサラが好きなのだ。
鶏ガラでスープ取って、鶏肉、炒め玉ねぎ入れて、ニンジン入れて、カレー粉、塩、味を見つつジャム系入れて、ヨーグルト入れて。
簡単に作っても美味しい。
元気だった犬が気が付くと寝転ぶ事が多くなった。
元々散歩が好きじゃないが更に歩かなくなる。
おかしいなと感じたのは大量の排尿だった。
1分位ジャージャーとする。
尋常じゃない。勿論水もやたら飲む。
そして階段をなかなか登れない。
色々調べると全てもの症状に合致する症例が見つかった。
クッシング症候群
人も罹る病で犬も症状は同じだ。たぶんこれだろうとは思ったが一応掛りつけの獣医師に診て貰った。
レントゲンを撮り血液検査の結果から解る事は肝臓が肥大化して数値が極端に悪いという事。
それが何に起因するかは生体検査かCTまたはMRIを施す必要があってどれも全身麻酔。
それが出来る病院は非常に少ない。
獣医師の口からはクッシング症候群という言葉は出ない。
脳下垂体か副腎の検査をしないと結論は出せないのは理解できるが全く触れないのもおかしいなあ。
全身麻酔や生研は嫌なので何とかするしかないなあ。
亡くなったジジババの犬だし何とか元気にしたいものだ。
昨年から家に来た犬が何やら変。
何だか一日中ぐでぐでしているしやたら水を飲むし、当然多尿気味。
いきなりカーペットの上でジャジャジャジャジャジャ
廊下でジャジャジャジャジャジャジャジャ
っで驚いたのがその跡だ。
綺麗になっている。カーペットは汚れが落ちて新品同様、廊下はあれほど専用洗剤でこすっても変化が乏しかったのにピカピカ。
ああ、確か古代ローマでは子供の尿で洗濯をしていたんだよねえ。
しかし凄い、テレビCMで誇大に効果を強調する洗剤より遥かに汚れが落ちるぞい。
凄い、凄い。
思わず自分も廊下でおしっこしてみようかなと思ってしまう。
おしっこ以上に綺麗になる洗剤は存在するのかなあ。
10年程前に死んだ友人のカメラマンは兎に角借金が好きだった。
バブルの頃は売り上げが1200万円位あって絶頂期。
しかしまあ何やかやと浪費するので全く金が残らない。
いや残らない所か親に仕送りをしてもらっていたらしく流石に驚いた。
葬式の時に彼の親父さんが
「〇〇には随分と使わされたよお、2000万円位出したんじゃねえかな」
おいおい、収入はそれなりにあったはずなのに…
まあ考えるとエンゲル係数が異常に高く、無駄遣いが多く、殆どの支払いがリボという財布に大穴が開いていたから仕方が無い。
不治の病を得てから3年程でこの世から逃走、まだ52歳だった。
まあ借金と縁が切れたのは良かったねえ。
私は借金が大嫌いなので彼の経済観念は全く理解不能。
しかし自分の経済力の範囲で生活出来ない人は多いんだろうなあ。
親戚にいると厄介な事になりそうだなあ。