朝は5時から入れる温泉に浸かって食事までの空き時間を使って自転車を借りて10分弱で砂湯の見物、早朝ながら数人の入浴客が見える、全く開放的で堂々たる露天風呂だ。浴槽は3つでそれぞれが美人の湯、子宝の湯、長寿の湯とあったがこのロケーションでは女性は相当なバァさま以外は入れないだろうね。ダムの直下で手前の吊橋からの眺めはなかなかよろしいが、もう一つのオマケは期待しないほうがいいぞ。
朝食は椅子式になっている畳敷き広間でバイキング形式、最初からの洋風レストラン設計ではなくて料理を壁際に並べて一列で取るため、団体客にとってはかなりの混雑渋滞となっている。和洋というがパンやデザート風のものや飲物以外はほとんどが和で、野菜料理が存外に美味しいものの場所柄か塩鮭はまったくいけません。それと納豆はありませんし、牛乳はここの名産である蒜山ジャージー牛乳じゃありませんでした。席も満席のようだから早めに次の人に譲ってあげましたが、我々が終ってからやっと食卓に着く人もいる混雑振り、この日の一般客には部屋出ししてあげなきゃ怒るぞ。
8時には宿を出発、この日もいい天気で米子道路にて島根を目指す、途中の道筋では大山がくっきりと姿を現して女房と異様な山だねぇと。確か32年前に山陽から山陰をぐるっと巡って能登まで廻った旅では一度も拝めなかった山だ。今年は九州で阿蘇山や桜島を見たし、桜の弘前城でも以前に見られなかった岩木山も眺めたしで山に縁があるな。バスの進行に連れて姿が変り、荒々しい岩肌を見せる屏風岩みたいな形状から米子に近づくと伯耆富士と呼ばれるように確かに富士山そっくりの形に見えるようになった。でも少しばかり霞んでボンヤリとした姿となってきた。
高速を降りて最初のトイレタイム兼お土産屋は壽城というお城ソックリに建てられたお菓子屋さん、2階には食事処もあり最上階は展望台になっていて、いかにも団体さんいらっしゃいという店。大山の湧水が飲めるという蛇口3個で流し出している水は、汲み置きしたものだろうから生ぬるいんだけれど皆さん喜んで飲んでいる。昨日の事前案内で添乗員が話していたから、僕は空のペットボトル2本を用意して道中の水分補給としたが、こんなことしているのは我々だけであった。女房は栃餅が美味しいと買っていたな。
二日目最初の観光は横山大観の日本画と庭園で有名な足立美術館、普通こういうツアーでは入場料金はオプションとなっているものだが今回は2200円の券が含まれていた。ここにはもう32年前に一度来ていてまだ庭園は馴染んでいなかったと記憶するが、来年秋の開館40周年を記念して新館を建設中ということで数えたら出来て7年目に訪ねていたのですね。ここの庭園は館内を歩きながら眺める形式で、庭園もまた一幅の絵画であるとして創設者が情熱を燃やして造ったもの、アメリカのガーデン雑誌では6年連続日本一の評価を得ているとか。初めて来た時もなんでこんな所に立派な美術館を建てたのか不思議に思ったのだが、今では大勢の観光客が訪れるのだから超一流を並べれば辺鄙な土地でも存在感があって輝くということでしょう。秋のメイン展示は大観の六曲屏風二双の紅葉の絵で大観の間正面にデンと配されている。他にも大観と同時代の大家やその後に続く著名画家の絵が展示されているし、陶芸館もあって今回は北大路魯山人の焼物だけが展示されていた。陶芸では河井寛次郎の作品もあるというし、新館では現代日本画家の作品が中心になるそうだ。一代で財を成した実業家足立全康が生まれ故郷に開いた美術館、今は二代目が継ぎ、TVではまだ残っているはずの大観の海山20題が売りに出たら必ず買えの遺言があるそうで大変なプレッシャーになっていると話していたな。ここは実質2時間以上は見物時間が欲しいでしょう。
昼は玉造の宍道湖湖畔にある出雲まがたまの里伝承館というメノウやヒスイなどの貴石パワー装飾品販売所に併設された食事処で、出雲蕎麦セットを全員がオプション注文。まずはオモロイ兄ちゃん風が綾小路きみまろ流辛口口上でお出迎え、今日の天気をどう思われますか、ここは山の陰、雲いずる出雲でお日様が出ないのが普通の地です、だからこんなに良いお天気は年に十数日だけ、皆さん何の努力もしない人達なのに天は不公平ですなどと笑わしてくれちゃう。そのあとに勾玉の謂れの説明もあって、ここの貴石は緑が健康、赤が家庭長久、ピンクが縁結びだそうで、まずは大きな展示石に触って食事に行って下さい、食後はお買物をよろしくと。食事中もお客様のお弁当の蓋を取らしていただくこと十数年とか、宍道湖のシジミは全国の生産の半分以上その宍道湖の全貌を眺められるレストランは当店だけですと絶叫調で笑わせ、帰りのバスに向っても面白可笑しく手を振ってお見送り、アッパレ商売熱心な姿勢にハテ、彼は若社長だったのだろうか。