もう15年以上前に茨城、栃木方面の旅行で烏山市街地の北側を通ったときに倶門窯の看板を見つけ、どんな焼物を焼いているのかと入ったのだが。
さて門をくぐってから見えた工房はご立派な民家風建物で、ちょっとばかり気軽にというのは憚れるほど、でもここまで着ちゃったんだからと。工房の主が瀧田項一と分かり、さすが大家の部類に入る方の工房だと納得、というのもこの人の即売個展を松本民芸家具の中央民芸の2Fで見ていたから陶芸家そのものは知ってはいたのですよ。その時には魚の絵柄の陶板が多かった記憶がある。
ちょうど大先生が居られて自ら作品について話される、これは困った何か買わないといけないかと、でもショーケースに並べられた作品は数少なくてどれも高そうだから、どうしようかと女房と目配せで相談。折から奥さんまで挨拶に来られちゃって、何でも息子さんが婚約されたとか話されていたな、そういうお目出度い話に乗ってしまってエイッどれか安いのを買おうということに腹を決めた。
この人は人間国宝の富本憲吉と浜田庄司の二人に学んで、浜田庄司最後の弟子というらしいから民芸陶器オンリーかというとちょっとばかり違っていて、作品は富本風の洗練された作風の方が強く、白磁系統に色絵を描くというものがほとんどであった。そんな中で同じく白磁風ながらやや素朴な形に造った角皿に、やや益子風をも連想させる植物柄のサラッとした絵付けのこの作品、大きさもまずまずあるのに一番安いこともあって、これ下さいと。おそらくこの絵付けは並べてあったものの中ではとびきりシンプルだったから安かったのでしょうね、でもそこそこのお値段ではあった。
生憎とこれの箱が今は無いから後で送るというご丁寧さもさすが作家物だと、確かに数週間後に送って貰ったのだがそれをすぐに何処かに仕舞ってしまって、現在は箱の在り処が分からない。皿自体はどこか民芸風でもあって用の美とは言うものの、もったいないと飾り物扱いとなっている。
今は息子さんが同じような作風のものを焼いておられる、陶芸家も二世が多くなりましたねぇ。