[ホノルル]
日本人観光客が必ずといっていいほど訪れるところが、ダウンタウンにある「イオラニ宮殿(Iolani Palace)」である。それを証明するかのように宮殿のツアー・ガイド・パンフレットは英語と日本語の2種類しかない。ガイド付きツアー20ドル(2000円)で、音声ガイドのみが13ドル(1300円)。
宮殿にしてはかなりこじんまりしているが、1882年に建築されたとは思えないほど立派でモダンである。玄関の階段広間はハワイの木材がふんだんに使われ、ハワイの歴代の王・女王の肖像画と英国、インド、フランスなどから贈られた花瓶・壷が飾られている。正餐室、応接室、音楽室、執務室、広間、王座の間、王・王妃の寝室など、きらびやかさはないが非常に落ち着いた上品な感じがする。特に驚いたなのは、ついているシャンゼリア他がすべて電気である。エジソンが電灯を発明してからたった7年後に導入されたとある。それから電話。そして、温水と水洗トイレで、米国のホワイトハウス、世界のどの宮殿・施設よりいち早く設置されたという。そしてイオラニ宮殿はアメリカ合衆国にある唯一の宮殿でもある。
これを建てたのが文化と芸術の推進者で、社会活動やエンターテイメントに力を入れたデビッド・カラカウア王(King David Kalakaua) である。「メリーモナーク(陽気な王様)」の愛称で知られ、フラダンスの解禁者でもある。前述ブログの『メリー・モナーク・フェスティバル』参照。また、王は史上初めて日本を訪れた外国元首としても知られ明治天皇と会見している。
カラカウア王は1874年から国王の座にあったが、1891年に米国・サンフランシスコ滞在中に亡くなった。その後は、ハワイ王国最後の女王となる王の妹のリリウオカラニ(Queen Liliuokalani) によって宮殿は受け継がれた。ハワイ民謡として有名な『アロハ・オエ』は彼女の作である。
1895年に新政府軍によって女王は宮殿に幽閉され、ハワイ王国は滅亡した。その後、宮殿は常に当時の政府の中心建物・司令塔として機能した。ただ、宮殿の立派かつ貴重な家具・調度品の多くは不必要としてクーデター軍によって売却されたので外国に散在してしまった。それらのものは、現在も探し買い戻され続けている。戦争、クーデターなどによっていつも犠牲になるのは文化遺産だ。非常に(あるいは非情さを)考えさせられる。YS
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます