おばあさんに予防衣を着せて…カゴをもたせ…
そんな日が数日続きました。
ある日おばあさんがふるらんに
「看護師さん達には気を使ってもらって本当にありがとうございます。でももういいんです」といいました。
ふるらんが
「いえ、よくありません。おじいさんは待ってるんです。あなたが来るのを意識が無くても待ってるんです」と言うと、
「私も本当はずっとそばにいたいですが…家に帰ると辛くて…」といいました。「あ………」
淋しい言葉です。
好きだから辛い…
若かったふるらんには返す言葉が見つかりませんでした。
夜中に容態急変。
家族、親戚に見守られ、おじいさんは息を引き取りした。
その中にはおばあさんの姿はもちろんありませんでした。
親戚でもなんでもない人は呼ばれるわけがないから…
先輩看護師さんが
「本当に愛してる人に手を握ってもらいながら〇たいね…」といいました。
次の日、おばあさんが来て、主任さんから説明を聞きました。
そしてふるらんが呼ばれ…
おばあさんは
「僕が君のいない時に〇したり、〇に目に立ち会えないと思うから…目も薄くなり、字も書けなくなったから…ふるらんさんから聞いてくれ。きっと教えてくれるから、とおじいさんに言われました」といいました。
ふるらんは主任さんに許可をとり…霊視…
おじいさんの言葉を伝えました。
「淋しい…淋しい…淋しい…………一緒にいてくれ、と繰り返してます。でもその後に…君のお陰で痛みが半分になり、苦しみが減ったよ。なにもしてやれなかったけど……」と詰まり…主任に
「どうしたの?」と聞かれてふるらん
「約束を守れなくてごめん。君を最後に抱きしめたかった…と言ってます。私が変わりにあなたを抱きしめていいですか?」と聞き、おばあさんを抱きしめました。
痩せた身体、震える身体…啜り泣きの声…
しばしの沈黙の後、ふるらんはおばあさんの耳元で
「〇んでもずっと愛してるって言ってます。ネックレスしてて欲しいと」と言うとおばあさんはうなづいていました。
おばあさんを見送り、主任がふるらんに
「霊視って辛いんだろいね…胸痛いでしょう?」と言われたのでふるらんは
「はい、確かに。でも…」「でも?」
「きっと〇様や〇様がふるらんの心に学びを下さってるんだと思います。学ぶたびに涙がでるますから…」と答えると主任さんが
「そうね…泣いて、泣いて…人の心を学ぶのね…」といいました。
おじいさんのベッドの下から封筒が出てきました。
中には温泉のパンフレットが入っていました。
二人で入れる部屋風呂付きの素敵な旅館でした。