南斗屋のブログ

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「パパの脳が壊れちゃった」より 9

2006年07月26日 | 高次脳機能障害
さて、夫婦の間といえば、セックスの問題は切り離せない問題です。

リハビリテーション医学の教科書を見ても、中途障害を負ったことと、性の問題については、記述があります。
ただ実際のところ、医療の現場で、どこまでこの問題が、具体的に取り扱われているのでしょうか、そこのところはよくわかりません。

被害者側の弁護士としての立場からすると、夫婦が性生活を営む事が不可能、又は著しく困難ならば、それぞれの慰謝料として考慮すべき、という主張を展開したいところです。
しかし、この点を弁護士の方から、積極的に持ち出すことについては、ためらわれるものがあります。
日本の裁判所は、このような点について、慰謝料を大幅に加算するという方向性にないことも、ためらいを増幅することの1つの理由です。

「パパの脳が壊れちゃった」では、勇気のあることに、このセックスの問題に言及しています。

筆者は、一時帰宅で夫と自宅に帰るのに、アランは以前のアランの様ではない。自宅である事が、筆者の心を一層孤独にします。
手持ち無沙汰で過ごしていると「アランと愛し合ってみよう。彼とつながるのだ」「久しぶりに帰ってきたときは、セックスをするのが当然だ。違うだろうか?」という考えが浮かぶ。

筆者は、アランに語りかけるが、アランの反応はかんばしくない。
パンツの中に手を入れてペニスをなではじめると、アランのそれは大きくなったが、アランは無表情で、まっすぐ前を見ているだけ。
「もうやめよう、随分むごいことをしている気がする」「これは脳損傷の男性に対するセクハラではないか」と考えるが、セックスがアランの奥深い所にある感情を刺激して、彼と再びつながるきっかけになるのではないか」と考えて、自分の下着を脱ぎ、アランにまたがってみる。
しかし、アランは妻の背中に手を回す事すらせず、無表情のまま、射精だけした。
筆者は「そこだけ、身体の他の部分から、切り離されているよう」「彼とセックスしても、まるで少年をレイプしてるみたい」と感じる。

ここまで詳細に言及しているものを、私は他に知りませんが、セックスとは人間にとって何なのか、脳損傷、脳外傷で高次脳機能障害となったときに、それがもたらす影響というものを改めて考えさせられます。

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