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初めての、そして最後の大島紬

2009年02月09日 | 雑記
お子さんがいないご夫婦の、ご主人が亡くなりました。
素敵なご夫婦で、奥様はとってご主人を大事にしていましたし、
ご主人もそうでした。

何度か外泊もしましたが、もう帰れないほど、お腹に水がたまり、
抜いても抜いてもそんなに楽にはなりませんでした。

痛みをとることに関しては、最近はたやすくなりましたが、お腹の水が
たまらないようにすることは難しく、5000mlとか、3000mlとかでます。
でるといっても、お腹に針を刺して、点滴のチューブでつないで
抜きます。点滴の逆バージョンのような感じです。

 「よくそんなにたまるもんだよな~」と、言い合います。

今日は息がゆっくりで、脈拍も少なくなってきていました。
時々、口を動かしていましたが、話す力はありません。
ついこの前は、

 「奥さんが隣に寝ていると、安心ですね。ちょっと目が覚めたときに
  隣に見慣れた人がいるって。」
 「うん・・・・・・・安心だよ。」

ということを話したばかりでした。

そういえば、旅立ちのときに何を着ましょう?
元気な頃は詩吟をたしなんでいたそうで、大島紬の着物があるとのこと。
たいそうな詩吟家じゃないので、まだ着物は早いと言いながらも、
奥様は仕立ててあったそうです。

着物を着ようね、と話しかけたら、笑ったような気がするとのことでした。

 「お父さん、よく頑張ってきたね~ もう楽になるね~ お父さん・・・」

息をひきとったあとに、奥様は病院から近い家にとりに行かれました。
襦袢と、帯と、そして足袋も持ってきて下さいねと、話しました。

大島は、とてもシックな柄で、男性的で、立派でした。

 「聞いておいてよかった。着物が着られるなんてね・・・・
  こんな寒い日に、浴衣なんて可笑しいものね。嬉しいね、本当に。」

奥様は次から次へと涙をこぼし、そして時々微笑んでいらっしゃいました。
長年連れ添ったご夫婦。
辛い闘病生活もあったけれども、辛いのはひとりで生きるこれからの人生
なのかもしれません。

まだ一度も袖を通さなかった大島は、大島らしくぱりっとしていました。
エレベーターに乗るときに、白い布をかけられていましたが、
その布は取り払ってしまいたいほど、素敵な着物姿でした。

今頃は、空の上で詩吟を・・・・・・・・・・・・。

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